【逃げ恥新春SP】が描いた社会問題まとめ!野木亜紀子脚本の真髄とは?
【逃げ恥新春SP】が描いた社会問題まとめ!野木亜紀子脚本の真髄とは?
2021年1月2日に放送された【逃げ恥】SPドラマには、みくりと平匡の新婚生活とともにさまざまな社会問題が描かれています。今回はその問題を一挙にまとめました。
- 【逃げ恥新春SP】で描かれた社会問題一覧
- みくりや平匡の問題提起と解決法
- 「ガンバレ人類!!」に込められたメッセージ
【逃げ恥新春SP】の社会問題/妊娠〜育児編
みくり(新垣結衣)と平匡(星野源)にとって、結婚・妊娠・出産・育児は初体験。わからないことばかりですが、手探りでやってみて、ケンカしたり泣いたりしながら問題をひとつひとつ乗り越えていきます。ここではその問題と解決法をまとめていきましょう。
出産の順番待ちと産休
ホームセンターの会社に勤務するみくり。サービス統括課の紅一点として働いています。ほかの課の女子社員たち(滝沢カレン、伊藤修子ら)とランチを食べていると「出産の順番待ち」の話題に。
一度に複数の女子社員が産休をとると仕事が回らなくなるため、かぶらないように順番待ちするという話でした。
妊娠が発覚したみくりが上司に報告すると、みくりの分の仕事は誰がやるの?と同僚の社員(ナオト・インティライミ)があからさまに嫌な顔をします。
- どうして産みたいときに産めないの?
- 産休は同僚にとって迷惑なの?
- できたらできたで欲しいね…と成り行き任せにしてたら妊娠!
- 最初は迷惑がっていた同僚も、これまでみくりに甘えすぎていたと反省、協力してくれることに。
全然進んでいない選択的夫婦別姓制度
正式な制度名は「選択的夫婦別氏制度」。法務省のHPには次のように定義されています。
夫婦が望む場合には,結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める制度です。
現在の民法では、結婚に際して男性または女性のいずれか一方が必ず姓を改めなければならず、慣習的に男性の苗字を女性が名乗ることが圧倒的に多い。
しかし女性の社会進出に伴い、仕事上などで名前を変えることが不利益になることがあるため、結婚してもそれぞれの姓を名乗ることを選択できるという制度です。
- “姓を選べる”のがポイントなので、同姓か別姓かを夫婦で決められる。
- 制度が全然進んでいない。
みくりと平匡は、夫婦別姓を希望していたため、この制度が決まったら入籍しようと考えていたのですが、一向に進まなかった。でも出産前に籍は入れないといけないので、「森山」と「津崎」のどちらを選ぶのか。2人はみくりの提案で次の結論を出しました。
結論=「津崎」姓を選択
理由=
- みくりには、ちがやという兄がいるが平匡はひとりっ子。
- 平匡は年俸制のシステムアーキテクト。フリーランスに近い立場だから、名前を変えると不利益を伴う。
年 | 選択的夫婦別姓制度の検討内容 |
---|---|
平成3年 (1991年) | 法制審議会民法部会(身分法小委員会)で 婚姻制度等の見直し審議 |
平成8年 (1996年) | 法制審議会が選択的夫婦別氏制度の導入を 提言した「民法の一部を改正する法律案要 綱」を答申 |
平成8年 (1996年) | 改正法案を準備するが国会には提出せず |
平成22年 | 改正法案を準備するが国会には提出せず |
平成27年 | 第4次男女共同参画基本計画の中で選択 的夫婦別氏制度の導入も検討を進めることに |
30年前から審議され始めているというのに、いまだに制定されていません。本当に全然進んでないですね。ちょっと遅すぎる?
育児を「手伝う」って何?
役所で婚姻届を出したみくりと平匡。結婚指輪をしていないとナンパされたら困るという話でイチャイチャしていましたが、その帰り道、平匡の不用意な一言で気まずくなってしまいます。
僕も手伝う
「手伝う」ってどういうこと? とみくりがプッツン!
- みくりも出産は初めて。わからないことだらけなのに、私だけが勉強して平匡さんに指示しないといけないの?
- 一緒に勉強して一緒に親になっていくのが夫婦じゃないの?
