【白鳥とコウモリ】ネタバレ&あらすじ!真犯人の動機と真相が驚愕!?
【白鳥とコウモリ】ネタバレ&あらすじ!真犯人の動機と真相が驚愕!?
『白鳥とコウモリ』は、東野圭吾氏の推理小説。
ドラマ・映画の原作になるのも必至な本書は、東野圭吾版『罪と罰』と称されています。
犯人は誰で、その動機とは?切な過ぎるその真相をネタバレ!
今回は【白鳥とコウモリ】のネタバレ&あらすじ、感想、登場人物などについて。
【白鳥とコウモリ】のあらすじ
<あらすじ>
遺体で発見された善良な弁護士。
幻冬舎HPより
一人の男が殺害を自供し事件は解決――のはずだった。
「すべて、私がやりました。すべての事件の犯人は私です」
2017年東京、1984年愛知を繋ぐ、ある男の”告白”、その絶望――そして希望。
「罪と罰の問題はとても難しくて、簡単に答えを出せるものじゃない」
私たちは未知なる迷宮に引き込まれる――。
港区の路上に放置された車内で弁護士の男性の遺体が発見されました。
被害者は、 白石健介。55歳。死因は刺殺でした。
被害者を知る者みんな、「恨みをもたれるような人でなかった」「善良な人だった」と証言します。
やがて浮かび上がる愛知県在住の男・倉木達郎。捜査が進む中、倉木が「犯人は私です」と自白。
時効になった過去の事件について暴かれるのを避けるために刺した、と。
倉木はかねてより親交のあった白石健介に他人への遺産相続のことで相談したところ、罪を告白することが誠意ある態度だと言われ、犯行に及んだと自供。
しかし、倉木の息子や白石の娘は倉木達郎の供述に違和感があって、独自に調べ始めて…。
2017年現在の東京、1984年の愛知県岡崎。
2つの殺人事件を題材に、「ガリレオ」「新参者」「白夜行」などの東野圭吾が描く現代の「罪と罰」…。
【白鳥とコウモリ】のネタバレ
「3つの謎」
『白鳥とコウモリ』で読者に提示された謎は、大きく3つあります。
- 犯人は本当に倉木達郎なのか?真犯人はいる?
- 真犯人がいるとすれば、動機は何なのか?
- 真犯人がいるとすれば、倉木達郎がなぜかばう?その真相とは?
順にネタバレしていきましょう!
真犯人は「誰か」
犯人は本当に倉木達郎なのか?「真犯人がいるなら誰か」をネタバレします。
達郎は2017年・1984年2つとも「自分が犯人」と自供していますが、その真相は?
2017年の真犯人
まず、2017年の白石健介殺害事件について…
真犯人は安西知希(あんざい・ともき)です。
知希はまだ14歳で、中学2年生。1984年の事件で逮捕されて自殺した男の孫です。母・浅羽織恵と姓が違うのは父に引き取られたから。
まさか少年が真犯人とは驚きですね。
知希は本作であまり存在感のない役どころ。ですが、倉木達郎が守りたい人は誰かという観点で推理すると浅羽織恵・浅羽洋子。と考えると知希に行きつくのですが 、意外性のある犯人でした。
1984年の真犯人
次に1984年の事件について。
1984年の真犯人は白石健介でした。祖母が被害者の詐欺に引っかかったため、揉めていたのです。
現代の被害者が過去では加害者だったのですね。
真犯人の「動機」
真犯人・安西知希の動機は何かをネタバレします。
知希の殺害動機は怨恨と思われていました。…父・福間淳二が逮捕され自殺し、加害者家族として祖母・母親が長年苦しみ、両親の離婚や自身もイジメられたから。しかしイジメの事実はありません。
知希の本当の殺害動機は人を殺してみたかったから、でした。驚きです!
あまりに身勝手な動機ですね。動機の単純さが逆に怖いです。
なお、1984年の白石健介による灰谷殺害の動機は金銭トラブルです。大学時代の白石健介が詐欺師の灰谷と口論になり、殺してしまったのでした。
真犯人をかばう「真相」
真犯人がいるとすれば、倉木達郎がなぜかばう?その真相をネタバレ!
真犯人は、2017年が安西知希で、1984年が白石健介でした。
達郎は2人とも、かばっていました。
1984年の事件の真相
1984年の事件で、倉木達郎は犯人を隠避(いんぴ)していました。犯人隠避罪です。
※隠避とは、捜査機関などによる発見・逮捕から免れさせる一切の行為のことです。ちなみに場所を提供して匿う(かくまう)ことは犯人蔵匿罪です。
1984年当時、白石健介が犯行現場にいたのを達郎は目撃していたのですが、彼を逃がしました。しかも包丁の指紋を拭きとって、白石がいたことを伏せたのです。
達郎は灰谷から理不尽な嫌がらせをされて不満に思っており、青年があんなヤツのために未来を失ってほしくないと思ったのです。
2017年の事件の真相
2017年の事件は、倉木達郎が嘘の自白をしたことで、捜査がかく乱。
達郎は、白石健介の遺志を継いで、安西知希を守ろうとしていました。
というのは…
安西知希は白石健介を殺害後、遺体を隅田川テラスに放置して逃走。遺体発見現場は港区の離れた場所。運転できる誰か大人が協力したのかと思われたのですが…なんと被害者・白石健介がまだ息があり、知希の罪がバレないように自ら車を運転し移動したのです。
離れた場所(竹橋桟橋近く)の車内で、遺体として発見さたことで、捜査は混乱しました。白石健介は無実だった<知希の父>を自殺に追い込んでしまいました。おそらく、その贖罪でした。
そして倉木達郎も、自分が白石健介を逃がしたことで、<知希の父>を自殺させてしまった…その罪を償うために自白し真犯人かばいました。(倉木がガン闘病中なのも決断を後押ししました)
白石健介も倉木達郎も、安西知希を守っていたのです。イイことではないですが、真相は贖罪からの行動でした。
しかし先述したように、知希に反省の色はないのでビターな結末にもなっています。
タイトルの意味
本書タイトル『白鳥とコウモリ』というタイトルの意味をネタバレ!
作中でのタイトル言及シーン
本作は、犯人・倉木達郎が序盤に自供して、検察・弁護士も事実関係を争いません。
しかし【被害者の遺族】白石美令と【加害者の家族】倉木和真は、達郎の自供に納得できず、2人で情報交換しながら調べ始めます。
そのことを五代から聞いた中町は、こう表現しています↓↓↓
光と影、昼と夜、まるで白鳥とコウモリが一緒に空を飛ぼうって話だ。
「白鳥とコウモリ」単行本P391
つまり白鳥とコウモリは【正反対の立場】の例えでした。
白鳥とコウモリ(=美令と和真)は同じ鳥(=人間)ですが、
「白い鳥=潔白=殺された側」と「真っ黒な鳥=罪人=殺した側」は正反対。
そんな「鳥たち=家族たち」が「一緒=共同」に「飛ぶ=事件を調べる」なんて不思議だということでしょう。
タイトルの解釈(1)
また、これは当記事筆者の解釈ですが、同じ鳥なのに羽の色(被害者か加害者)が違うだけで良いイメージ・悪いイメージをつけられるということも含まれていると思います。
白鳥は優雅で美しいイメージです。
ちなみにチャイコフスキーの「白鳥の湖」は、悪魔の魔法で白鳥にされてしまった王女と王子の恋の物語。主演バレリーナが一人二役をこなすこと特徴であり、清楚な白鳥オデットと、王子を誘惑する妖艶な黒鳥オディールを演じます。やはり、白鳥はいいイメージですね。
一方、コウモリは「暗い場所を飛び回る」「吸血鬼」「悪役の手下」「怖い」などのダークなイメージ。コウモリ起源のウイルスも怖いですよね。
タイトルの解釈(2)
しかし別の解釈もできます。
白鳥は凶暴で、繁殖期に巣に近付くものを攻撃する習性があり、人間も攻撃の対象となりうるらしいのです。
一方、コウモリは生態系において重要だとの指摘も。
コウモリは自然界での害虫コントロールにおいても重要な役割を果たしている。
コウモリの重要性
タイトル『白鳥とコウモリ』は、1つ見方が変われば、加害者・被害者どちらにもなってしまうということも示しているのではないでしょうか。
実際、真相を知った時、美令と和真の立場が変わってしまったように…。
【白鳥とコウモリ】のあらすじネタバレ
ここからは、【白鳥とコウモリ】のあらすじネタバレを紹介!
