【姉ちゃんの恋人/レビュー】「姉恋」が描いて「恋あた」になかったものとは?
【姉ちゃんの恋人/レビュー】「姉恋」が描いて「恋あた」になかったものとは?
『姉ちゃんの恋人』(姉恋)と『その恋あたためますか』(恋あた)が最終回を迎えた12月22日火曜日。
視聴率としては「恋あた」が圧勝していますが、「姉恋」が描いて「恋あた」になかったものがあると思います。
【姉ちゃんの恋人/レビュー】
【姉ちゃんの恋人】(姉恋)のレビュー(評論)を基本としながらも、あまりに内容が対照的だった(つまり違いがはっきりしていた)『その恋あたためますか』(恋あた)と比較することで、見えてくるものがあるので並べて論じていきます。(以下、ネタバレを含みます)
【姉ちゃんの恋人】(姉恋)とは?
フジテレビ系火曜21時に放送された連続ドラマ【姉ちゃんの恋人】(姉恋)は、27歳、両親・彼氏ナシで、ホームセンターで働きながら、弟3人を養う安達桃子(有村架純)が主人公。
桃子は、弟を愛する肝っ玉姉ちゃん。そんな桃子が、ある日、職場で恋をします!
相手役の真人(林遣都)は、恋をあきらめている人物。心に傷と謎を抱えています。
そんな2人がクリスマス展示の企画で意気投合。やがて、真人の服役していた過去が明らかになり、それでも、よりいっそう桃子は真人を愛します。
桃子と真人のほかに、安達家の長男・和輝(髙橋海人)と桃子の親友・みゆき(奈緒)の年の差恋愛。さらに、桃子の上司・日南子(小池栄子)と真人の同僚・悟志(藤木直人)の恋がメインに描かれていきました。
『その恋あたためますか』(恋あた)とは?
一方、TBS系火曜22時枠で放送された連続ドラマ『その恋あたためますか』(恋あた)は、アイドルの夢破れたコンビニアルバイト店員・井上樹木(きき)(森七菜)が主人公。
樹木は、SNSで新作スイーツの感想をアップしていました。業界最下位のコンビニチェーン社長・浅羽拓実(中村倫也)が樹木の実力を認めて本社のスイーツ企画へ呼び、仕事とともに2人の仲が急接近!
「一番売れる」スイーツ開発をしながら2人の甘い恋が爆誕するオリジナル脚本「スイーツ×ラブ」ストーリーです!
2人の恋に割って入る2名いて、樹木と共にスイーツ開発をする新谷誠(仲野太賀)、浅羽の元カノで樹木の同僚・北川里保(石橋静河)が恋の四角関係を成立させます。
恋の矢印としては、新谷→樹木→浅羽←北川。
浅羽の矢印がありませんね。浅羽社長の恋がどこに向いているのか、社長自身も自分の気持ちに鈍感なので、登場人物がみんな振り回されていく展開になっていきます。
「姉恋」が描いて「恋あた」になかったものとは?
「姉恋」が描いて「恋あた」になかったものとは、3つあります。
(1)幸せについて
(2)弱者へ寄り添うこと
(3)ヒロインと相手役の魅力(脚本・構成力)
の3つです。以下、順に論じます。
「姉恋」が描いた幸せ
【姉ちゃんの恋人】(姉恋)最終回では、みんな幸せになりました。まさかの脇役まで。
主演の有村架純さんはSNSで「幸せ」についてこう語っています。
この作品の中で、たくさん「幸せ」という言葉が出てきました。
幸せの定義は人それぞれだけれど、お金や結婚などの固有名詞から得られる幸せとはまた違ったその奥底「素敵なあなたと、素敵なあなたたちと一緒にいるから幸せなんだ」
そんなことを改めて教えてくれたように思います。
皆様、
最後までご視聴いただき本当にありがとうございました。
新しい欲しいまでもうすぐ、🌍 ✌︎✌︎
https://www.instagram.com/p/CJGl1ZvpSt2/
「素敵な人と一緒にいることの幸せ」…まさしく「姉恋」の登場人物たちの笑顔あふれる姿を思い出します。
「姉恋」最終回では、「生きるってことは、ずっと幸せってやつに片思いし続けることなのかもしれないね。」というナレーションが入ります。
「幸せへ片思い」の解釈は難しいのですが、そのひとつの答えを有村架純さんが示してくれています。
結局、素敵な人と一緒にいることが幸せなのです。だからこそ、最後の桃子の「夢見ちゃったシーン」が家族や恋人(夫?)との団らんなのだと思います。
一方、「恋あた」の幸せは、なんだったのでしょうか。結局、四角関係と言いつつも、樹木と浅羽のカップル成立となる最終回でした。(一応、山本耕史演じる神子社長と市川実日子さん演じる一岡さんもイイ雰囲気で終わりました)
「恋あた」最終回ラストで、「今年はいろんなことがありました。甘いものは人を幸せにします」というメッセージが流れました。
#この恋あたためますか 🤍
最後までご覧頂き、そしてたくさんの応援をしてくださり、ありがとうございました。今年はいろんなことがありました。少しでも、皆さんの心があたたまる時間をお届けできたら嬉しいです🎄☃️❄#恋あた チーム一同#森七菜 #中村倫也 #仲野太賀 #石橋静河 pic.twitter.com/HFwHGEVR0V
