映画【ドリームシナリオ】あらすじ・ネタバレ!夢事件のゆくえを徹底考察

2024年11月22日(金)から公開された映画【ドリーム・シナリオ】。

前作【シック・オブ・マイセルフ】で承認欲求のおそろしさを描いたクリストファー・ボルグリ監督が、【ボーはおそれている】のアリ・アスターをプロデューサーにつけた本作。

本記事では、【ドリームシナリオ】のあらすじ・ネタバレや考察などについて書いていきます。

目次

映画【ドリームシナリオ】あらすじ

大学で心理学を教えるポール・マシューズ(演/ニコラス・ケイジ)は、妻と娘たちとともにつつましく暮らしていました。

ある日、前触れもなく、世界中の人たちの夢にポールが現れ始めます。

たちまち有名人となったポールには、広告の仕事やトーク番組への出演オファーが舞いこんできて…。

映画【ドリームシナリオ】ネタバレ

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映画本編の結末にふれています!未鑑賞の方はご注意ください!

“良いひと”ポール

ポールは妻のジャネット(演/ジュリアンヌ・ニコルソン)、娘のソフィー(演/リリー・バード)、ハンナ(演/ジェシカ・クレメント)との4人暮らし。

コミュニケーションにくせのあるポールは、家族の間では“ちょっとヘン”なお父さんとして愛されています。

つちやです

笑い方や挙動もちょっとだけヘン

大学で教授として働くポール。

生徒たちの間にもまた、“ちょっとヘン”なポール先生をイジるような雰囲気があります。

しかし、総じて無害っぽい感じなポールは、“良いひと”として周囲に受け入れられながら、なにということもない日々を送っていました。

夢の中へ

ある日、友人から電話がきたポール。

友人いわく「ポールの夢をみた」という知人が複数いるとのこと。

しかも、その中にはポールと会ったことのない人もふくまれるというのです。

奇妙な偶然の一致は、友人たちの間にとどまったものではありませんでした。

その日を境に、ポールはなぜか世界中の人の夢に登場するようになったのです。

そしてなぜか、妻・ジャネットの夢にだけは登場しないポール。

人々の夢に登場するポールには、共通して「なにもしない」という特徴がありました

妻は、「トーキング・ヘッズの衣装を着て夢に登場して、私を窮地から救ってほしいのに」とむくれます。

つちやです

なかよし夫婦のいちゃいちゃにほっこり

“ちょっとヘン”なポールのおだやかな生活は、この夢事件で一変。

SNSのDMはパンクし、広告会社からはスプライトのCM案件や、トーク番組への出演依頼、果てはオバマ前大統領との面会の話まで舞いこみます。

そんな中、ポールはひそかに「この機会に学術本を出版してカッコつけたい」と考えていました。

あばれるポール

大学の生徒たちにも大人気のポールでしたが、ある日とつぜん、夢のなかのポールがあばれだします。

ポールとの淫夢をみた女性をきっかけに、夢のなかのポールは行動を起こし始めたのです。

世界中の人の頭の中で、ポールは殺人・強姦をふくむ恐ろしい態度をとり、人々に強烈な印象を与えます。

前代未聞の夢事件の中で、現実と夢の境を見失った人々は、実際のポールを執拗に非難し始めました。

生徒たちは授業に出ないばかりか、ポールの車に悪意むきだしのペイントをし、それをみて激怒するポールを録画して拡散。

この動画が決定打となり、広告の話は頓挫します。

人々は、実際のポールをひどく恐れ、忌み嫌い、モンスターのようにあつかい、ポールは次第に疲弊していきました。

つちやです

SNSでよくみるやつ…

家族との仲も険悪になり、友人もいなくなったポールは、知人の地下室にまるで幽閉され、ひとり眠れぬ夜を過ごすのです。

ドリームシナリオ

どうしても娘・ソフィーの学芸会に参加したかったポールは、すべての人の反対を押しきり学校へ。

そこで、意図せず教員にケガを負わせてしまうポール。

この一件で決定的に家族と離ればなれになったポールは、不思議と人々の夢からも姿を消し、世の中はポールを忘れていきました。

つちやです

弄ばれて、忘れられた…

一方ポールの夢事件は、広告業界にイノベーションを起こす結果に

意図的に夢の中に商品を登場させ、広告を脳内に直接展開するデバイス“ノリオ”が発明されます。

ノリオには“悪夢を見ない”という魅力的なうたい文句がありました。

夢を操作する技術が発明されたことで、ポールの夢事件も「ポールが意図的に人々の夢を操作していたはず」と結論づけられ、ポールは人々にイタがられます。

忘れられるよりも最悪の結果に陥ったポールは、ノリオを装着し入眠。

トーキング・ヘッズの衣装を身にまとい、火の中にとらえられた元妻・ジャネットを救い出したポールは「現実ならよかった」とつぶやくのでした。