(1)起:犯人逮捕まで
まずは起承転結の「起」。犯人逮捕までのあらすじネタバレ(1)について。
2017年11月1日、遺体発見
2017年秋、11月1日。捜査一課刑事の五代努と所轄の中町はタッグを組み捜査しています。足立区の町工場にて、山田裕太という若者を聞き込みへ。被害者・白石健介と2週間前に会った件について尋ねます。
山田は様子を見に来ただけだったと言います。かつて弁護をしてもらって恩に感じている山田は「あの先生を恨む人なんていない」と断言しました。
事件の発端は警備員の電話でした。竹橋桟橋近くで違法駐車している不審な車(セダン)があるという通報に、最寄りの警察の交通課が向かいます。すると、遺体が発見されました。お腹にナイフが刺さったままで、財布は盗られていません。免許証もあり、身元が判明しました。
遺体の身元が白石健介でした。55歳。港区南青山に事務所を構える弁護士。妻と娘がいます。仕事用と携帯電話と、家族用のスマホを持っていたはずとのこと。警察がかけると携帯は繋がらないものの、スマホは繋がりました。
スマホが発見されたのは隅田川の清洲橋(きよすばし)のそば、隅田川テラスという遊歩道でした。住所は江東区佐賀です。現場に白石の血痕もありました。携帯は発見されませんでした。
スマホの位置情報で、被害者の足取りも判明。↓
- 10月31日午前8時20分:南青山の自宅を出発
- 同日午前8時30分:事務所に到着
- 同日午後6時過ぎ:車で移動
- 同日午後6時30分頃:江東区富岡一丁目へ(富岡八幡宮がある)
- 同日午後6時40分頃:車で移動
- 同日午後7時少し前:隅田川テラスに到着
- 以降、犯人が被害者を車に乗せて、竹橋桟橋近くへ移動したもよう。
隅田川テラスは普段はジョギングコースだが、当日は工事があり、通り抜けできない状態。人は少なかったとみられています。
五代と中町は被害者の人間関係を洗う敷鑑(しきかん)捜査を担当。白石の妻・綾子、その娘・令子に会います。「誰かから恨まれるようなこと、あの人は何ひとつしていないと思います」と綾子。「減刑を目指すだけでなく被告人自身に罪の重さをわかってもらうのが自分のやり方と言っていた。そんな父が殺されるほど憎まれるなんてあり得ない」と令子。富岡八幡宮・隅田川テラス・港区海岸という3つの場所との関わりについても2人は特に知りませんでした。
五代・中町は次に白石のアシスタントの長井節子へ聞き込み。「依頼人だけじゃなく、相手のことも大事に考えて弁護をする、とても良心的な方だったと思います」という節子は、仕事関係でなくプライベートなことが殺害理由ではないかと語ります。といっても、白石にお金・女性関係のトラブルはありません。「頭のおかしい人に殺されたのではないか?」と節子。 富岡八幡宮・隅田川テラス・港区海岸については、長井も心当たりありませんでした。
その後の聞き込みでも、誰もが「あの先生が恨まれていたなんて考えられない」と言います。
五代・中町は例の富岡八幡宮が近くにある門前仲町(東京都江東区)のお店で、名物・深川飯を食べます。五代は「この町に一体何があるんだろうな」とつぶやきました。中町も「被害者には縁もゆかりもない場所みたいですからね。」と気になる様子。
捜査によって、白石健介がこの1ヶ月で2度、門前仲町に来ていることが分かっていました。
- 2017年10月7日:かなり歩き回っている
- 2017年10月20日:永代(えいたい)通りに面したコーヒーショップに真っ直ぐ入店
いずれも同じコインパーキングに車を停めていました。(10月31日午後6時30分の停車も同じ場所)
地取り捜査班がその喫茶店に行くと、防犯カメラに白石の出入りが映っています。出入りは白石ひとりだけなので、誰かと会っていたわけではない?荷物も書類鞄だけ。店員は白石を覚えていなくて、捜査は進展しません。
五代・中町は例のコーヒーショップへ行きます。2時間の滞在で彼は何をしていたのか…。五代は通りが良く見えることから、誰かを監視していたのでは?と推理。
被害者に電話していた男・倉木達郎
五代は、経費削減のため一人で出張へ。場所は愛知県安城市(あんじょうし)。聞き込み相手は倉木達郎、66歳。10月2日に白石法律事務所に電話をかけていた人物です。
倉木は無料法律相談と知って白石へ電話したものの、ネットでわかる程度の答えだったと言います。相談内容は教えてくれませんでした。手掛かりなしかと思われた中、トイレを借りた五代は、トイレを出たそばの柱にお札が貼られているのを発見。それは例の富岡八幡宮のものでした。
倉木は「お札はもらった」と言います。誰からかは「忘れた」と言い張るので、奇妙に思う五代。倉木の10月31日はいつもと変わらない1日でアリバイはありません。
倉木は東京に住む息子の家へ行くこともあるようです。最近では、3ヶ月前の8月16日に1泊2日で上京しました。
帰り際、倉木は10月5日にも1泊2日で息子宅へ行ったと明かします。白石健介が初めて門前仲町へ立ち寄ったのは10月7日なので近い日付です。五代は、急に上京を明かした倉木への疑念をぬぐえませんでした。
後日。五代・中町は、東京にいる倉木の息子・倉木和真に会います。たしかに10月5日に父が来たけれど、正確には日付変わって6日午前1時(5日の深夜)に来たと言います。父が昼間どこにいたのか、和真は知りませんでした。いつも大した話もせず翌日帰ると言います。
五代・中町は、息子に言えない用事ということから、倉木が「女」に会っていると推理して…。
倉木達郎の東京の女!?
3日後。倉木の女らしき人物を突き止めます。捜査員たちの聞き込みで、門前仲町の小料理屋「あすなろ」で倉木を見かけた情報をつかんだのです。
五代・中町が「あすなろ」へ。すると、例のコーヒーショップの真向かいが「あすなろ」でした。「あすなろ」の開店前に入り聞き込みへ。
経営者は70歳近い浅羽洋子ですが、留守でした。店を切り盛りしている40歳前後の娘・織恵がいて、五代たちが聞き込みをします。倉木は5、6年前から上京のたびに店に来て、19時から閉店の23時半まで4時間半ひとりでいると言います。
洋子が帰ってきたので、彼女にも聞き込みをしました。「倉木さんを疑っているんだとしたら、とんだ的外れですよ。あの人が悪いことなんかするわけありませんからね」と警戒する洋子。
10月31日のアリバイは2人とも店で働いていてありました。…五代は洋子の方言が気になって出身地を尋ねます。洋子は愛知県瀬戸市出身で、結婚して愛知県豊川市に30代半ばまで住んでいました。夫の死後、しばらくして上京しています。
洋子は調べられたら分かると思い、「夫は警察に殺されました」と明かします。殺人事件の容疑者として逮捕され、留置場で自殺したのです…。
1984年、愛知県の殺人事件
殺人事件が起きたのは、1984年5月15日(火)。場所は名古屋鉄道(通称:名鉄)東岡崎駅の近くの雑居ビルの一室。そこを事務所にしていた経営者が殺害されました。
被害者は、灰谷昭造。51歳。独身。包丁で胸を刺されていました。通報したのは事務所の従業員で、夜7時30分頃。
3日後の5月18日。福間淳二が逮捕されました。別件逮捕だったもよう。4日後、留置場で首を吊って自殺しました。
事件は被疑者死亡で送検され、不起訴処分。1999年5月、公訴時効を迎えました。
五代と中町は、愛知県へ出張。1984年の事件で捜査をしていた村松重則と会います。
当時、灰谷は詐欺師まがいのことをしていました。保険会社にいたときの顧客名簿を東西商事という詐欺グループに渡し、ともに高齢者を騙していました。
福間淳二も騙されたひとりです。福間は灰谷を殴っていたことで、逮捕されました。県警本部から来たコンビが福間に厳しい取調べをしていましたが、自殺してしまいました。
しかし顧客リストの中に倉木の名前はありません。あきらめかけたところ、村松の手帳のメモから、第1発見者が2人いたとわかります。ひとりが灰谷の甥っ子。もうひとりは事情(※)があって灰谷の運転手をしていた男で、それが倉木でした。
※倉木の運転する車が(自転車に乗っていた)灰谷にあたり、ケガさせたため、灰谷のケガが治るまで運転手をしていました。
犯人逮捕へ
さらに、倉木が10月6日の夕方に東京駅で白石弁護士と会っていたことが防犯カメラを調べていた班が突き止めました。
五代と中町は愛知に来ていたため、そのまま倉木の家へ予告なく訪問。
「白石とは電話だけ」と嘘ついたこと、小料理屋「あすなろ」の店主からお札をもらったのを「忘れた」とごまかしていたこと、1984年の事件の第1発見者だったこと…などを五代から次々と突きつけられます。
観念した倉木は、「すべて、私がやりました。すべての事件の犯人は私です。白石さんを殺したのは私です。そして灰谷昭造を殺したのも私です」と自白します。
(2)承:犯人逮捕後、迷宮へ
【白鳥とコウモリ】のあらすじネタバレ(2)です。犯人・倉木達郎を逮捕後のあらすじを紹介。
起承転結の「承」に相当します。五代たちは迷宮へ誘(いざな)われていき…。
犯人・倉木の自供
<倉木の自供内容>
倉木は交通事故を起こしたことを勤務先に黙っていました。自動車会社に勤めていたからです。事故の相手の灰谷は大したケガじゃなさそうなのに治療費をふっかけられ、送り迎えもさせられます。そんな中、「これ以上つきまとわれたくない」と脅すつもりで包丁を向けて、「やれるならやってみろ」と笑われたので…刺してしまいました。
別の人が逮捕されたので「助かった」と倉木は思います。
しかし犯人とされた福間さんの家族が、世間の目もあり引っ越したと聞きました。そこで罪を自覚した倉木は探偵を雇って、福間さんの遺族を調べて小料理屋を営んでいるのを知ります。
倉木はとくに行動せず月日が経過。福間さんの遺族=浅羽親子の店に行ったのは定年退職後となる、10年後でした。
そんな中、東京ドームで隣り合わせて出会った白石弁護士に、浅羽親子に遺産を渡したいと相談。やがて過去の罪を白石に告白します。すると、「生きてるうちに打ち明けるべき」と強く言われました。倉木は浅羽親子に罪を話されることを恐れて、白石を殺害してしまったのです。(あくまで倉木の自供内容)
倉木の手紙
倉木の息子・和真のもとへ、父の担当弁護士・堀部が訪ねてきます。
そして父の手紙を受け取りました。そこには3つのお願いが語られていました。
<倉木の父の手紙>
- 親子の縁を切ってもらいたい。
- 妻の千里は何も知らなかった。父のことは忘れていいが母の愛情は忘れないでほしい。
- 篠目(ささめ)にある自宅や荷物の処分を任せたい。
弁護士の堀部は事実関係を争うのでなく、死刑を免れるよう戦うつもりです。この手紙も反省がみられるので証拠として提出し、和真にも情状酌量を訴えてほしいと頼みます。
和真はまだ父の事件を信じられません。しかし堀部から父が服役囚と死刑囚では大きな違いだと聞いて、事態の深刻さを受け入れます。
倉木の浅羽親子への感情は?
