映画【ヘレディタリー/継承】のネタバレと感想!史上最恐のラストを考察!
映画「ヘレディタリー/継承」のネタバレと感想!
オススメ度:★★★★☆
はじめに忠告しておきますが、最後のシーンはトラウマになること必須です!
実際に鑑賞する時は覚悟を持って望んだ方が良いです…。
映画「ヘレディタリー/継承」は、家族の「絆」「心」「身体」全てが狂い出す様を描いたオカルトホラー。
映画の完成度の高さが評価され、サンダンス映画祭では絶賛の嵐。
批評家からだけでなく、観客からの評判も上々です。
史上最恐の映画を監督したアリ・アスターはなんと、これが長編映画デビュー作。
新人っぽさを全く感じさせないほどの天才ぶりを発揮しています。
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目次
「ヘレディタリー 」ってなに?
洋画でお馴染みの、カタカナ変換タイトル。
中々聞き覚えのない単語だと思いますが、どういった意味や意図で使われているのでしょうか?
英語に直すと“hereditary”になります。
直訳すると、「遺伝的」「親譲りの」という意味になります。
“何が”遺伝的で、親譲りなのかというのが映画のテーマ上、非常に大事なキーポイントになっています。
その真相は、全てラストに託されています。
映画「ヘレディタリー/継承」の作品情報
- 制作国:アメリカ
- 公開年:2018年
- 上映時間:127分
- 監督:アリ・アスター(今作が長編映画の監督デヴュー作!)
- キャスト:トニ・コレット、アレックス・ウルフ、ミニー・ジャピロ、ガブリエル・バーン
- ジャンル:ホラー映画
映画【ヘレディタリー/継承】のあらすじ
グラハム家の祖母・エレンが亡くなった。娘のアニーは夫・スティーブン、高校生の息子・ピーター、そして人付き合いが苦手な娘・チャーリーと共に家族を亡くした哀しみを乗り越えようとする。自分たちがエレンから忌まわしい“何か”を受け継いでいたことに気づかぬまま・・・。
やがて奇妙な出来事がグラハム家に頻発。不思議な光が部屋を走る、誰かの話し声がする、暗闇に誰かの気配がする・・・。祖母に溺愛されていたチャーリーは、彼女が遺した“何か”を感じているのか、不気味な表情で虚空を見つめ、次第に異常な行動を取り始める。まるで狂ったかのように・・・。
家族が徐々に狂う。果たして”何が原因”なのか…という物語。
設定は割とありがちで、洋画を見慣れている方なら新鮮さは感じないかもしれません。
しかし、この映画のすごい所はその「演出力」!
現実で体験しそうなトラウマを鮮明に描いたり、大げさでブッとんだラストを演出したりと、近年マンネリ化している王道ホラーを真っ正面から壊しにいっています。
映画【ヘレディタリー/継承】のネタバレ
注意!!!
これより下はネタバレになります。
前半:壊れだす家族
模型作家、芸術家アニー・グラハム。彼女の母、エレンが死んだ。
葬儀には、夫のスティーブンと息子のピーター、娘チャーリーも参列したが、アニーは悲しんでいる様子をみせなかった。
実は、エレンは精神障害を患っていて、アリーの元で看護されていた。
それは家族にとってかなり荷が重い存在となっていた。
しかし、内気な娘チャーリーにとっては、いつも面倒を見てくれる祖母の死は受け入れがたいものだった。
時に、チャーリーは祖母エレンの存在を感じて、裸足で外を出歩くなど、少し奇怪な行動をするようになる。
息子のピーターは、大学受験を控える高校生で、家族の前では大人しく振る舞うも、友達の前ではマリファナを吸ったりと気難しい年頃だった。
ある日、彼は気になる女の子が参加するパーティーに行くため、母アニーから車を借りようとする。
アニーはピーターが酒を飲むのではないかと心配し、娘のチャーリーに付き添いで行かせるよう命じた。
嫌がるチャーリーだったが、母の強い推しで2人はパーティーに向かう。
爆音の音楽で賑わう会場の中、ピーターは妹そっちのけでマリファナを吸っていた。
しかし、チャーリーに異変が起こる。
「喉が腫れて、息ができない」とピーターに助けを求めた。
異常を感じ取ったピーターは急いで車に乗せ、猛スピードで病院に向かう。
ジタバタと苦しむチャーリーは、息をしようと窓を開けた。
心配のあまり車を飛ばすピーターの前に、障害物が現れる。