— 【公式】火曜ドラマ「この恋あたためますか」応援ありがとうございました🤍 (@koiata_tbs) December 22, 2020
浅羽が甘いもの嫌いを解消。「甘いものは人を幸せ」にしたようです。
「姉恋」が家族愛、人を愛することについて描いていたのに対して、「恋あた」の「甘いもの」が幸せにしてくれる…というテーマが浅いように感じます。
たしかに甘いものを食べることで元気が出ます。1話冒頭、アイドルをやめてスイーツの感想を投稿していた樹木は、スイーツに救われた感謝をお客様相談室に電話していますしね。
しかし、スイーツ開発の仕事と恋の四角関係のバランスが悪く、融合していなかったように感じました。
「姉恋」が描いた弱者へ寄り添うこと
【姉ちゃんの恋人】(姉恋)は、弱者へ寄り添うメッセージが込められていました。
クリスマスの企画会議にて、真人はこう言います。「クリスマスって幸せの象徴みたいなとこがあって。もちろんそれでいいんですけど、あんまり きらきらばっかりしてると1人だったり寂しかったり、何かつらい思いとか持ってると目を背(そむ)けたくなるっていうか。 なんかそういう人もちょっと触れたいなとか、見にきたいなとか思えるような…そういうクリスマスだったら いいなって。」
クリスマス企画のリーダーになった桃子は「派手さより親しみやすさ。 幸せな人だけではなくて… 寂しい人へ。 本物の大きなもみの木のツリー」というテーマを考えていたため、真人に共感しました。
桃子の同僚・臼井さんは、壊れた椅子に座って写真を投稿しています。この椅子ですが、真人が直す展開もありました。
第1話で地球儀のキーホルダーも真人が直します。桃子は「壊れかけたけど ほら。 地球 復活しました。」と笑顔で真人に見せます。この「地球が壊れている」というのも劇中で随所にあり、これはコロナ禍中を指しているのでしょう。
【姉ちゃんの恋人】(姉恋)は、さみしい人、つらい人はもちろん、感染症のパンデミックで傷ついた地球(の人々)にまで寄り添うドラマでした。
寄り添うというのは「見捨てない」とほぼ同義で、サンタさんに駆け寄れない女の子をサンタさんが見つけて近寄ったり、逆に最終回では女の子がサンタさんのさびしさに気づいてプレゼントをしていました。
この「寄り添う」とはどういうことか、考えながらドラマを見直してみると新たな発見がまだまだありそうです。
一方、『その恋あたためますか』(恋あた)は、新谷と北川が失恋したままで終わりましたね。
それはそれでありなのですが…。(人生、失恋はつきもの)
当て馬が当て馬として終わるさみしさがありました。
「姉恋」が描いたヒロインと相手役の魅力(脚本・構成力)
【姉ちゃんの恋人】(姉恋)は、ヒロインと相手役の魅力が伝わってきました。
これは、キャストの演技力はもちろんありがすが…岡田惠和さんの脚本・構成の力がさえていたことが大きな要因です。
「姉恋」の脚本で欠点をあげるなら、コロナの描写があるわりに、劇中ではだれもマスクをしていないので、いつの時代設定なのか、中途半端な感じはありました。
あとは、社員の失敗(小池栄子さん演じる日南子さんの返品するはずがソファ100個発注)に周りが優しすぎるのが不自然、などの指摘も。
暴漢に襲われるのが2回もあるのが不自然ともネットで言われましたね。要素としては必然でも、流れの中で自然さを感じさせてはいなかったと思います。
しかし総じてストーリーは好評でした。構成が上手かったと思います。親亡きあと弟を養うために頑張る女性が過去のある男に共感し、ともに乗り越えていこうとする、1本の筋がありました。そして、会話劇の脚本の妙はもう職人技ですね。
一方、『その恋あたためますか』(恋あた)は、ヒロインと相手役の浅羽がくっつくのがわかりきってるかのような、そこへ向かっていっている展開でした。
ストーリーは予定調和ですし、ヒロインと相手役の魅力もイマイチ。
特に、前述もしましたが、浅羽が鈍感すぎます。一度ヒロインを振っておいて、また好きになる間、恋人になった北川さんや樹木と付き合っていた新谷を振り回して…。ひどい!
ヒロインの態度は当初、嫌悪感を見るものに与えたものの、可愛らしい面もありました。それだけに相手役のキャラクターはどうなっているのでしょう、と思います。
逆に視聴者の心をつかんだのは、「まこっちゃん」こと新谷や、自ら失恋した北川さん…というなんとも皮肉な結果です。(もちろん違う感じ方をして視聴者もいるでしょうが…)
ヒロインと相手役を応援したくなる脚本・構成の上手さが【姉ちゃんの恋人】(姉恋)にはあり、『その恋あたためますか』(恋あた)はなかったといえると思います。
以上、【姉ちゃんの恋人】(姉恋)のレビューを最後まで読んでいただきありがとうございました。
当記事画像出典:https://www.ktv.jp/anekoi/
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