一方、五代と中町は東陽町にある浅羽親子の自宅へ聞き込み。上司から、倉木が浅羽親子どちらかに恋心があったかつかむように、指示されていました。しかし聞き込みでの成果はありません。アクセサリーをプレゼントされたこともなく、店の外で倉木と会ったこともないようでした。
検察は裁判員の心証を悪くする材料が欲しいのです。倉木が小料理屋に通っていたのは贖罪でなく下心だと。
弁護士は、倉木が浅羽親子と過ごす時間が生き甲斐だったから、その生き甲斐を奪おうとした白石を殺害したことに情状酌量の余地があると主張したいのです。
一方、検察は遺族との時間を生き甲斐にするなんて反省していない、そもそも浅羽親子に対する気持ちはどうなのかと疑っていました。
秘密の暴露
倉木の供述の裏取りが進みません。新幹線や門前仲町の防犯カメラに倉木の姿はなく、目撃者もまだいないのです。白石健介の車からも倉木の指紋・DNA・毛髪などは出てきません。そういうことはあるのですが…。
しかし倉木は報道されていない<刺殺した場所>(=隅田川テラス)を自供しています。
いわゆる「秘密の暴露」は裁判で重要視されるのです。
五代は倉木が嘘をついていると疑っていました。単独行動で、白石の妻子に聞き込み。そこで、白石健介と倉木が初めて会ったという東京ドームでの話を切り出すも、妻子は東京ドームの件を知りませんでした。
倉木と白石弁護士の出会い
3月末、倉木と白石は東京ドームでたまたま隣り合わせました。倉木のビールの中に白石が(売り子に渡そうとした)千円札を誤って落としてしまいます。それをきっかけに会話をし始めました。倉木は財布を紛失。帰りの交通費がなくなり困った倉木。白石がお金を貸してくれて、名刺の住所に元気書留で返してくれればいいといいました。倉木はちゃんと返します。その後、白石が手紙をくれて法律のことなら相談乗るからと言ってくれて…倉木が遺産を他人に渡す相談をしたという流れ。
五代は、自転車店の店主・藤岡や不動産屋に話しを聞いたところ、浅羽織恵の方が倉木に好意を抱いているようにみえた、とわかります。
一方、倉木和真は会社に父の逮捕が伝わってしまいます。ネットでも和真の身元が拡散されていました。会社を2週間休みになり、その後、表にでない部署へ配置転換することに。さらに、南原というフリーの記者が和真を突撃取材。誘導尋問で(マスコミ発表されていない)過去の事件が殺人事件だと暴かれてしまいます。
その後、和真は仲がよかった同僚・雨宮とともに小料理屋『あすなろ』へ客として訪れ、洋子・織恵の働く姿を目の当たりにします。織恵とは目が合ったような気がしましたが、一瞬だけでした。
白石綾子・美令が被害者参加制度の使用へ
被害者遺族の白石綾子・美令の親子は、被害者参加制度を使うことにします。亡き父の知人から佐久間弁護士を紹介してもらいました。佐久間によると、あくまでお手伝いしかできないと言います。
被害者参加制度 とは…一言でいうと、「被害者や遺族が蚊帳の中に入れるようになった」ということ。これまでの裁判は、被告人・弁護人・検察官のみが当事者。被害者・遺族は被害状況などの立証するための証拠のひとつにすぎません。それが問題視されて、被害者・遺族も裁判に参加し、意見や質問ができるように法改正されたのです。
「父(被害者)はそんな人じゃないです」
綾子・美令は被害者参制度のおかげで公判前整理手続の記録を読むことができました。そこで、事件の概要を初めて知ります。ですが、美令が違和感があると言います。
「父はそんな人じゃないです」と美令。父は闇雲に正義を振りかざす考え方をしない、と美令は訴えます。真実を告白すべきというのは正論ですが、父はそれができないのも人間とよくわかっている人だ、と…。
倉木被告人が手紙で父から2回責められた件も「おかしいです」と美令。「罪をごまかすことには手を貸せない」「そんなことするなら罪を明るみにする道を選ぶ」と手紙に書いてあったというのですが… 「あり得ないです」と美令。
その手紙2通は倉木被告がどちらも捨ててしまっています。検察も疑っていますが、証拠として提出されないので問題にはしないとのこと。
美令は納得できません。綾子も被告人の人間性を疑問視。冤罪で自殺した男の遺族に詫びたい人間が、そんな思いやりのある人間が、なぜまた殺人を犯したのか…。その点は検察も疑問視して、倉木の下心を示す証拠を探りましたが、何もありませんでした。
マスコミが報じる
やがて『週刊世報』が事件を特集。タイトルは「時効は恩赦か?罪に問われない殺人者たちのその後」。時効が成立した者は罰を受けなくていいのか、と世に問う内容でした。記事の最後には、倉木被告の長男に直撃し、「現在はともかく、当時は15年という時効があったわけだから、過去の事件に対する父の償いは済んでいると思います」というコメントを紹介。疑問を投げかけて結んでいます。
倉木和真は誘導尋問でそのようなニュアンスで答えてしまったのです。和真は堀部弁護士に今後答えないよう注意されます。
浅羽親子の気持ち
五代は、ひとりで『あすなろ』へ。勤務外なのでお酒を飲みます。浅羽親子は堀部弁護士から倉木の手紙を受け取っていました。「お詫びしたい」という内容です。浅羽親子は検事から、倉木が1984年の東岡崎駅前の事件の犯人と聞いていました。
浅羽洋子は倉木のことを「憎くなったのかって聞かれたら正直よく分からないんですよ」と五代に言います。
それどころか、洋子は堀部弁護士に「私たちは大丈夫ですから。身体に気を付けて、しっかり罪を償うように」と倉木への伝言をお願いしていました。
五代の帰り際、40代半ばの男が店に来ました。もう店は閉店しています。男は12時に約束していましたが、早く来たと言っていました。五代は男が気になりますが、洋子に促されて帰ります。
「墓場まで持っていくつもりだった」
倉木和真は堀部弁護士から出版社から「訂正記事は出せない」と言われたと報告を受けます。記者は音声を録音しており、ニュアンスは間違っていないと自信があるもよう。
「お父さんの償いは済んでると思いますか」「済んでいると思いたいです」という会話があった、と。
堀部は浅羽親子に手紙を渡したことも和真に報告。好感触なので、浅羽親子に裁判へ弁護側で呼ぶことも考えています。
堀部は、和真から頼まれていた被告への質問を報告。(和真はまだ父から面会拒否されています)
和真の質問:「東岡崎駅の事件について、ずっと家族に隠し続けるつもりだったのか?」
倉木達郎の答え:「話せるわけがない。あの秘密は墓場まで持っていくつもりだった」
白石美令と検察官
白石美令は、弁護士・佐久間とともに検察官・今橋に会います。そこで父の行動に違和感がある、と伝えます、過去の罪を告白するよう強要する人ではない、と。
しかし今橋はそれは「本質でない」と言います。白石健介が世間に誤解されてしまうのは、遺族として納得できない…それはわかるものの、そこを掘り下げて、裁判員たちが「時効が成立している犯罪について責めるのは是か非か」という論争になるのを避けたい、と今橋。
美令は浅羽親子のことも尋ねます。今橋は検察側では呼ばないと言います。
「本当に悔いてるなら灰谷さんの関係者に詫びるのが筋」と今橋は主張するつもりです。浅羽親子が弁護側で情状酌量を訴えても、その余地はない、と。
美令は、被告人への質問内容を考えてきました。
「あたなは反省の心を持った人ですか?それとも過去の罪を暴こうとする者がいたら殺してしまうような身勝手な人ですか」
と被告人に問いたい、と…。今橋は素晴らしい質問だと褒めます。
倉木和真と浅羽親子の対面
和真は、殺害現場となった隅田川テラスを訪れます。堀部弁護士からは加害者遺族が行くメリットがないと言われましたが、和真はどうしても行きたかったのです。花など添えないように、立ち止まらないように、と注意されて…向かいます。
