映画「敵」登場人物・キャストは?筒井康隆先生による原作小説のあらすじや解説も!
映画【敵】が、2025年1月17日(金)に公開されます。
タイトルの読み方は【てき】。
筒井康隆先生が、混沌の西暦2000年を目前に書きあげた、老人の内面のめまぐるしさ。
当時の騒がしいネット界隈の雰囲気までもが、畳と魚の香りただよう老人の家に浸食してくる、時代を越えた脳内スペクタクルです。
なんだか事件めいた予告編と、主演をつとめた長塚京三さんのユーモラスなコメント、吉田大八監督の訥々としたかんじに期待大!
本記事では、映画【敵】の原作情報や、キャスト情報、作り手情報、劇場情報を紹介します。
きたる公開日、いわば「敵」に備えていただけますよう!
映画「敵」原作情報
まずは、映画【敵】の原作小説について掘り下げます。
映画「敵」の原作は筒井康隆
原作 | 筒井康隆 |
監督・脚本 | 吉田大八 |
・原作は、「時をかける少女」を代表するSF作品を多く手掛ける小説家・劇作家・俳優の筒井康隆さんです。
・監督/脚本は、【桐島、部活やめるってよ】で「桐島とはなんなのか」を描いた、「敵」を映画化するに適役な吉田大八さんです。
原作小説「敵」のあらすじは?
渡辺儀助・老人。
「老いさらばえ、他人に迷惑をかけて生き続けることだけはしたくない」と考える男です。
儀助は愛妻・信子を失い、友もなく、職もなく、あるのはまあまあの貯金と日々のルーティン。
などと聞けばさぞ切な寂しい独居老人のわびしさかとお思いでしょうが、儀助のルーティンは生きる力なのです。
規則正しい生活こそが儀助の幸福
事細かに記される儀助の一分一秒は、手に取るペンの残りインクの具合や、焼いた肉の油がしたたるまでを繊細に表現され、この世の神髄にふれるよう。
儀助は性欲がつよく、妻亡きいま興奮の的となるのは、2人の美しい女性。
しかし、自らの“老人臭”をはじめとした、老いの副産物を忌み嫌う儀助は、女性たちに性欲をひけらかすことはありません。
老齢となっても自慰にふけるならば、その度に美化され尽くした妻・信子や2人の女性たちを組み伏す妄想だけは許してくれよと儀助。
この儀助、「貯金が尽きると同時に自裁する」と決めています。
金と同時に調味料なんかも使いきって、ちょうど空っぽになって死ぬことを、死に方まで決め想像しながら淡々と生きる儀助の毎日は、儀助自身によって充実せんばかり。
儀助の“残り時間”は、本人に管理されおだやかに経過していたのです。
そう、「敵」があらわれるまでは…。
原作小説「敵」の特徴
日常生活に侵入してくる、まさしく“敵”的SF跳躍が特徴。
日々をエンジョイする儀助の自分語りがつづく319ページ。
元大学教授である儀助は、講演依頼を20万円以下で受けることはなく、不況によって依頼もガクンと減った現在、むりに働く気もありません。
旬の魚や肉を調理し、嫌いな野菜などは食わず、酒と煙草をたしなみ、ダルい交友関係を断ち、美人を妄想しつつ性欲を放出させ、映画や小説・音楽を好み、人並みにネット社会をのぞき、鳥のさえずりなどを楽しみながら暮らす儀助。
本当にしあわせそうなんです!
自身によって定点観察され続ける儀助は“ひとり情熱大陸”がごとく、淡々としたエンターテインメントとして人生を進めていきます。
小説「敵」は、ユーモアをわすれず気位の高いままで、自分をとことん愛する男をじっくりと描いた人間賛歌の物語。
渡辺儀助の内面はしだいに宇宙となり、現実と妄想を自由に行き来する素晴らしき日々!
読む人の精神状況によって、ハッピーともバッドともとれるラストと「敵」の正体には、死生観を揺るがす迫力があります。
映画「敵」の登場人物・キャストは長塚京三と…?
原作小説および、映画【敵】のメインキャストは以下の4名です。
渡辺儀助(演/長塚京三)
及川善弘監督【ひまわり〜沖縄は忘れない あの日の空を〜】(2013)以来、12年ぶりの主演映画となった長塚京三さん。
筆者世代は「ナースのお仕事」のイメージが強いかも
ご自身も79歳と、儀助の人生観を隣同士で感じてくださいそうなご年齢。
見る人・読む人によって大きく印象が変わりそうな儀助という人物を、公式のコメントを読むかぎり、あるていど冷ややかにとらえてらっしゃるのが印象的です。
長塚さんのみが感じた渡辺儀助という宇宙を見るのが、いまから楽しみでなりません。
冗談はさて置き、老耄に押しまくられて記憶が混濁し、授けを求めようにも、人も、物たちさえも、いつの間にか掌を反したように敵側に回っていて、恐らくは粗略でもあり、傲慢でもあったろう主人公の嘗てのあしらいに、幾星霜かを経て、なお復讐するかのようだ。
鷹司靖子(演/瀧内公美)
瀧内公美さんは、廣木隆一監督【彼女の人生は間違いじゃない】の主人公を演じたのち、荒井晴彦監督【火口のふたり】・春本雄二郎監督【由宇子の天秤】等の主演で注目を集めました。
近年では地上波ドラマへの出演もめだつ瀧内さんですが、そもそも色香が魅力的でスクリーンに映える印象。
儀助をまどわす鷹司靖子というキャラクターを、どう噛み砕いてくださるのか期待大!