彼は急いで避けたが、窓から飛び出していたチャーリーの頭が電柱に衝突。
ピーターは車を止め、一時放心状態になった後、チャーリーの方を振り返らないまま発車した。
両親が寝静まった家に着いたピーターは、黙って寝室に向かい、ベッドに入る。
彼は放心したまま、朝を迎えた。
彼は、アニーが車に向かう音を聞く。
ドアが空いた瞬間、叫び声がした。
家に戻ったアニーは「もうこのまま死なせて!!」と泣き叫んだ。
場面は、チャーリーの葬儀に変わる。
ピーターはいずれ放心状態のまま。
母アニーも疲弊し、かつて発症していた夢遊病が再発する。
そして、アニーはチャーリーが良く過ごしていた、家の隣の小さな小屋で夜な夜な過ごすようになった。
後半:トラウマ級のラスト
悲しみは薄いものの、アニーはエレンが亡くなってから、母とのわだかまりを後悔し、カウンセリングに通うようになっていた。
しかし、母に続き、娘までも死んでしまった。
彼女は、ある日カウンセリング会場でジョニーという1人の中年女性に出会う。
ジョニーは数ヶ月前、息子と孫を溺死で失った過去を持っていた。
話したくなったらすぐに連絡するようにと、ジョニーはアニーに電話番号を渡す。
しかし、精神的なショックがあまりに大きすぎたため、どうしたら良いかわからないピーターに対して「チャーリーの死への責任を感じろ!」と強い口調で責めてしまう。
そんな家庭を常に見守ってきた夫スティーブンは、妻がドンドンおかしくなっていくのを不安に思っていた。
ある日、アニーは元気一杯で立ち直った様子のジョニーに会う。
彼女は、権威ある霊能術師から降霊術を教わり、孫と再会できたことで元気になっていた。
ジョニーは半ば無理やり、孫が降霊してくる様子を見せる。
半信半疑だったアニーの目の前で、ガラスのコップがひとりでに動き出し、黒板に文字が描かれたりと信じられないことが起こった。
ジョニーは降霊用のロウソクと呪文が書かれた紙をアニーに渡す。
当初、アニーはためらっていたが、苦しみも限界に達し、嫌がる夫と息子を参加させてチャーリーを家に召喚した。
降霊術は成功したが、ピーターに災難が訪れる。
チャーリーを事故で死なせてしまったが、愛する息子に変わりはないピーターを救うために、アニーはジョニーの元へ向かった。
しかし、ジョニーはいない。あるのは、大量のロウソクとピーターの写真だけ。
休み時間、生気のないピーターに向かって、不気味な呪文を唱えるジョニー。
彼は授業中、教室でいきなり手を挙げた。
腕は曲がり、顔は歪む。
そして顔を本気で机に叩きだした。
場は騒然となり、正気を取り戻したピーターは叫び出す。
ボロボロの息子を迎えに行ったのは父のスティーブ。
彼も疲れ果て、車の中で泣き出してしまう。
家に到着すると、アニーがトンデモナイ報告をする。
- 屋根裏に首のないエレンの死体があること
- 実はエレンは「ペイモン」という悪魔を崇拝していて、ジョニーはその仲間であったということ
- 降霊術により地獄の門が開かれてしまったこと
- 最初から一家はエレンによってはめられていたこと
スティーブンはアニーの妄言だと決め込み、彼女を信用しようとしない。
アニーは、このままではさらに被害者が増えてしまうと思い、チャーリーを降臨した時に使ったスケッチブックを燃やそうと暖炉に放り投げた瞬間、燃え出したのはスティーブンだった。
絶望するアニーだが、急に表情が恐ろしい様子に変わる。
その頃、ピーターが目を覚ます。
鼻をおさえながら階段を降りると、リビングには燃えた父の姿があった。
彼はなにかの気配に気づき、走り出す。
追いかけてくるのは豹変したアニー。
なんとか屋根裏に逃げ込んだピーターだったが、そこにあったはずのエレンの遺体はない。
そしてピーターが上を向くと、そこには浮きながら自らの首をワイヤーでグチャグチャと切るアニーの姿があった。
言葉を失ったピーターが前を向くと、裸の白い人間が3人、彼の方を見ていた。
ピーターは窓から飛び降りた。
息をしないピーター。
しかし、そこに”光”が落ちてきた。
彼は起き上がり、アニーの身体だけが浮遊しながら入っていった、家の隣の小屋へ向かう。
そこには先程見かけた白い人間が大勢、ひれ伏せていた。
血だらけのアニーも、身体だけひれ伏せていた。