現場にて。女性が花を添えて祈っていました。…白石健介の殺害された現場は公表されていません。ならば白石健介の娘?…一瞬だけ視線が合って、お互いにそらします。
急ぎ足でその場を離れた和真。すると見おぼえない土地へ。現在地が深川と分かり、ふと近くの門前仲町の『あすなろ』へ行ってみます。
『あすなろ』は開店前で、和真は浅羽親子に会えました。自己紹介すると、娘の織恵の方は先日(和真が同僚と来店したとき)気づいたと言います。しぐさが倉木達郎と同じだった、と。
浅羽洋子は「倉木さんのおかげでようやく救済された」と言います。もちろんもっと早く名乗り出てくれれば、という思いはあります。しかし「それは理想論。人間は弱い生き物だってこの歳になればわかります」と洋子。
洋子は感謝していました。倉木は東岡崎の事件を隠して、白石弁護士の殺害動機はでっち上げてもよかったのに…洗いざらい告白してくれた…そのことで、夫の冤罪を晴らすことができた、と。
和真は父・倉木達郎の『あすなろ』での様子も聞きます。達郎はいつも店の経営状態を気にしていて、少しでも浅羽親子が不景気だと漏らすと、高い料理を何品も注文したそうです。「どんなことでも相談に乗るから」と優しい言葉をよくかけてくれた、と洋子。
和真は父が下心でなく贖罪の気持ちで通っていたと知り、安堵します。
洋子は加害者家族がどういう思いをするか体験しているので、和真に「辛い時は逃げたらいいんですよ。目を閉じて、耳を塞いじゃえばいいんです。無理なんかしちゃダメ」と声をかけ、気遣いました。
倉木和真と白石美令の対面
『あすなろ』を出た和真は、地下鉄「門前仲町駅」で殺害現場で花を添えていた女性を見かけます。
和真が声をかけると、彼女は被害者の娘・白石美令でした。美令は『あすなろ』の向かいにあるコーヒーショップへ寄っていたと言います。
「裁判の準備ですか?」と美令に聞かれました。
浅羽親子が弁護側で証言するかも…という展開になっているのは、和真も聞いていました。なので、あわてて否定します。
「あすなろ」へ行ったのは「ただ父の話を聞きに行ったんです。いまだに信じられないんです。父が嘘をついてるんじゃないかって、だから調べようと…」と和真。
また余計なことを言い過ぎたと思った和真は途中でやめて謝りました。2人は一緒の電車に乗り、なんとなく話すことなく隣合って立っていましたが、和真が降りる駅へ着いて…
美令は「あたしも、あなたのお父さんは嘘をついていると思います。うちの父はあんな人間ではありません」と伝えます。が、扉が開き、和真は降りてしまいました。
(3)転:「白鳥とコウモリ」が一緒に調査
【白鳥とコウモリ】のあらすじネタバレ(3)です。
起承転結の「転」。白鳥(=白石美令)とコウモリ(=倉木和真)が一緒に事件を調べていきます。
引っ越し予定日が「殺害の日」
和真は愛知県篠目(ささめ)の実家へ約2年ぶりに戻ります。和真は達郎が1984年の事件も犯人ならば、なぜその時に捕まらなかったのが疑問でした。
実家へついてタンスなどを調べると、アルバムを発見。両親の結婚写真・新婚旅行、和真の写真など色々とあります。新居に引っ越した日の写真もありました。日付は1988年5月22日です。
和真は父が会社から金を借りていたので「ローン完済まで会社を辞められない」と言っていたのを思い出します。1984年の事件のとき、会社に知られなくいと言いなりになっていた父親。マイホームの資金もあって、被害者ともめてしまったのか…と和真は思いを馳せます。
すると実家に警察がやってきてました。隣の住人の吉山が泥棒かと思って通報したようです。誤解が解けたあと、吉山と話をする吉山。
吉山は父と同じく安城工場で働いていた元同僚。引っ越しの時、吉山は2週連続で引っ越しそばを食わせてもらったと言います。どういうことか?和真が尋ねると…
最初の引っ越し予定日(5月15日)が雨のため、形だけでもと父が段ボールをいくつか運んできたといいます。そのとき、出前でそばを取ってくれたようです。
和真は、『東岡崎駅前金融業者殺害事件』が4年前の1984年5月15日に起きていたと気づきます。父は、殺害の日を引っ越し予定にしていた!?
歯医者の証言
白石綾子が今後コンパくな部屋に引っ越すかもと、父の書斎の片づけをしていました。
美令も父の部屋を整理。すると歯科医院の診察カードを発見。予約日時に3月31日16時とありました。
白石健介が倉木達郎と東京ドームで出会った日です。母によると歯を抜いた日だといいます。
痛み止めを飲めば大丈夫と母は言いますが、美令はそんな日に野球観戦なんてと違和感がありました。
歯科医の水口に会うと、抜歯後でも野球観戦はできると言われました。
しかし注意事項として激しい運動や飲酒を禁止していると言います。
「ビールもダメですよね?父にも言いましたよね?」と美令。水口は言ったはずだし注意事項を書いた書類も渡したはずと言います。
白石健介と倉木達郎が会話したきっかけは、健介がビールを売り子に頼んで買うとき、千円札が達郎のコップに入ってしまったことでしたが…
事件の日付は忘れていた?!
和真は堀部弁護士に引っ越し日のことを父に尋ねてもらいました。
しかし「何も考えてなかった。事件を忘れてないが日付は意識しなかった」と倉木達郎は答えたといいます。
和真は、父にとって念願だった新居に引っ越す日を、その日にするわけないと思います。さらに時効になるのを待ってた父がその日を「忘れていた」も納得できません。
堀部弁護士は、今さら事実関係を争う気はありません。どうしても倉木達郎の自白が嘘だというなら、嘘をつく理由を探してほしいと和真に言いました。
なぜ倉木達郎は嘘をつくのか
五代は、別の死体遺棄事件を捜査していました。逮捕された男は、被害者は自殺だと供述。しかし被害者が友人たちと旅行の計画をしていたことがわかり急展開。事件は終わりを迎えていました。
そんな五代へ、白石美令が連絡してきました。美令は五代に会って、父が飲酒禁止を守らないはずがないと伝えます。つまり倉木達郎の自白は嘘だ、と。
五代は困ります。犯人は逮捕され動機も語っています。行動の裏付けがないものの、秘密の暴露という有力な発言があるのです。
美令は佐久間弁護士にはビールのことを伝えたものの、黙殺される可能性大。そこで五代に頼みに来たのです。五代は、自分なりに調べると約束。
その後、五代は中町と会って2人だけの秘密にします。五代は今担当の死体遺棄事件で容疑者が苦しい言い訳をしているのを思い出します。普通は罪を逃れたいから嘘をつくものなのに、倉木は何のために嘘をついているのか?…五代と中町は不思議がります。
倉木達郎のアリバイ
和真は記者の南原に会って、1984年の事件のことを聞きます。
和真は警察から父が追求されなかったのはアリバイがあったからではないかと疑っていました。
被害者の甥(おい)・坂野も第一発見者だったので、南原が話を聞きに行っていました。すると、坂野は倉木達郎に「アリバイがあるんだな」と思ったと妙なことを言っていたといいます。
和真は坂野の連絡先を聞きます。会って確かめるために。
愛知の弁護士
五代が担当する別の死体遺棄事件は犯人が自供し終幕を迎えていました。
そんな中、白石美令から五代へ電話があります。ビールの件は進んでないと明かすと、美令は被告人の息子・和真の連絡先を教えてほしいと要望。
五代は拒否します。個人情報であり、そもそも被害者遺族が加害者家族に会うのは威嚇(いかく)と受け取られ、良いことはないのです。
…五代は中町から、捜査資料の中から気になるものが分かったと聞きます。それは倉木達郎の名刺で、天野良三という弁護士のもの。住所は名古屋でした。
近くに知りあいの弁護士がいるのに、なぜ白石弁護士に電話したり、上京して相談までしたのか?