映画【ドリームシナリオ】考察

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「何もしない」をする

冒頭、ポールがおこなっていた授業でシマウマについて語られていました。

シマウマの生態にふれながら、目立つと標的になるということを自然界の法則として説くポール。

そして、それでも「目立ちたい」という願望をもつ場合の根底は、やはり生物としては繁殖が目的であるとも語っています。

ポールは決して目立ちたいわけではありませんでした。

家族・家・仕事と、まんべんなく手に入れてきた「正解っぽい」人生を憂うポールのミッドライフ・クライシスに、われわれは巻きこまれてしまったのです。

夢に現れたポールのように、ポール自身もまた何もしなければよかった、言い換えれば「何もしない」ことをするべきだったのかもしれません。

行動の先に、必ずしも良い結果があるとはかぎらない

中年をむかえるときまで覚えておきたい教訓となりました。

そこにあった幸福

物語の前半を覆う明るい雰囲気は、まぎれもなくポール自身がまとっているほがらかな空気から感じるものでした。

ポールは、自己評価よりもずっと魅力的で、恵まれた人物だったのです。

自分の魅力を推しはかるとき、まわりにいてくれる人をぐるっと見渡してみることが大切でしょう。

つちやです

友人は自分の鏡ともいいます

ポールの周囲には、ポールのすべてを受け止めてくれる家族や、冷静にポールを評価してくれる上司がちゃんといました。

彼や彼女たちを笑顔にする以上に大切なことなどないはずなのに、視野狭窄に陥ったポールは間違った方向へと突き進みます。

ポールが有名になったことで苦しんでいた、家族に寄り添えなかったことが、ポール最大の間違いでしょう。

“浮かれた”代償

急に世界中からもてはやされたポールは、わかりやすく浮かれます。

鑑賞後にキービジュアルをみると、浮かれた結果、地上に居場所をなくしたポールの悲哀がにじんだりも。

根拠のないこと、なぜかわからない事象に対し無防備すぎたポールは、悪人ではないにせよマヌケだったかもしれません。

つちやです

なにごとも謙虚に、着実に。勉強になります

とはいえポールを襲ったサイド・エフェクトは、やたらと得てしまった知名度と悪質に作用しあって、最悪な結果をもたらしました。

わがふりをなおすために

ポールが超有名人となったとき出会った、広告会社の男・トレント(演/マイケル・セラ)。

彼は、なにげに芯の通った人間でした。

「バズッた人に群がる人々」の構図では、得てして後者が軽薄な人物として描かれます。

それはお金儲けのにおいがするからでしょうが、トレントもやはり、パッと見た感じはいけ好かないイメージでした。

つちやです

私もだまされました

しかし、世界中に嫌われたポールとの約束を果たし、ポールの「本を出版したい」という望みをかなえたのはトレント。

言ったことはやる、デキそうな男です。

いま思えば、広告や番組の話がきたあのときに、ポールが「私は大学教授さまなのだぞ」という虚栄心をおさえていられれば、未来は変わっていたのかも。

ポールもまた、勝手なイメージで他人をジャッジしていたのです。

壮大すぎるブーメランではありますが、ポールの結末を見た私たちは、わがふりをなおすいい機会です。

クリストファー・ボルグリ監督のやさしさ

ボルグリ作品の魅力は、主人公の直線的な感情移行です。

起承転結のセオリーに惑わされず、主人公が真っ逆さまに落ちていく絶望の直線こそボルグリ節。

それは、ボルグリ監督のやさしさだと思います。

私たちの人生は、白黒であらわすことのできないグレーなものごとでいっぱい。

ズルいし、ダサいし、キモいしイタいのが私たち本来の姿です。

そんな、ポール・マシューズな私たちを、おもしろい映画にしてくれて、ありがたい!

前作【シック・オブ・マイセルフ】の終盤で主人公・シグネは「生きたい」とつぶやきました。

ボルグリ監督の叫びは、主人公の最後の台詞に凝縮されています

本作でポールが「現実ならよかった」となつかしんだ本物の幸福が、いまあなたの手の中にあるのなら素晴らしい。

しくじり先生・ポールの失敗を胸に刻んで、粛々と生きていきましょう。

【ドリームシナリオ】あらすじネタバレ・考察まとめ

単純におもしろいだけじゃない、シニカルな視点も魅力の映画【ドリーム・シナリオ】。

笑って泣けて、怖くてキモくて、大満足の映画体験となりました。

そしてやっぱり、ボルグリ作品はグッズがかわいい!

ぜひ劇場に足をお運びください。

<出典>映画『ドリーム・シナリオ』公式XWikipedia

ドリームシナリオアイキャッチ

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