みくりは、また小賢しいことを言ってしまったと焦る。平匡は、父親になるというのにどこか他人事のように思っていた。みくりとの意識の違いに凹み、沼田会で沼田、日野、風見たちに相談します。
- 平匡は反省し、みくりと一緒に親になっていくことに。
平匡にも悪気はないけれど、ありがちな局面ですね。とくに妊婦さんは不安もいっぱいだから、ちょっとした無神経な言葉にも傷ついたりするようです。みくりと平匡が早めに衝突したことは、平匡の意識を変えることになり結果的にはよかったのですが、まだまだ問題は山積みです。
育児休暇、男性はとっちゃダメ?
みくりと平匡は会社に育児休暇を申請することにします。制度としてはあるので、会社はもちろん受け付けてくれますが、問題は現場。上司や同僚に、休んでいる間の仕事を分担してもらわないといけないので、嫌な顔をされたり、無理だと言われたりします。
出産する女性は仕方ないとされても、男性が育児休暇をとるのに風当たりが強いところはまだまだあるようです。
今回はセクハラ&モラハラのプロジェクトリーダー・灰原(青木崇高)が、仕事で重要な役割を担う平匡が育児休暇をとることに拒否反応を示します。
そもそも仕事を休めないって異常じゃない?
みくりのアドバイスで「さも当然」という顔で合計3か月の育児休暇をとるという平匡ですが、灰原は聞く耳を持ちません。そこで沼田(古田新太)の出番です。
モヤモヤしている原因は何か。長期休暇なのか男の育休なのか?
灰原は「男の長い育休」にモヤモヤしていることがわかりました。だいたい何につけても文句を言ったりハラスメントする人は、自分が何にモヤモヤしているのか自覚がなかったりします。まず原因を追及する沼田さん、グッジョブ。風見と日野も援護射撃。
- 社員が長期休む理由はいろいろある。突然の事故、病気、親の介護など、誰にでも長い休暇をとる可能性がある。働いているのは人間なんだから。
- 何が大事かというと誰が休んでも仕事が回る、帰ってこれる環境を整えておくリスク管理。それができるからプロジェクトリーダーなのだと灰原の自覚を促す。
沼田さんがすごいのは、相手を責めるのではなく、相手のモヤモヤしたところを解明して問題の本質をハッキリさせ、納得させたところです。日頃のビジネスにも使える方法ですね!
平匡さん、本当にいい仲間を持って幸せです。スリーアイっていい会社だった…。
【逃げ恥新春SP】の社会問題/劣化とおひとり様編
ピチピチと劣化
平匡の上司でプロジェクトリーダーの灰原(青木崇高)はハラスメントの塊のような人物でした。
無理な計画のプロジェクトを終わらせるために、平匡にムチャぶりしたい灰原は、「いちばん若くてかわいい職場の花」をアシスタントにつけると言ったり、社員の見た目を「劣化」という言葉でいじったりします。
- 若くてピチピチしていると仕事は捗るのか。
- 「劣化」の使い方がおかしい。人間の衰えなら「老化」では?