新たな疑問がわきます。そし署では倉木の供述の裏取りを進めていますが、指紋・DNAや事件当日の倉木の形跡、かけた携帯電話もわからずじまい。
倉木は、名古屋の大須(おおす)で見知らぬ男からプリペイド携帯を買って、使用した。ハンマーで壊して三河湾に捨てたと供述。
頼みの<秘密の暴露>も怪しくなってきました。倉木の逮捕前、SNSで清洲橋付近で殺人事件かもと投稿があったのです。
裏取りがなく供述頼みの事件…五代はまだ何かある、と胸騒ぎがします。
和真と美令、2度目の対面
和真は愛知県の豊橋へ行き、1984年の被害者の甥・坂野に会います。坂野は電器屋のおっさん(=福間淳二)が犯人だと思っていたと言います。彼が被害者の詐欺に遭って、文句をよく言いに来ていたからでした。
警察にアリバイを聞かれていた坂野。ともに遺体を発見した倉木達郎も警察に聞かれて何か答えていました。それで倉木にもアリバイがあるんだ、と思った…その程度のことでした。
帰りの新幹線で、和真は聞き込みの成果がなかったことで落ち込んでいました。
時効になり資料もないような事件…しかし警察は達郎にアリバイがあるから容疑者から外したはず、と和真は思います。
そこで事件現場の清洲橋へ行ってみることに。すると、白石美令がいました。
美令からビールの件を聞きます。和真が父に東京ドームのチケットをあげたので、達郎が行ったのは本当だとして、「(被害者の)父は行ってない」と美令。
和真も、引っ越し日や坂野の発言から父の供述は嘘だと言います。
…倉木達郎の供述で救われた人がいるとしたら、浅羽親子でした。夫(父)の冤罪が晴れたから。それならば、倉木が白石弁護士を殺害したのは別の動機か?
答えはでないが、和真と美令は考え続けることにし、連絡先を交換した。
浅羽織恵の元夫
和真は五代に会って、持論を話します。倉木達郎は浅羽親子を助けるため、やってもない罪を自供した、と。五代は良い着眼点だと認めます。
五代はプリペイド携帯の件を和真に尋ねますが、和真は心当たりがありませんでした。
さらに、名古屋の弁護士の名刺の件を知った和真。五代は捜査することはできないが、息子が行けばなんとかなるかもと助言し…。
その後、五代は「あすなろ」へ。そこで見覚えある男に遭遇。以前、閉店後に来た男です。彼は浅羽織恵の元夫・安西でした。
安西は夫婦仲が悪くなって離婚したのでなく、彼女の父親の逮捕・自殺が家族にばれてしまったからだと言います。冤罪だと分かった以上、子供の教育を一緒に何が出来ないかと相談していたのだと言います。
五代が復縁するのか尋ねると、再婚しているから無理だと分かりました。しかし洋子よると、織恵には心を許せる相手が出来たようだということです。五代は、倉木のことではないかと思います。
美令の目的は真実を知ること
美令は倉木被告に会いたい、と佐久間弁護士に頼みます。
メリットがないので、佐久間は拒否。被告人の息子に会ったと聞いて、驚く佐久間。
もし勝手に会いに行った場合は、弁護士としての手伝いを降りると言い出します。
佐久間は今橋検事に任せておけば倉木被告の死刑もあり得るのに、何かの事情が見つかったら刑が軽くなってしまうと指摘。
美令は「仕方ないです」と返答。美令の目的は死刑判決でなく、真実を知ることでした。
佐久間は被告人が嘘をつくメリットがないとも言います。
美令は倉木被告のメリットが、浅羽親子の冤罪による苦しみから救うことと指摘。
佐久間はあり得るが、想像に過ぎないと返答。
美令は「裁判で真実が明らかになるわけでない」とショックを受けました。
美令はなぜ遺族に謝罪してこないのか疑問に思いました。このことを和真と相談してみようと考えていると、佐久間に見抜かれ、どうかやめてほしいと言われてしまいます。
家にて。美令は、綾子から敵の和真と会うことを否定されます。綾子は死刑判決を望んでいました。
しかし美令は真実が知りたいのです。そのためなら誰とでも組む覚悟です。
母の考えは理解した美令ですが、自分の時間は止まったまま、と言います。
「死刑判決なんて、あたしにとって何の意味もない」と美令は言い放ちました。
名古屋の弁護士
和真は名古屋の弁護士・天野へ会いに行きます。父の遺産相続についての相談という名目です。
父が遺言書を作っているが、全財産をひとり息子の自分でなく、赤の他人に残そうとしていると。天野は、和真が了承しなければ、遺留分として受け取る権利があると返答。
そして、父が天野に相談して、全財産を他人に譲れると理解したらしいと指摘。
ここまで五代との打ち合わせどおり。そうすれば天野は何か反応するはず、反応がなければ訪ねていたないということ、と。
天野は書類を確認して、倉木達郎が来たことを明かしたものの、「遺留分の話しはしたはず」と言います。
和真はここで帰ります。天野の返答で充分でした。
新幹線に乗ると、白石美令から電話がきて、東京の銀座で会うことにしました。
和真は新幹線で三河安城駅へ。そこからタクシーで実家へ行き、郵便物を受け取った。
父宛ての封筒の中に病院の化学療法科からのものがあった。和真は開けてみて…。
(4)結:驚愕の結末へ
【白鳥とコウモリ】のあらすじネタバレ(4)です。
起承転結の「結」パートです。美令と和真の調べによって、驚愕の結末へ至ります。
和真と美令、3回目の対面
和真と美令が銀座の喫茶店で会って、情報交換をします。
和真は天野弁護士に会ってきたことを伝えました。同じことを白石健介に相談するはずないから供述は嘘だと、和真は確信しています。
美令は東京ドームについて、父・健介のチケット入手ルートを確認できてないと言います。もし確認できていれば、飲酒禁止の件を伝えたときに五代は「東京ドームに行っている」と答えたはずだから。
美令は窓から銀座の街を眺めていると、ふと気づきます。父・健介はなぜ「あすなろ」の向かいの喫茶店にいたのか…。しかも2回も。
和真は1984年の事件を調べ直そうと決心。美令も昔のことを調べようと考え始めます。
*****
美令が家へ戻って、父親のアルバムを調べると、美令の知らない老婦人と父が一緒に映っている写真が気になりました。狸の置物がたくさん映っています。母・洋子に尋ねても、老婦人のことは知らないようです。場所を聞くと、洋子は「滋賀県でしょ。狸といえば信楽(しがらき)でしょ」と言います。
また、美令は父が6歳か7歳ごろの写真で、ドラゴンズの帽子をかぶっていたのを発見。倉木被告は、健介が巨人のV10を中日が阻止したことでファンになったと供述。しかしV10阻止の年は1974年、健介が12歳の年だった。倉木被告は嘘をついていた。
その後、和真に写真を送って見せると、その場所は愛知県常滑(とこなめ)だと言います。焼き物で有名な町だそうで…。
五代と中町が焦る
五代と中町は倉木和真のマンションを後にして、近くの居酒屋で作戦会議をします。
倉木被告が天野に会っていた事実から、白石健介と法律相談で会っていたのは嘘。
白石健介が中日ドラゴンズファンになった年代の嘘…。
次々と嘘の状況証拠があがる。
和真と美令が一緒に調べているという点にも、五代と中町は驚いていた。
中町はまるで「白鳥とコウモリが一緒に飛ぼうとしてる」と表現した。
五代は倉木被告が、白石健介が中日ドラゴンズファンになった理由を隠したがったのだろうと推測。老婦人と映ってた写真が出てきたことから、愛知県とゆかりがあったのだろう。それを隠したかった…。
話題はプリペイド携帯に。倉木に売った人物は見つかっていない。中町は、本当は誰か別の人の携帯を借りたからその人のために嘘をついてるのかも…と推理。
五代も携帯を借りた説はあり得る話だと思います。が、それだと被害者の携帯を処分できなかった場合に着信記録が残ります。
中町は「自分の携帯からの発信記録を残したくないなら公衆電話を使えばよかったのに」ともらします。
そこで、五代は自分がヘマをやらかしたと気づいて…。
倉木達郎の友人
美令は、父親の古い友人・浜口徹のもとを訪ねて父の話を聞かせてほしいと頼みます。
愛知県との関わりを尋ねると、学生の頃、白石健介は名古屋行きの高速バスに時々乗っていたと言います。
健介が名古屋方面へいくたびに浜口の家に泊まったことにしてほしい、と頼まれていました。健介は母(美令の祖母)に知られたくなかったようです。
しかし大学3年秋、「もう行かなくてよくなった」と健介が言っていました。愛知の恋人に振られたのかとからかうと、健介に怒られたといいます。
健介が綾子と知り合ったのは大学4年4月でした。なので、美令の母は健介の定期的な愛知行きを知らなかったのです。
浜口は、美令が27歳と知り、まだ若いから父親のことを知らないこともたくさんあるでしょうと語ります。
