【もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう もしがく】ネタバレあらすじ全話!

もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう
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フジテレビ水10ドラマ【もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう(もしがく)】が、2025年10月1日(水曜)にスタートします!
三谷幸喜が25年ぶりに手掛けた民放GP帯連続ドラマの脚本、超豪華な俳優陣、1984年頃の渋谷の街を再現した巨大オープンセットなど、話題沸騰のドラマです。

三谷作品で菅田将暉さんはじめ素晴らしい俳優陣がクセの強い人物を演じる、もうそれだけでワクワクする!

若き日の三谷幸喜さんをモチーフにした放送作家の役を神木隆之介さんが演じるのも楽しみだな。

この記事では、もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう (略:もしがく)】のネタバレあらすじを毎話更新していきます。

◎この記事でわかること
ドラマ【もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう】
・全話のあらすじ・ネタバレ
・最終回の予想
・見どころ

【もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう(もしがく)】のあらすじ・ネタバレ

1話「ここは八分坂」

放送日:10月1日(水)22:00~23:24(初回拡大SP)

1話のあらすじ

昭和59年秋。
久部三成(菅田将暉)は、路頭に迷っていた。
彼は蜷川幸雄に憧れる演出家の卵で、自身の横暴ぶりによって劇団から追放されてしまったのだ。
あてもなく彷徨う久部は、ストリップ小屋のネオンが光る怪しいアーケード街に迷い込む。
その商店街は、渋谷駅から8分でたどり着くから「八分坂」と呼ばれていて、そのアーケードにはこう刻まれている。
“Pray speak what has happened(何があったか話してごらん)”
無料案内所のオババ(菊地凛子)に誘われ、久部はWS劇場の扉を開く。

1話のネタバレ

「どうなろうとも、時は過ぎる、どんなひどい日でも」マクベス
・昭和59年、秋。
・渋谷の片隅にある小劇場小劇場「ジョン・ジョン」では劇団・天上天下の「クベ版 夏の夜の夢」が公演中。
・しかし、蜷川幸雄に憧れる若き演出家・久部三成菅田将暉)の演出はあまりに奇抜すぎて、最後まで観てくれた観客はわずか5人だけ。
・共に劇団を立ち上げた劇団代表の黒崎小澤雄太)とも言い合いになり、怒りを爆発させながら夜の街を彷徨い、怪しいアーケード街「八分坂」に辿り着いた。

冒頭、劇団員たちから「あんたの芝居は面白くないんだよ」と言われた久部は「面白さに価値を見出すな」と怒声を上げてアルミの灰皿を投げつけようとします。
灰皿は蜷川幸雄さんの有名なエピソードですが、生前「灰皿を投げたのは1回しかないのに困っちゃうよ」と笑っていたと伝えられています。
形だけマネるだけでは、芸術の本質をつかむのは難しいのでしょうね。
今の久部は、蜷川作品に憧れながらもオリジナリティを出そうとして、独りよがりになっているように見えます。
観客の心をつかめず、劇団員たちからも見放された久部は無様に荒れ狂いながら渋谷の街を歩き続け、やがて八分坂にたどり着きました。
怪しいネオンが輝く、何かが待っていそうなアーケード街。
彼は引きこまれるように入っていきます。
ここで久部は誰と出会い、どんな経験をしていくのでしょう。

・八分坂のストリップ劇場「WS劇場」では、看板ダンサー・いざなぎダンカン小池栄子)がショーの真っ最中で、客はまばらだが歓声があがりリボンを投げる常連客もいる。
・楽屋に戻ってきたダンカンは浮かない表情で、ベテランのパトラ鈴木アン ミカ)に「姉さん、話があるんだけど」と相談する。
・一方、もう1人のダンサー・毛脛モネ秋元才加)は、小学1年生の息子・朝雄佐藤大空)を探し回っていた。
・舞台監督の伴工作野間口徹)は洗濯するために、楽屋に脱ぎ捨てられたダンサーたちの衣装を集めている。
・劇場の向かいにある古アパート「グローヴ荘」の一室では、お笑いコンビ「コントオブキングス」がネタ合わせ中。
・新人放送作家の蓬莱省吾神木隆之介)がネタの細かい表現の直しを提案すると、ツッコミ役の彗星フォルモン西村瑞樹)は却下するが、ボケ役の王子はるお大水洋介)が本番でその提案を使ってくれてい蓬莱は嬉しい。