そして「王妃エレン」と書かれた額縁と等身大の手作り人形があった。
ピーターは、王冠を被らされ、地獄の王「ペイモン」になった。
映画【ヘレディタリー/継承】の感想と考察
万人受けはしないかな…。
というのが素直な感想です。
個人的には、好きな作品ですが、好みは別れると思いました。
上映時間は、ホラー映画にとっては少し長い120分弱。
さらに重く暗い内容なので、精神的にかなり疲れてしまいます。
死霊館みたいな「サクッとホラーを楽しめちゃう」というような作品ではありません。
さらに、最後はトラウマ必須のかなりショッキングな映像が流れます。
私は王道物からカルト物まで、数あるホラー映画を見てきましたが、最後のシーンはバッチし脳裏に焼きつくほどのショッキングさでした。
裏を返せば、こういった要素を求めている方にとってはバッチリな作品と言えます。
では、どんな所が優れていたのかやラストの解釈について書いていきたいと思います!
映画館で泣き叫びたくなった…あまりに痛々しい事故
物語の中盤、ピーターは痛ましい事故を起こしてしまいます。
既にネタバレでも書きましたが、もう少し状況がわかるよう、詳しく状況を把握していきましょう。
母に言われて無理やりパーティーに行ったチャーリーは、会場で息ができなくなるほど、喉が腫れてしまいます。
急いで病院に向かうピーターですが、障害物を避けようとしたところ、チャーリーの顔が電信柱にぶつかり首から上がなくなってしまいます。
妹の頭が跳ねてしまったことをわかっているにも関わらず、彼は後ろを振り返ろうとせずに、車を発信させます。
冷やせ汗と涙でビシャビシャになった彼の顔ですが、表情は悲しみにくれるわけでもなく、絶望にくれているわけではありません、明らかに動揺していて、自分が何をしたのか整理をつけられないといった様子。
家に着いたピーターは、母や父にそのことを告げずに、そのまま布団の中に入ります。朝になるまで、彼は瞬き1つしない。
私たちは、彼の顔を見続けたまま、車に向かった母の悲鳴を聞くことになります。
このシーンは私が映画内で一番好きな所で、ピーターが「罪悪感」に苛まれ続ける痛々しい場面です。
15分くらいの短い場面ですが、明らかにハッピーエンドでは終わらないだろうと思えるほどの絶望感を与えてくれます。
中盤から終盤にかけて「あくまで事故」という煮え切らない中途半端さが最後まで彼を苦しめていきます。
さらに意地悪なのが、母が悲鳴をあげてから、当分の間、家族とピーターとのやり取りが映画内で描かれないこと。
まるで、家族から完全無視されているかのような間の開け方には正直、こちらもストレスが溜まり、叫びたくなってしまいました。
恐怖の顔面演技
この映画の特徴として役者の「顔面演技」をあげることができます。
先ほど、緊迫感のあるピーターの「動揺したリアルな顔」を紹介しました。
それとは逆にアニーの「恐怖におののく大げさすぎる顔」はなかなかのインパクトがあります。
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しかも、その顔は一瞬でパッと切り替わるわけではなく、1,2秒ほど映り続けます。
恐怖を共有できる場面として、非常に優れた演出だと思います。
さらに、じれったいほどゆっくり動くカメラや計算された構図のおかげで、映像美も加わり視覚的にストレス見ることができます。
そんな「演出」を見ていると、私は“ある映画”を連想しました。
スタンリー・キューブリック監督作品の「シャイニング」です。
ジャック・ニコルソンのバラエティに飛んだ顔芸、絨毯を使った画面のバランス。
迫力と繊細さはまさに、レジェンド級の映画に匹敵します。
#シャイニング
「ジャケットにも採用された、この映画の象徴ともいえる『叩き割ったドアの裂け目から顔を出したジャック・ニコルソンの狂気に満ちた表情』を撮るためにキューブリックはわずか2秒程度のシーンを2週間かけ、190以上のテイクを費やした」。まさに狂気。 pic.twitter.com/qljXQzEDXU— Saitoh Masaya (@MS3110) November 25, 2019
実際、批評家の中でも「キューブリックっぽい?」というような意見もあるようです。
見比べてみると面白いかもしれません。
全ては”幻想”?