浜口は3年前に父を亡くし、そのとき祖父の戸籍を見つけて、父に妹がいたのを初めて知ったと懐かしみました。
倉木達郎の病気
和真は堀部弁護士に会います。天野弁護士に会った話しをします。
しかし相変わらず、堀部は事実関係を掘り下げることに反対で、減刑することに注力しています。
和真は、父宛ての封筒を堀部にみせます。中身は医師からの手紙で、抗がん剤治療をどこで受けるのか教えてほしいという問い合わせでした。
父・達郎は8年前に手術を受けた大腸がんが再発していたもよう。手紙によると引っ越すから治療を中断すると担当医師に伝えていて、医師は「病院が決まったら教えてほしい」と言っていたのです。
達郎は現在の治療はしていないため…和真は堀部から治療するよう伝えて欲しいとお願いした。
和真は堀部の見解(癌の再発があって自白した)と違い、父は死を覚悟して何か・誰かを守ろうとしていると思っていました。
それでも堀部は今さら事実関係を争うのは得策でないと反対。
和真はとにかく病気のことを父に話してほしいとお願いします。
その後、白石美令から連絡があり、銀座でまた会います。
そこで「一緒に常滑へ行っていただきたい」と美令から頼まれて…
捜査会議
五代は、管理官・理事官・捜査一課長が同席する捜査会議にて、重大な新事実を報告します。
五代は、倉木はプリペイド携帯を使って被害者を呼び出したと供述しているものの、公衆電話を使ったのではないか?と推理。
そこで該当時間内に公衆電話に近づいた人物はひとり。防犯カメラにも残っていました。調べたところ、参考人として事情聴取した人物の身内でした。
五代は、倉木がこの人物を守るために嘘の自供をしていると指摘。
本人へ聞き込みに行くことになり、捜査会議は終了します。
五代は、敷鑑捜査班を仕切る筒井に「俺のミスです」と謝りました。
五代が愛知県へひとりで出張して倉木を取調べたとき、つい口走ってしまったのです。
東京の街はいたるところに監視カメラがあるから嘘はバレる、特に公衆電話を使ったと分かれば映像解析でバレる…と告げていたのです。
筒井は、殺人の罪をかぶるなんて思わないと、五代をフォローしました。
五代が、公衆電話から電話した人物を見たのは、浅羽親子の部屋に聞き込みに行ったとき。その部屋に飾ってあった写真の男の子でした。
男の子は浅羽織恵の息子で、元夫と暮らしている中学2年生の安西知希でーー。
和真・美令が愛知県常滑市へ
和真と美令は愛知県常滑市へ新幹線で一緒に向かいます。
美令は祖父の戸籍を調べていました。すると、祖父は別れた元の奥さんとの間に出来た子だ分かりました。
父・白石健介と写真に映る老婦人が曾祖父の元奥さんなのだろうと推察できます。
つまり、健介の祖母です。美令の血が繋がった曽祖母(そうそぼ)=ひいおばあちゃんでもあります。
美令がこれまで曽祖母と思っていた方は、祖父の後妻で、美令や健介と血の繋がりはなかったのです。(※下記の相関図も参照のこと)
美令と和真が一緒に近所の人から聞き込みすると、美令の曽祖母・新美ヒデは親が資産家で、投資に手を出したことがわかります。ところが、その仲介者に大きく損をさせられて引っ越したそうです。
つまり、白石健介の祖母は1984年に殺された灰谷の詐欺・被害者だったのです。
美令と和真は不吉なストーリーを想像してしまい…。
白石家の家系図
白石家の家系図を紹介します。
五代が安西家へ
五代は、高級住宅街の渋谷区松濤(しょうとう)にある安西宅へ。
五代は知希に会って、スマホを持っているのに公衆電話を使った理由、そしてどこにかけたのかと問い詰めます。
黙秘していましたが、観念したのか、知希は薄く笑って…電話をかけた相手は白石だと言い、自分が殺したと白状しました。
真実にたどり着いた達成感
五代は、白石家を訪問。遺族の白石綾子・美令に捜査に新展開があったことを報告します。
倉木と違う容疑者が浮上し、倉木が不起訴、釈放になるだろう、と。
誰が容疑者かはまだ明かしませんでした。代わりに辛い新事実を、五代は伝えに来たのです。
五代は、真犯人は復讐が動機だと語っているとだけ明かします。
1984年の真犯人が白井健介だと知って復讐したのだ、と。
つらい真実でしたが、美令は達成感や心地よさに似たものを感じていました…。
倉木達郎の告白
五代は釈放された倉木達郎に同行を願い話を聞きました。
1984年5月、33歳の倉木は車で仕事に行く途中、自転車に乗る灰谷と接触してしまい警察に連絡を入れました。
救急車も呼びましたが、灰谷はタバコを吹かしながら座って待っていたので大した事にはならないと思っていました。
警察の実況見分で、警官たちが当惑し首をひねっていたのを倉木は覚えています。
倉木が勤めるのが自動車会社の子会社のため、保険を使うと会社にバレて査定に響くから小さな事故は保険を使わないのが慣例。
倉木も自費で対処しようと決めました。しかし初回の治療費に3万だの、怪我をして動けないから運転手をやれなど言われてしまいます。
仕方なく従っていた倉木ですが、ある日、白石健介が灰谷ともめてる場面に遭遇。後で話しを聞いたところによると、白石の祖母が灰谷に騙されていて、お金を取り返しに来たとのこと。
ある日、倉木は警察から事故の痕跡が見られないから事故として処理できないと言われます。なんと、車は灰谷に接触しておらず自分で転んだのを倉木のせいにした可能性が濃厚でした。
倉木はさすがに怒って、もう運転手もしないし、治療費も返してもらおう…そう思って灰谷の事務所へ行きます。しかし会社の電話番の人(=坂野)とお客さん(=浅羽織恵の父)だけでした。
倉木はファミレスで時間をつぶして灰谷を待ちます。(※この行動が倉木のアリバイに!)
倉木が19時過ぎに事務所へ戻ると、入り口で坂野と会いました。2人で階段を上がると、事務所で灰谷が刺されて、倒れていました。(※第一発見者がこの2人)
坂野は部屋に入るのが恐ろしい様子。事務所の電話に触れない方がいいと倉木が助言し、坂野が外に出て公衆電話から通報しました。
倉木はなにやら争ったことに気付き窓を開けると白石が塀を乗り越えようとしているのを目にします。
互いに目が合いますが、倉木は頷いて彼を逃がします。その後、包丁の指紋を拭きとって隠蔽工作。
白石健介と前に短い時間会っただけでも、白石が「好青年だ」と倉木は感じていました。灰谷が人を騙す悪人だと把握していたのでおそらくそれが理由の衝動的な行動だとも推測できます。
だから…こんな形で人生を棒に振ってほしくない思いで、白石健介を守ったのです。
その後、福間淳二が誤認逮捕されます。
白石健介は自首するかも知れない、と倉木は思います。
警察が訪ねて来たら、その時は正直に話そうと倉木は思っていました。
しかし福間淳二が自殺したとニュースを知り、驚く倉木。
白石から電話があり、倉木は会います。
白石が心から反省していたので、灰谷が悪人という事もあり「誤認逮捕は警察の責任だ。それに失った命はもう取り返せないのだから、これからは生きている人間の幸せを一番に考えるべき。君やお母さんの幸せを」と告げ、別れました。
倉木が大変な間違いをしたと知るのは数年後で…
倉木達郎と浅羽織恵の悲しい事実
倉木は中町と、日本橋の料亭である話をします。
それは倉木達郎と浅羽織恵の悲しい事実で…。
倉木は犯罪者の家族になった洋子と織恵が追われる生活をしていると知り、常連客になって支えていました。
しかし1年ほど前、倉木は織恵から告白されました。
「倉木さんを好きになってしまったのです。」と。
倉木も織恵に好意を抱いていたものの、交際できるわけありません。
「なぜ?」と織恵から追求されたため、倉木は「自分が白石を逃がさなければ父親は亡くなる事はなかった」と彼女にだけ正直に話し、謝罪しました。
時系列
ある日、白石法律相談事務所をネットで見付けた倉木は、連絡してみました。(事務所に着信記録があった10月2日)
その後、倉木は東京駅近くで白石健介と会いました。(防犯カメラに映っていた10月6日)
白石健介は今でもずっと反省していました。そこで倉木は浅羽親子のことを話します。
翌10月7日。白石健介は門前仲町を歩き回って、「あすなろ」を発見。向かいの喫茶店に入りました。 (スマホの位置情報より)
10月20日。白石健介は、今度は2時間近く「あすなろ」向かいの喫茶店に滞在。(スマホの位置情報より)
しかし「あすなろ」に行く勇気は出なかったもよう。白石洋子が「夫が最近考えこんでいた」というのは会うかどうかの悩みだろうと思われます。足立区の工場に白石が用もないのに訪ねていたのは、弁護士を辞める前に元依頼人の様子を見に行ったのかも…。
倉木も悩みます。そこで、白石健介のことをメールで織恵に伝えました。(メール内容は不明:白石が会いに行ってもいいのかという内容か?)
