映画【劇場】原作小説のネタバレと感想!又吉直樹が描く究極恋愛を結末まで

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劇場・又吉直樹

映画【劇場】原作小説のネタバレと感想!
山﨑賢人主演で実写化された【劇場】の原作は又吉直樹の恋愛小説【劇場】。
夢抱き上京してきた永田と沙希が東京のど真ん中で出会う。
夢を捨てられない男とひたすらに尽くす女。二人の恋の行方は?
映画の結末とは違う!?
映画【劇場】の原作小説の登場人物、ネタバレ、感想を紹介します。

目次

原作小説【劇場】の作者は又吉直樹

映画【劇場】の原作は、小説【火花】で芥川龍之介賞を受賞した又吉直樹さんの【劇場】。

【火花】より先に執筆をしていた【劇場】は、「恋愛がわからないからこそ、書きたかった」という又吉直樹さん初めての長編恋愛小説です。

2017年5月、新潮社から単行本が発売。初版部数は30万部。
2019年9月、文庫本発売。

劇場・又吉直樹
劇場・又吉直樹

作者・又吉直樹(またよしなおき)

1980年6月2日生まれ。
お笑いコンビ「ピース」のボケ担当。相方は綾部祐二。
お笑い、ドラマ、など多方面で活躍。
作家活動は、所属する吉本興業の広報誌『マンスリーよしもと』で若手芸人がコラムを手掛けたことがスタート。
2015年「火花」で芥川賞を受賞。お笑いタレントとしては初の芥川賞受賞者。
「火花」は菅田将暉主演で映画にも。
2017年「劇場」、2019年「人間」などの著書がある。
「別冊カドカワ」に掲載した書き下ろしエッセー「僕の好きな女の子」は、奈緒主演で映画化。(2020年8月公開予定)。
太宰治の大ファン。

原作小説【劇場】の登場人物

原作小説【劇場】(著・又吉直樹)の登場人物を紹介します。()内は、映画のキャストです。

永田・ながた (山﨑賢人)
学時代に演劇に興味を持ち、クラスメイトの野原と高校卒業後、上京。二人で劇団「おろか」を立ち上げ、脚本を書いている。

沙希・さき (松岡茉優)
中学時代から演劇部に所属し、高校卒業後に女優を目指して青森から上京。服飾系の学校に通っている。

野原・のはら (寛一郎)
永田の中学時代からの友人で一緒に上京。音楽、映画、文学、格闘技に詳しい。
劇団だけでは食べていけないため、バイトをしている。

青山 (伊藤沙莉)
劇団「おろか」のただ一人の女性団員。野原がバイトしている居酒屋に客として通い、それが縁で入団。「おろか」劇団員の戸田と付き合っている。

戸田 
劇団「おろか」の団員。金髪で長身。打ち上げや酒の席では常にの中心となる。


劇団「おろか」の団員。坊主刈りで細身。声が高いのが難点。高音が芝居の邪魔する。

小峰 (井口理 (King Gnu))
劇団「まだ死んでないよ」の脚本、演出を手がけ、人気がある。永田と同い年。

田所 (浅香航大)
劇団「まだ死んでないよ」の団員。沙希が勤める居酒屋のバイト仲間。沙希は、田所を通して「まだ死んでないよ」の舞台を観に行く。

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原作小説【劇場】の内容

演劇に魅せられて上京した永田と野原は、売れない劇団「おろか」を立ち上げなんとか維持。永田は脚本を書くもいまひとつ。
そんな中、街で沙希と出会う。沙希は女優を目指し青森から上京し、服飾系の学校に通う学生。
そんな沙希と永田は付き合うようになり、永田は沙希のアパートに転がり込み……。
なにげない日々の生活の中に、二人の愛、永田の葛藤、焦り、苛立ちを繊細に描いているラブストーリーです。