長塚京三さんとの共演は言葉では言い尽くせないほど京三さんに魅了され、クランクアップの前日、明日でしばらくはお会いできないのかと思うとお風呂の中で涙が出たほどです。
渡辺信子(演/黒沢あすか)
儀助の亡き愛妻・渡辺信子を演じるのは、セクシー極まれり大人の女性といった印象の強い黒沢あすかさん。
原作ファンの筆者、黒沢さんの信子が楽しみで楽しみで
映画【冷たい熱帯魚】での怪演がすさまじかった黒沢さんは、その後【ヒミズ】【渇き。】などと強烈なキャラクターが続きました。
唯一無二のつややかな声と、冷徹なイメージの奥にある熱。
黒沢さんが全身で体現された信子が早く見たい!
その映画化にあたり監督が手掛けた台本は、世間擦れしていない儀助の品性とノスタルジックな雰囲気が絶妙に融合し、夢か幻か、あるいはSFかと思わせる独特の世界観を感じました。
菅井歩美(演/河合優実)
2024年に大ブレイクを果たし、映画・ドラマと大活躍だった河合優実さん。
河合さんが主演をつとめた入江悠監督【あんのこと】のヒットも記憶に新しいことと思います。
特徴的な生っぽい台詞回しから一転、技術力までもをみせつけたドラマ「不適切にもほどがある!」の大ヒットで、新たなステージへと進まれた印象もありました。
本作【敵】を象徴するのが、3人の女性の色気でしょう。
前述の瀧内さん、黒沢さんとならんで儀助を翻弄する菅井歩美を演じています。
短い時間ではありましたが、おそらくどの時代に読んでもどうにも魅惑的なこの物語のもと、未知なるものに顔を合わせ、考えてみる機会をもらいました。
4人の他にも…
メインの4人以外にも、中島歩さんやカトウシンスケさんといった、数々の映画をいろどる色男のお名前も!
儀助の淫靡な妄想世界にときめきたい…!
映画「敵」の製作陣・公開情報!
映画【敵】の監督・吉田大八さんをはじめ、名だたるスタッフ陣をご紹介。
映画「敵」の監督は吉田大八
【桐島、部活やめるってよ】(著:朝井リョウ)に代表されるように、【クヒオ大佐】(著:吉田和正)・【紙の月】(著:角田光代)・【騙し絵の牙】(著:塩田武士)などと、小説を原作として映画を撮ることが多い吉田大八監督。
また、上記4作に加え【美しい星】や【羊の木】にも共通して、吉田大八ワールドとも呼ぶべき「だれなんだ?」「なんなんだ?」というテーマが物語の軸となっています。
ヒューマンドラマ×ミステリーの様相!
また、いま吉田監督の作品群をならべて見てみると、多くの物語に“外部からの敵”要素があることにも気づきます。
最新作【敵】には、原点回帰とも呼べる濃縮された吉田大八ワールドを期待!
映画「敵」のスタッフ
脚本・監督:吉田大八 原作:筒井康隆『敵』(新潮文庫刊)
企画・プロデュース:小澤祐治 プロデューサー:江守徹 撮影:四宮秀俊 照明:秋山恵二郎
美術:富田麻友美 装飾:羽場しおり 録音:伊豆田廉明 編集:曽根俊一
サウンドデザイン:浅梨なおこ 衣裳:宮本茉莉 ヘアメイク:酒井夢月 フードスタイリスト:飯島奈美
助監督:松尾崇 キャスティング:田端利江
アクション:小原剛 ガンエフェクト:納富貴久男 ロケーションコーディネーター:鈴木和晶
音楽:千葉広樹 音楽プロデューサー:濱野睦美 VFXスーパーバイザー:白石哲也
制作プロデューサー:石塚正悟 アシスタントプロデューサー:坂田航
企画・製作:ギークピクチュアズ 制作プロダクション:ギークサイト
宣伝・配給:ハピネットファントム・スタジオ/ギークピクチュアズ
製作:「敵」製作委員会
ⓒ1998 筒井康隆/新潮社 ⓒ2023 TEKINOMIKATA
映画「敵」の公開日は?
映画「敵」の上映館は?
全国のシネコンを中心とした公開ながら、すてきなミニシアターでの上映もあります。
一部シアターでは『UDCast』方式のバリアフリー上映も。
映画【敵】原作あらすじ・登場人物まとめ
長塚京三さんをはじめとした、原作の雰囲気にマッチしたキャストに期待が高まります。
筒井康隆先生が描いた、儀助という老人を陰ととらえるのか陽なのか…。
映画にしかできない表現がいまから楽しみです。
あわせて、ぜひ傑作小説「敵」も読んでみてくださいね。
<文中引用>映画『敵』オフィシャルサイト/Wikipedia