織恵から織恵名義のスマホをプレゼントされていて、2人だけの連絡手段に思われていましたが…
しかし、息子の知希は織恵のスマホでよく遊んでいた経験から解除方法を知っていまて、織恵のスマホを盗み見てしまいます。
10月27日。知希は白石健介の事務所の前まで行き、会ってしまいます。そこで福間淳二の孫だと名乗りました。
急ぎの用事があった白石は名刺を渡して、また連絡してほしいと言って別れます。
10月30日。知希は白石に電話し、翌日に会う約束をかわします。(公衆電話から)
10月31日。知希は公衆電話で白石に連絡し場所変更を伝えます。夕方、下見していた清洲橋の下のテラス(隅田川テラス)で、知希が白石を殺害!
しかし知希はその場に遺体を置いて逃走します。それでは離れた場所の車に遺体があったのはなぜか…。共犯者がいたのでしょうか?
白石健介と倉木達郎の贖罪
そこには、共犯者でないものの真犯人を守るためにした、白石・倉木の驚くべき行動がありました。
倉木は事件発覚後、織恵に連絡します。織恵が事件に関わっている、または織恵が殺したのかと心配したのです。
織恵はメールの件を誰にも話していません。しかし知れた人物に思い至ります。
織恵は知希から詳しく話を聞きます。すると、あっさり犯行を認めました。人殺しの孫だと言われるようになり、母親とは離れ新しい母親と妹は家族とは思えず苦しんでいたというのです。
織恵は警察に連絡する前に、倉木に連絡。倉木は知希に細かく質問し、聞きました。
そうして、刺された白石は子供の犯行だと隠すために自ら車を港まで運転し、スマホを捨てて、指紋を拭き、後部座席に移ったのだと気付きました。
白石が過去の罪を償おうとしたのだと感じた倉木は、警察の五代が訪ねてきた事で覚悟を決めて、身代わりの自供をしたのです。
しかし五代は、知希の笑みが気になっていて…。
知希の本当の動機
美令は、佐久間弁護士から、知希が14歳以上だから大人と同じく刑事事件として裁判されることになると聞きました。
※2000年に刑事罰の対象年齢が「16歳以上」から「14歳以上」に引き下げられ、16歳以上が故意に被害者を死亡させた場合は逆送が原則となっています。
ちなみに2007年の改正で少年院送致できる年齢を「14歳以上」から小学生も含む「おおむね12歳」に引き下げ。
2014年の改正で、犯行時18歳未満の少年に無期懲役の代わりに言い渡せる有期刑の上限を「15年から20年」に、不定期刑も「5~10年」を「10~15年」に引き上げ。
しかし犯行時18歳未満の少年に 死刑はありません。少年法は、第51条(死刑と無期刑の緩和)にて、犯行時18歳未満の者について「死刑をもって処断すべきときは、無期刑を科する」と規定しているのです。
佐久間は、被害者参加制度を使うかどうか美令に尋ねます。
その前に少年の殺害動機が明らかになったと話します。
少年の関係者からの聞き込みでイジメがなかったことがわかり、犯罪者家族の苦しみから復讐という動機が怪しくなってきました。
そこで少年に問い詰めると、「人殺しに興味あったから」と供述。祖父が人殺しと噂されて周囲に怖がられ、殺人に興味を持ちました。怨恨が動機なら罪が軽いと計算して犯行に及んだのでした。
美令はそれでも、母と相談した上でだが、裁判に参加しないだろうと返答。もう真実を知れたから。
事件の日の朝、父は美令に雪の話をしました。今年は降るかなと父が言っていたのは、家族旅行で行ったスキーのこと、幸せなころを思い浮かべていたのだろうと美令は今では思います。死ぬ覚悟はできていたのではないか…美令はそう思いました。
だから美令はスッキリしているのですが…殺人者の娘となって、日本中から嫌がらせの電話やカミソリ・謎の粉などがきます。
佐久間はもっと美令を強く止めておけばと後悔。
しかし美令は、倉木が有罪になっても納得しなかったと告げます。
そして救われた人=倉木和真を思い浮かべて…
結末
倉木達郎の本当の罰
清洲橋の事件発生から1年半後。倉木和真は「あすなろ」を訪問。常連客に守られて店は営業できていました。
和真は織恵に、先週、父が亡くなったことを報告。
織恵が達郎に最後に会ったのは、知希が逮捕されて1ヶ月後。「あすなろ」で。
達郎は知希を守れなかったことを謝罪していましたが、織恵は達郎が昔と同じ間違い(真犯人を守ること)をしていたことを指摘。達郎は何も言えませんでした。
和真も父と事件のことを話しました。父は死刑は怖くなかったと言います。しかし息子・和真が犯罪者の身内になったこと…それで受ける被害のことは辛かったと言っていました。
しかし…それこそが「本当の罰」で「必要なこと」だと倉木達郎は受け止めていました。
和真は知希のことは聞きません。けれど刑をまっとうしたあと、織恵が引き取る予感がしました。
手を繋いでもらえませんか?
その後、倉木和真は「佐久間法律事務所」へ行きました。「お知らせ」のハガキをもらったのです。
美令はここで事務として働いていました。(前職は殺人者の娘とばれて以来、休んでいて辞めたようdす)
ハガキは、佐久間が出したものでした。佐久間は和真と美令を引き合わせたかったのです。
和真は父の永眠を報告。しかしそれは表向きの理由。美令に会いたかったのです。
和真は、美令と常滑市へ行った日のことを一生忘れないと言います。美令も同じ気持ちです。
白石健介が1984年の事件関係者とつながった日。あの常滑からの帰りの新幹線。美令は怖くて和真と手を繋ぎました。
あのとき、和真は美令と分かり合えた気がしました。
だから…「だから今日来たんです。また手を繋いでもらえませんか?」と和真。間接的な表現ですが、愛の告白です。
「生きていていいのだろうか」と美令は考えていると言います。殺人者の血が流れているから。子供を産んだら受け継がれてしまうから……。
美令は佐久間から、罪と罰の問題を一緒に働きながら考えていこう、とスタッフに誘われました。
美令は【罪と罰の問題】に何か答えを見つけたら、和真に連絡すると返答。
和真は承諾し、帰ることにします。しかし別れ際、「その日がどんなに先であろうとも、僕は手を差し伸べます。」と和真が約束。
美令は感謝して、笑います。しかしその顔に、涙もこぼれまていした。(おわり)
【白鳥とコウモリ】の感想
【白鳥とコウモリ】は新たなる最高傑作と呼び声が高いです。 Amazonレビューで星5点中4点(2021.10.28現在)を獲得。「面白い」という高評価がありますが…『白夜行』より「軽い」と厳しい評価もあります。
評価が厳しくなる原因は、東野圭吾の過去作の「似たテーマの名作」と比較してしまうからでしょう。
<容疑者が真犯人を守る>という観点では『容疑者Xの献身』の犯人の方が愛情も伝わり、トリックも見事でした。
しかし【白鳥とコウモリ】での「容疑者が犯人を守る」動機は、ちょっと弱いです。真犯人を逃がしたことへの贖罪はありますが、一番悪いのは警察なんですよね。厳しい取調べで福間淳二を自殺に追い込んだのが警察ですし、真犯人にもたどり着けなかったのですから。
<事件の家族>という観点では、東野圭吾氏は『手紙』で加害者家族に、『さまよう刃』で被害者家族に焦点を当てました。本作はそのミックスというか、加害者・被害者両方の家族が真実を追求するのが新しかったですが…。
ただしその分、加害者・被害者どちらの心情描写も薄まっているとも言えます。
それでも、(当記事筆者の)私が心を掴まれたのは…裁判がそのまま進みそうなところを、どうしても真実を追求したいという美令の思いです。
被害者遺族は犯人を罰することができればいいのか…というテーマが興味深かったです。
思い出すのは東野圭吾氏の小説『うつろな十字架』(光文社)。死刑で遺族は救われるのかと問いかけるテーマでした。同作で、ある弁護士が「死刑は犯人に罪を贖罪させる機会を奪うだけ」だから「無力」だと語ります。
本書【白鳥とコウモリ】加害者遺族の美令は、そのまま公判になれば、倉木達郎を死刑にできました。白石綾子もそれを望んでいました。たしかにそう望む遺族もいるでしょう。
しかし美令は「父はそんなことしない」と違和感を捨てきれずに、真実を暴いてしまいます。それで逆に世間から批判されることになってしまうのが皮肉ですが、美令は知れて良かったようです。