原作小説【劇場】のネタバレ

原作小説【劇場】(著:又吉直樹)のネタバレを紹介します。

永田と沙希の出会い

8月。原宿駅を抜け、明治神宮の歩道橋の先。
画廊を覗く永田は、同じように画廊を覗いていた女を追いかけ、声をかけた。
「靴、同じやな」
それが 沙希との出会い。
沙希は、睫毛が長く、唇はツンとし、赤色のような金色のような髪色。
お金のない永田はカフェオレをおごってもらい、自分が劇団を立ち上げ脚本を書いていると話す。
沙希は女優を目指し青森から上京。服飾系の学校に通っている。
その日は互いの生い立ちなど軽く話し、そこで別れた。
夏の間、青森に帰省した沙希とは会うことはなく、次に会うのは、秋の初めの頃。

劇団「おろか」

永田は同じ志を持つ同級生の野原と上京し、劇団「おろか」を立ち上げた。
永田は脚本を手掛けている。

「おろか」は結成して3年。下北沢が稽古場。
ある日、「おろか」のメンバーと話し合いが行われる。
「おろか」の劇団員、長身で金髪の男・戸田、坊主刈りで細身の男・辻、戸田と付き合う女・青山は永田のやり方に反感をもち、劇団を辞めてしまう。
「おろか」は永田と同級生の野原の二人になってしまう。
下北沢の話し合いのあと、永田は辻に襲われた。誰にも言えない汚点。

沙希と再会

9月。

沙希とは何度かメールのやりとりはあった。
永田は7月から書けずにいた脚本のタイトルを「その日」と決める。
なかなか筆が進まなかった「その日」だが、構想を練り、次の劇には女が一人、男が二人と決めた永田は、その勢いで沙希にメールをする。

「明日、渋谷に家具を見に行くから付き合ってくれませんか」
無理だろうと思っていた永田だが、沙希はそれに付き合ってくれた。
沙希は永田の歩調に合わせて歩く。それが永田には心地良いものだった。

**

それから、徐々に仲良くなり、永田は沙希の住むアパートに行くように。
シャワーしかない永田は、沙希の部屋にあるユニットバスで湯舟につかれることはありがたかった。

永田の脚本ができあがる。
東京で暮らす男と女の物語。
しかし、女役がいない。そこで、女優を目指して上京したという沙希に出演交渉をすることに。

原稿を沙希に見せると、沙希は感動して泣いている。
そこで永田は、沙希に女役をやってほしいと頼む。沙希は「やってみる」と。
こうして、3人で「その日」を演じることになった。
公演は、それなりに評判も良くまずまずだった。

永田と沙希の同棲生活

永田は沙希のアパートに転がり込む。
それによって、永田はお金のいらない生活を送ることになる。
家賃、光熱費、食費の全部を沙希が払っていた。

エピソード(お財布&音楽)

知り合って最初の沙希の誕生日にお財布をプレゼントしたら、沙希は大声をあげて泣いた。感動をそのまま表現する沙希に魅力を感じる永田。

沙希と暮らすことで永田にも変化がおきる。
沙希が好むヒップホップの雑誌やCDを買い込み、趣味を共有する楽しみを味わうように。一方、沙希も永田の好むアルバムを聴くようにもなる。

沙希の「ごめんね」

生活をともにする中、ささいなことで言い争うこともあった。
学生の沙希。家賃は親の仕送り。
実家から食料が定期的に送られてくる沙希は、この日も小包を嬉しそうに開けながら
「小包送っても知らない男に食べられると思ったら嫌だ」
と母親が言っていたという。
永田はカチンときて「沙希ちゃんのおばはん嫌いやわ」と。

沙希は「ごめんね」と謝り取り繕うのだが、永田は惨めな思いでいっぱいになる。家賃も払わず、沙希の親をけなし、親からもらった食料を食べる。
そんな自分が化けもののように感じる。

**

沙希といると、学校の友達と遭遇することがある。永田はそれが苦手だ。
なぜか、沙希の友達をけなしてしまうことも。
沙希は言う。
「永くん、わたしと二人の時と他の人がいるときは別人みたいだよね」と。
永田は、沙希の周りの人間といると自分が異物に感じ、話すことができなかった。常にどこかで自分は「嫌われている」と思うところが永田にはあった。