ダンサーが躍るステージに脇からリボンを投げる“リボンさん”は、スタッフではなく常連客の人なのですね。
ダンカンにリボンを投げていたリボンさんは、パトラの出番になると帰宅していましたが。
このリボンさんの正体は後ほど明らかになります。
ダンカンやパトラの踊る姿を見ていると、まさしく“ショー”で、ストリップも一つの芸であることがわかります。
ダンサーのショーとショーの間に、芸人さんたちがネタを披露するんですね。
お笑いコンビ「コントオブキングス」のネタ作りを手伝う新人放送作家・蓬莱は、若き日の三谷幸喜青年がモチーフです。

・追い掛けてきた劇団・天上天下の制作スタッフ・トンちゃん富田望生)と、八分坂のジャズ喫茶「テンペスト」に入った久部は、劇団への不満を大声で語り続ける。
・気弱な従業員・仮歯ひょうろく)から、静かにしてほしいと頼まれ、マスターの風呂須太郎小林薫)からも店から出るように言われてしまう。
・テンペストを追い出され、「八分神社」の片隅で膝を抱えてめそめそと泣く久部。
・その近くには、夜遅い時間なのに漫画雑誌を読んでいる小学生。
・久部はおみくじを引くがなんと白紙で、声を震わせながら神社の巫女・江頭樹里浜辺美波)に尋ねるが、縁起がいいか悪いかは自分次第だとクールに言われてしまう。
・久部は動揺しながら、おみくじを近くにある木の枝に結びつけた。

ジャズ喫茶「テンペスト」は大人の店。
大声で怒鳴り散らす久部は、雰囲気をぶち壊してしまいます。
他に客はいないからと傍若無人に振る舞いますが、マスターから「ここは音楽を楽しむ場所」と言われて追い出されてしまいました。
ひとりになり、八分神社で膝を抱えて鼻をすすっている久部は、先ほどまでの荒ぶる姿とは別人のよう。
もしかしたら、演劇に関することだけ独善的で、その他の部分は気弱な青年なのでしょうか。
劇団スタッフのトンちゃんが心配して追いかけてきてくれたことからも、悪いところばかりではないのでしょうね。
それにしても、白紙のおみくじが傷心の彼にさらに追い打ちをかけてしまいました。

・久部は無料案内所の怪しいおばば菊地凛子)が勧めてくれた店、スナック「ペログリーズ」に行ってみることに。
・WS劇場の隣にあるペログリーズを訪れた久部は、三島由紀夫を読むミステリアスな女性・倖田リカ二階堂ふみ)に、劇団への不平不満を話していた。
・久部はリカの優しさと美しさにすっかり気をよくするが、会計が9万3600円と聞いて顔面蒼白。
・そんな大金を持っていないと逃げ出そうとするも、ウェイターのケントちゃん松田慎也)に捕まってしまう。
・哀れに思ったリカは、「ペログリーズ」を運営している浅野大門野添義弘)に許してやれないかと聞きに行くが、例外はダメだと言う。
・大門は、「WS劇場」の劇場支配人も兼任している。
・大門の妻・フレ長野里美)の指示で、劇場の用心棒・トニー安藤市原隼人)が久部を脅す。
・リカが、久部が肌身離さず持ち歩いているシェイクスピア全集を預かる代わりに明日の夜まで支払いを待つと助け舟を出した。

おばばは、スナック「ペログリーズ」を勧めてくれた後、何やら予言めいた言葉を久部に告げました。
仕事を得て、仲間を得て、一国一城の主となる、と。
その後も何か言いたそうでしたが、おばばには久部の未来が見えるのでしょうか。
さて、ペログリーズで久部は倖田リカと出会います。
久部はリカをひと目見てその容貌と蠱惑的な雰囲気にハッとしたようでしたが、彼女が読んでいたのが三島由紀夫の小説だったことでさらに興味を引かれたのではないでしょうか。
小劇団の演出家のわりに遊びには慣れていないようで、リカに手玉を取られ法外な会計を要求されます。
用心棒のトニーが凄みを見せ、絶体絶命の久部でしたが、リカが助け舟を出してくれました。
しかし、学生時代にバイトをして買って以来バイブルとして肌身離さず持ち歩いている大切なシェイクスピア全集を人質として店に置いて帰らなければなりません。
そして、9万円用意しなければ取り返すことができないのです。