被疑者の息子・和真が調査するのも本書の魅力ですが、加害者遺族なのに真実を追求する美令がカッコイイと思いました。共感もしました。私も真実が知りたくなっただろうな、と。
また、「被害者参加制度」というのがあると私は本書で初めて知りました。その点も勉強になりました。
ドラマ・映画化の際は、五代・和真・美令のトリプル主人公か、和真・美令役のダブル主演で描くのもいいのでは?と思いました。ぜひ映像化もしてほしいです♪
【白鳥とコウモリ】登場人物
『白鳥とコウモリ』の登場人物を紹介します。<>は年齢です。ドラマ・映画化した場合は出演者名も追記します。
警察関係者
- 五代努(ごだい・つとむ)<38>…主人公。警視庁捜査一課 強行犯係の刑事。
- 中町(なかまち)<28>…五代の相棒。所轄の若手刑事。精悍な顔つきで高身長。淡々と物事に当たるタイプ。
- 筒井(つつい)…警部補。 被害者の人間関係を洗う敷鑑捜査班を仕切っている。若白髪が目立つ角張った顔の男。
- 桜川(さくらかわ)…強行犯係長。五代の直接の上司。
- 片瀬(かたせ)…愛知県警地域課の巡査長。五代を倉木家へ案内する。
- 村松重則(むらまつ・しげのり)…「東岡崎駅前金融業者殺害事件」当時、所轄の刑事一係。巡査部長として捜査の第一線に参加。当時のことを五代へ話す。
- 山下(やました)…1984年当時は警部補で、県警本部の所属。福間淳二の取り調べを担当。吉岡とともに強引な取調べをしたもよう。
- 吉岡(よしおか)…1984年当時は巡査部長で、県警本部の所属。山下とともに福間淳二の取り調べを担当。
2017年の『港区海岸弁護士殺害及び死体遺棄事件』の被害者と遺族
- 白石健介(しらいし・けんすけ)<55>…刺殺体で発見された被害者。弁護士。東京都練馬区生まれ。現在の住まいは港区南青山。国立大学の法学部卒業後、司法試験合格。その後、飯田橋にある法律事務所で勤務。28歳の時に学生時代から付き合っていた綾子と結婚。38歳で独立し、港区に事務所を設立。経歴は順調にみえるが、高校までは公立校で、中学のときに父を事故で亡くし、一昨年には母が認知症になるなど苦労した一面もある。
- 白石綾子(しらいし・あやこ)<54>…白石健介の妻。健介が「すべてを明らかにするのが誠意ある態度だ」と被告人に迫ったという、被告人の供述を疑問視する。
- 白石美令(しらいし・みれい)<27>…白石健介と綾子の娘。キャビンアテンダントをしていたが、父の紹介で会員制 医療機関の受付に転職。被告人の供述に納得できず、母とともに被害者参加制度を使うことにする。事件を調べていく、本書の主人公的な人物。
- 白石晋太郎(しらいし・しんたろう)…白石健介の亡き父。美令の祖父。
2017年の事件関係者
- 倉木達郎(くらき・たつろう)<66>…白石健介に電話をかけていた重要参考人。愛知県安城(あんじょう)市 篠目(ささめ)に住む、元・自動車メーカー子会社社員。五代らの捜査で追い詰められ、罪を自白する。
- 倉木和真(くらき・かずま)…<33前後>…倉木達郎のひとり息子。高円寺で一人暮らし。東京の大学を出て、九段下にある大手広告代理店へ就職した。父の逮捕で加害者家族となり、ネットで身元も広まってしまう。事件に納得できずに調べる、美令とともに主人公的な人物。
- 倉木千里(くらき・ちさと)…達郎の亡き妻。16年前に骨髄性白血病で亡くなった。
- 長井節子(ながい・せつこ)<40前後>…白石法律事務所のアシスタント。15年勤めている。
- 山上(やまがみ)…和真の会社の上司。
- 雨宮雅也(あめみや・まさや)…和真と同期入社で、親しい間柄。和真の様子を心配する。ともに小料理屋『あすなろ』へも行く。
1984年の『東岡崎駅前金融業者殺害事件』の被害者と遺族
- 灰谷昭造(はいたに・しょうぞう)<当時51才>…1984年の殺人事件の被害者。愛知の東岡崎駅近くで「グリーン商店」という金融業を営んでいた。独身。
- 坂野雅彦(さかの・まさひこ)…昭造の甥(妹の子ども)。灰谷の事務所の電話番。灰谷の遺体を発見して警察に通報した。酒が飲めない。甘党。
1984年の事件関係者
- 福間淳二(ふくま・じゅんじ)<当時44才>…1984年、灰谷を殺した容疑で逮捕された男。留置場で首つり自殺。愛知県豊川市で電器店を経営していた。
- 浅羽洋子(あさば・ようこ)<70近い>…倉木達郎が上京のたびに通っていた小料理店『あすなろ』の経営者。愛知県瀬戸市出身。福間淳二と結婚後、豊川市に30代半ばまで住んでいた。夫が亡くなったあと上京。警察に夫を殺された恨みがある。
- 浅羽織恵(あさば・おりえ)<40前後>…浅羽洋子の娘。『あすなろ』で母と働いている。美人な女性。かつて結婚していて、約5年で離婚。元夫との間に息子も授かった。息子は現在、中学2年生。夫に引き取られたが時々顔を見せにきてくれる。
- 安西弘毅(あんざい・ひろき)…浅羽織恵の元夫。財務省秘書課課長補佐。織恵の父は亡くなったと親に嘘をついて結婚した。父は市議会議員で、兄が病気になったため後継者候補として親戚などから身辺調査され、離婚へ。再婚して新たに子供2人をもうけている。
- 安西知希(あんざい・ともき)<14>…浅羽織恵と安西弘毅の息子。中学2年生。織恵の父の逮捕歴が原因で両親が離婚し、父親に引き取られた。
弁護士・検事
- 堀部孝弘(ほりべ・たかひろ)…被告人・倉木達郎の弁護人。国選。
- 望月(もちづき) …白石健介の後輩で、弁護士。白石綾子と織恵に被害者参加制度を使うことを提案する。
- 佐久間梓(さくま・あずさ)…元検察官で、今は被害者参加制度に携わっている弁護士。白石家をサポートすることになる。黒縁メガネをかけた小柄な女性。バックパックをいつも持参している。
- 今橋(いまはし)<40代半ば>…「白石弁護士殺害事件」の公判担当の検察官。広い額と高い鼻が特徴的。
- 天野良三(あまの・りょうぞう)…弁護士。名古屋で「天野法律事務所」を経営。倉木達郎の自宅に天野の名刺があった。
その他
- 山田裕太(やまだ・ゆうた)…足立区の町工場の若手従業員。暴行と窃盗の罪で訴えられたが、白石健介の弁護で執行猶予付き判決となった。
- 南原(なんばら)…フリーの記者。倉木和真に誘導尋問をかける。
- 藤岡(ふじおか)<50前後>…永代通りに面した自転車店の経営者。 小料理店『あすなろ』の常連客。織恵が達郎に好意があると思っている。
- 吉山(よしやま)…倉木達郎の家の隣の住人。達郎と同じ工場で働いていた仲。
- 水口(みずぐち)…歯科医師。白石健介が通っていた歯科医院の歯医者。
- 石井良子(いしい・りょうこ)<62>…2017年に起きた別の殺人事件の被害者。
- 沼田(ぬまた)<28>…石井良子の娘と交際している男。自称ミュージシャン。良子殺害の容疑者。
- 富永(とみなが)…豊田中央大学病院 化学療法科の医師。
- 浜口徹(はまぐち・とおる)…白石健介の学生時代の友人。日本橋に有名な保険会社の取締役常務執行役員。
- 新美ヒデ(にいみ・ヒデ)…愛知県知多郡鬼崎町(現:常滑市)が本籍の老婦人。親が資産家。
- 富岡(とみおか)…元漁師のおじいさん。富岡の母が新美ヒデと付き合いがあった。
【白鳥とコウモリ】原作小説
書籍:『白鳥とコウモリ』(著:東野圭吾)
出版社:幻冬舎
発売日:2021年4月7日(本体2000円+税)
著者:東野圭吾(ひがしのけいご)…1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学工学部卒業。エンジニアとして勤務しながら、1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。1999年『秘密』で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。2019年に第1回野間出版文化賞を受賞している。映像化作品に福山雅治主演の「ガリレオ」シリーズ、阿部寛主演の「新参者」シリーズ(=加賀恭一郎シリーズ)など。