この映画の最後は、あまりに独断的で、ブッとんだまま進んでいきました。
母アリーが自分の首を切り落とし、裸のおっさんが数人出てきて、王冠被せられて、君は地獄の王だと言われて…。
緊張感があり、ヒリヒリとした雰囲気の中、若干のおふざけを入れたのではないかと思うほどワケのわかならい展開でした。
解釈としては、最初からエレンによって綿密に計画され、家族は悪魔に操られていた。そして最後、ついに計画は成された…というのが正解だと思います。
ただ、私はもう1つ別の解釈を思い立ってしまいました。
「あれは全て幻想だった…」ということです。
つまり、彼らが体験したことは精神を病んだことによる幻想に過ぎないということです。
劇中、アニーはカウンセリングでこんなことを語っていました。
- 父はうつ病を患っていて、餓死した
- 兄は統合失調症で若くして首を吊った
- 母エレンは解離性同一障害だった
そして、アニー自身も夢遊病で苦しんでいました。
そんなアニーが心配したのは、子供達に病が遺伝してしまうこと。
つまり、彼女自身も子供達が精神を病んでしまうことをほぼわかっていたということです。
娘チャーリーはエレンに操られてしまったというのが本筋。
しかし、極度の引っ込み思案だったチャーリーは、かなりのお婆ちゃん子で死に対してショックを受けていました。
その影響もあり、庭でお婆ちゃんの幻想を生み出してしまったのではないか。
唯一、血筋ではない夫スティーブンもそんな家庭に疲れ果てて、次第に心を疲弊させていきます。ついには、精神安定剤を飲み始めてしまいます。
そして、ラストで地獄の王になったとされるピーターに関しては、妹を事故死させてしまったことを母に責められながら、罪悪感と孤独に襲われます。
ラスト15分は、そんな心の不安定な彼らを中心に描かれています。
「彼らの見ている世界」が映画に描かれているのだとしたら、精神に限界を超えた幻想の世界だった可能性もあるのではないかと思います。
我ながら深読みしすぎな感じもしますが、映画をより面白く見てもらうためにこういった別の解釈をする余地を、監督自身は残してくれたのではないでしょうか?
まとめ/みんなの感想
2018年は、「死霊館 シスター」や「クワイエット・プレイス」など話題のホラー映画が公開されました。
「ヘレディタリー/継承」はその中でも正統派のホラーだと言えます。
感動要素も一切ありませんし、ただ驚かせるだけのお化け屋敷のような演出もありません。
「シャイニング」や「アッシャー家の末裔」のような古典ホラー映画を見ているような感覚がしました。
マンネリ化したホラー業界に対して、真っ正面から挑んでいく作品が作られたということは、とても嬉しいことです。
監督「アリ・アスター」の今後の活躍に注目です!
https://twitter.com/takumitoxin/status/1067164002537492481『#ヘレディタリー/継承』、前半のハイライトが絶望すぎてあれで一気に心鷲掴みにされてしまった…
起きたことの壮絶さ以上に、起こしてしまった奴が取る行動&第三者のリアクションのコンボが凄すぎてもうもう…あれ本当にリアルだし、あの流れ経験したことないか?あのくだり忘れられないわ凄すぎ!— マカ (@singkung_164) December 1, 2018
ヘレディタリー/継承①ここ数年のホラー映画の中でも屈指の恐ろしさ!音で脅すとか未知の生物とかではなく、人の心理を内面からじわじわと攻めてくる。何かが起こりそう、という自分の中の怖れがギリギリの状態で終盤まで持続する。何よりコリン・ステットソンが音楽を担当してて、あの異様なサックス pic.twitter.com/bDEgUOkv2n
— アクツイッター (@pyonpikun) November 30, 2018
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