- 灰原は以前ジムに行けなくて「筋肉が落ちた」。それは(灰原の定義で言えば)劣化なのか?とバッサリ。
平匡とすれば、思ったことをまっすぐに言っただけですが、いつも灰原のセクハラやパワハラにうんざりしていた社員たちから絶大な信頼を受け、プロジェクトリーダーになってほしいと言われます。でも今は自分の仕事と家のことでいっぱいいっぱい。これ以上の負担は勘弁してって感じでしたね。
おひとり様と同性カップル問題
子宮体がんを患っていることがわかった百合(石田ゆり子)。検査結果を聞くのに家族の立会いが求められました。しかし、妹の桜(富田靖子)はぎっくり腰、みくりはつわりがひどい、栃男は何を話していいかわからない。デリカシーのないちがや(細田善彦)はよけいなことばかり言いそうだし、部下の梅原(成田凌)と交際中の沼田(古田新太)には知られたくない。おひとり様のデメリットを実感する百合。
沼田という恋人がいる梅原も、何かあっても同性のパートナーは家族と認められなくて死に目に会えないこともある、家族もいろいろなのに、と嘆く。
- 独身だといざというときに頼れる家族がいない。
- 恋人がいても同性パートナーが家族と認められない。
- 独り身にもやさしい社会になってほしい。
- いろいろな家族のあり方が認められる社会になってほしい。
【逃げ恥新春SP】の社会問題/VSコロナと緊急事態宣言編
新型コロナウイルス発生で、世界がパンデミック状態に。イベント中止、緊急事態宣言などで経済界も大打撃を受けてしまいます。本来なら東京オリンピックが開催されていたはずなので、借金して改装したという店やホテルも多かったのではないでしょうか。給付金をもらうにも手続きが複雑だったり、現在もまた緊急事態宣言が出されるのか、という状況で不安な日々が続いています。
コロナで経済ストップ!みんなの嘆き
- 会社の損害が何億になるかわからない。
- 化粧品の売上が止まって倒産したら…。
- 増築で借金したばかり。
- 給付金申請書の手続きが複雑すぎる。
- みんな健やかに、無事で…。
- コロナが収束してお客が来て借金が消えますように。
- 助かってくれ、世界、人類。
短いシーンでしたが、飲食店やメーカーなどみんなの嘆きを代弁してくれました。
悪意と不安のパンデミック
みくり(新垣結衣)を館山に疎開させてひとりぼっちの平匡(星野源)は、コロナについて検索すると、ネットの世界に不安や悪意のパンデミックが起きていることを知ります。経済状態が悪くなればもっとひどいことになるかもしれない。
- 不安や悲観、悪意のある言葉がネットに充満しつつある。
- 経済状態が悪くなればもっと酷くなるだろう。
- みくりが亜江の写真を送ってくれた。
- まだ大丈夫。美しい世界がある。
悪意のパンデミックを心配する平匡が悲観的になったそのとき、みくりが送った赤ちゃんの写真に見えた美しい世界が平匡に希望を与えました。
【逃げ恥新春SP】野木亜紀子が描く社会問題のまとめ
【逃げ恥】はもともとみくりと平匡の「契約結婚」を通して、「結婚とは?」「主婦の賃金」などの社会問題を描いてきました。「愛情の搾取」など斬新なフレーズも生まれましたね。
今回は約2時間25分のドラマに、これでもか!というほどいろいろな要素が詰まっていました。みくりと平匡が直面したのは、特別なことではなく、世の中の人がたくさん直面する問題。それを、みくりと平匡の妊娠・出産・育児を中心にした物語の中で描く物語の力がすごかった。コロナ前までの物語は原作マンガの流れはあるものの、さすが野木亜紀子さん!と唸るしかありません。胸キュンラブコメとしてはもちろんヒューマンドラマとしても見応えたっぷりでした。
コロナウィルスのことは描き方が難しかったかと思いますが、「志村けんさんの死」「WHOテドロス会長のパンデミック宣言」「緊急事態宣言」など実際の出来事を取り入れていたことでよりリアルに感じました。
ドラマの中には、問題提起と解決法が語られることも多くありましたが、もっとも大切に感じたのは、百合ちゃんに言われてみくりが気づいた、「辛いときは誰かに聞いてもらうと気持ちが楽になる」ということ。もちろん問題解決には頑張るけど、疲れたり辛いときもある。そんなときは誰かに寄り添ってもらうのがいい。
それは主題歌「恋」の歌詞にある次のフレーズにも繋がるのではないでしょうか。
胸の中にあるもの いつか見えなくなるもの
星野源「恋」より抜粋
それは側にいること いつも思い出して
いつも側にいられるときは、そのありがたみが見えなくなってしまうことがあるかもしれないけど、寄り添える相手を思い出すことって大事。気持ちを寄り添うことはもっと大事。
コロナになって家族と離れ離れになり、再会したみくりと平匡さんを見た後に「恋」を聞いたら、そうしみじみと…。
野木亜紀子さんの脚本の真髄は、「問題提起」「葛藤や戦い」「あるがままの結末」…、でも基本は「人間愛」。
副題の「ガンバレ人類!!」の通り、妊娠・出産・育児や職場のセクハラ・パワハラ、そしてコロナに悩み苦しむ人たちを励ます内容となっていました。パロディやエンターテインメント要素も盛りだくさんで、まさに野木亜紀子さんの真骨頂を心ゆくまで味わえました。本当にお腹いっぱい!
素晴らしい【逃げ恥】続編、ごちそうさまでした!


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