それでも沙希は永田に徹底してあまかった。ゆえに、永田は、奔放になり気ままに振る舞う。

永田のヒモメン生活

劇団「おろか」は相変わらずパッとしない。
公演をすればするほどお金はなくなる。
野原が夜のバイトをし、それが主な資金源となっていた。
服飾系の学校に通う沙希が舞台衣装を作っていた。

永田は登録制のバイトを時折するのだが、肉体労働を拒否してからはほぼないに等しい。
脚本を書くことで時間も費やし、金はどんどんとなくなる。
永田は、自信がなくなり、慢性的な苛立ちや不安に襲われる。

「金はない」といいながらも、がまんをすることをしない永田。
喫茶店に行き、時間をかけて本を読む。家に帰れば「おかえり」と沙希が出迎える。いわゆる“ヒモメン”。

エピソード(小説)

その日は、沙希が本を読んでいた。永田が好きだという作家の小説で、永田が買ったものと同じだった。
「もったいない」と言う永田に沙希は「同じこと考えてたんだね。やった!」と喜ぶ。沙希の無邪気さに救われるつつも、どうしてか、沙希を責めてしまう。永田は、そんな自分を“せこくて醜い生きもののようだ”と思う。

エピソード(バイク)

沙希が学校の男子からバイクを貰ってきた。
永田はなぜか無償に腹が立つ。沙希の純粋で無垢なところ。その優しさに触れると、劣等感が生じる。それが苛立ちになる。

翌日、永田はそのバイクを蹴飛ば壊してしまう。沙希はそれ以降、学校を休みがちになったが、永田の声かけで再び、通うようになり、無事に服飾学校を卒業した。

これを機に、沙希は演劇を続けることはなかった。

沙希は卒業し昼も夜も働くように

「おろか」が野田と永田の二人体制になる。沙希は、昼は洋服屋、夜は居酒屋で働きだした。学生でなくなった沙希に仕送りはなくなり、家賃も払わなければいけない。親に帰ってくるように言われたが、沙希は帰らなかった。

沙希から光熱費だけでも払ってほしいと言われたが、永田は
「人の家の光熱費を払う理由がわからない」と言いわけをして払わない。

沙希が働くようになっても永田の生活は変わらなかった。
夕方に起きて散歩をし、演劇のことだけを考え、部屋に戻る。
沙希が「おかえり」と出迎る。
疲れたふりしたポーズをとり、お金の話にならないようにする。夜はプレステでゲームをし、沙希が寝ても続ける。朝がきて、沙希が仕事に行く。それでもゲームをしている。
そんな生活……。

「まだ死んでないよ」との出会い

ある日、野原と「まだ死んでないよ」という劇団の公演を観る。感激をして涙を流す永田。「まだ死んでないよ」の作・演出を手掛ける男・小峰は、永田と同い年だと聞き衝撃を受ける。

その頃、青山からメールがある。青山は執筆業を始めていて、永田にも執筆の仕事を依頼してきた。
久しぶりに青山と会う永田。戸田とは別れたようだ。永田は青山の仕事を承諾する。

仕事を受けた日。永田はたこ焼きを買って帰る。沙希は喜び、二人はバカみたいにじゃれ合う。
永田は、沙希が笑っているこの時間が永遠に続いて欲しいと願った。

永田の嫉妬

青山からの仕事をもくもくとこなし、収入はあったものの、永田はそのほとんどを自分の本やCD、洋服代に費やしてしまう。結局、家賃も払わず、引っ越しを考えつつもお金は貯まらない。

青山とは時々会うようになり、そのたびに、永田の生活を咎められたり、劇団「まだ死んでないよ」の小峰の話になる。
そして、永田は、以前住んでいた高円寺のアパートに布団だけを持ち込み、沙希との暮らしを解消した。
それでも、沙希とは続いてる。ある日、飲んだ帰りに沙希の部屋に行った永田。
沙希と手を繋ぎ「守られていたのは僕のほうだった」と気づくのだった。

沙希の部屋で小峰のインタビュー記事を読む永田。永田は同い年で成功をしている小峰に嫉妬する。沙希が帰宅し、小峰の掲載されている雑誌を見ると、沙希は小峰の劇団員とバイト先で一緒だと言う。
沙希が以前から話していたバイト先で演劇をしているというのは小峰の劇団員・田所のことだった。

青山と会った永田。
青山は沙希と顔見知りで、沙希に彼氏はいることを知っていたが、それが永田だと知らなかった、と驚く。
永田は沙希が自分のことを馬鹿にしたのではないかと疑り沙希をなじる。
心の片隅では、そんなことはないとわかってはいるのに、止められない。

沙希は青森へ

この日から、永田は沙希のところにほとんど行かなくなった。
それでも、お酒を飲むと気が大きくなり沙希の部屋に行く。それを繰り返していたら、沙希から
「わたしお人形さんじゃないよ」
と冷たく言われた。

そんな中、沙希が青山と「まだ死んでないよ」の観劇をしたと知った永田は、猛烈な嫉妬にかられる。永田は、沙希を責める。沙希は大泣きをする。
この時、沙希は27歳になっていた。

沙希の自転車に二人乗り

沙希からのメールに返信をせず時間が過ぎた。
永田は、思い切って沙希のところに行くがいない。バイト先に行くと「店長のところにいる」と言われる。永田が店長の家にいくと、沙希の自転車がある。ベルを鳴らしていると沙希が出てきた。沙希の手をとり「帰ろう」という永田。自転車に乗るふたり。永田は饒舌になり、沙希は店長とのことは、何も言わなかった。

その後、沙希は仕事を辞めた。沙希は体調を崩し、笑わなくなった。
永田は沙希の気持ちに寄り添うようになるが、沙希の酒量は増していく。
沙希は
「永くん、ひとりで大丈夫?」と永田のことを心配しながら、一旦、青森に帰る。

永田は沙希が東京に戻ることを願ったが、沙希は青森で仕事を見つけた。
そして、東京に荷物を取りにくることに。

沙希が笑うまで

沙希が荷物を取りに来た日。
二人は久しぶりに渋谷と原宿を歩き回り、部屋に戻る。
これまでのことを話し、最後に永田が語る。

「沙希ちゃんはもっともっと元気になる。俺は演劇を続けて……
認められるかもしれん。お金を稼げるかもしれん。
そしたら……、ルーフバルコニーがある大きな家に住もう。楽しい日々を過ごして還暦を迎えたら…」と。

沙希は「ごめんね」と繰り返す。
永田は、二人で笑いあったときのお面をつけ「ばあああ」と言い続ける。
沙希が笑うまで「ばあああ」と……。

沙希は、ようやく泣きながら笑った。

原作小説【劇場】の感想

【火花】を上回る又吉直樹作品

【火花】で芥川賞を受賞した又吉直樹の作品。【火花】も良かったですが、それ以上。

胸がキンキンと痛くなるラブストーリー。永田の心のヒダが、日々の中に丁寧に描かれていて、それがジンジンと伝わってきます。
誰からも「あんなやつとは別れたほうがいい」と言われるような男が永田。
そんな男だけど、沙希は永田から離れられない。打算で生きられない二人の愛の結末は、とても辛いものですが、沙希にはこれで良かったのだろう、と納得もできる。
ラストに永田が沙希に脚本が売れた時の夢を語る場面が、最高級。
永田の沙希への思いが伝わる一番の場面だと思います。

「沙希がいい子すぎ。こんな子いる?」という感想も見かけましたが、沙希のような愛し方もアリだと感じてます。
数多くある恋愛小説の中、私が出会った中ではランキングTOPに入る恋愛小説です。

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