・息子を探し回っていたダンサーのモネは、交番に行くことを決意するが、ステージの代役を頼もうと思ったダンカンの姿が見えず、パトラが引き受けてくれることに。
・ダンカンは、先ほど久部がいた八分神社に照明スタッフのノーさん大野泰広)といた。
・風営法の改正による規制で、すっかり人気が落ちてしまったストリップ劇場に見切りをつけた2人は、沖縄で一からやり直すことにしたのだ。
・八分神社に先ほどからいた小学生はモネの息子・朝雄で、ダンカンたちの様子を見ていた。
・ダンカンは「私たちを見たって、みんなに言わないで」と言い残し、八分坂をあとにした。
・WS劇場に劇場オーナー・ジェシー才賀シルビア・グラブ)が秘書・乱士郎佳久創)を従えてやって来た。
・ジェシーは、赤字のWS劇場を改造して“ノーパンしゃぶしゃぶ”にしようと言うが、大門はなんとか今月いっぱい待ってほしいと土下座する。

モネもダンカンもいないため、既に一度踊って疲れているにも関わらず、笑顔でステージに立つパトラでしたが、客席からは「またパトラ!?」「飽きた」と辛らつな声が。
ダンカンは看板ダンサーであるがゆえに、風営法改正以来の客足の変化をリアルに感じていたのでしょうね。
ダンカンが照明スタッフと駆け落ちのように去ってしまったことで、これからWS劇場は大変なことになります。
オーナーのジェシーによると、大門が運営を任されているWS劇場とスナック「ペログリーズ」だけが赤字経営。
大門はなんとかストリップ劇場を続けたいのですね。
強い想いがあるようです。
しかし、WS劇場は、看板ダンサーと照明スタッフがいなくなってしまいました。
そして、モネが探し回っている息子・朝雄はずっと八分神社にいたのですね。
久部の様子もダンカンたちの様子も見ていた朝雄。
夜遅いのに。
まだ小学1年生なのに。

・久部は交番へ駆け込み、ペログリーズ法外な飲食代を取られたこと、人質に取られたシェイクスピア全集を取り返したいことを訴えるが、警官・大瀬六郎戸塚純貴)はモネの息子・朝雄探しのことで頭がいっぱいでまともに聞いてくれない。
・迷子の特徴を聞いた久部は八分神社で見かけた小学生を思い出し、大瀬と共に八分神社へ行き朝雄を保護する。
・久部は、大瀬がモネを連れてくるまで朝雄を預かってくれるように樹里に頼む。
・樹里は一方的に子どもを押しつけられ、神主である父・江頭論平坂東彌十郎)に文句をぶつけていた。
・潔癖で八分坂に嫌悪感を持つ樹里は、早くほかの神社へと移りたいと願っていた。
・娘には秘密でWS劇場に通っている論平は、あいまいな態度。
・そこへ大瀬に連れられたモネが駆け込んできて、朝雄の家出騒動は一件落着。

大瀬はどうやらモネに淡い気持ちを抱いているようですね。
モネの息子がいなくなったことで頭がいっぱいで、久部がチャージ料をぼったくられたこと、大切なバイブルを人質に取られたことを訴えても取り合ってくれません。
偶然久部が八分神社で朝雄を見かけていたので、無事に保護されて良かったです。
モネは朝雄とよく話ができたら良いのですが。
八分神社の樹里は、八分坂の猥雑な空気が好きではないようですね。
彼女はここの場所で異端の存在ですが、今後どのように変化していくのか楽しみです。
さて、その樹里の父親、八分神社の神主・論平は、なんとリボンさんだったのですね。
朝雄を迎えに来たモネは論平にお礼を言い頭を下げますが、彼の顔を見て驚きます。

・蓬莱は、日頃から感じたことや思いついたことをアイディア帳に書きつけていた。
・ダンカンが消えたことが発覚したWS劇場は大騒ぎ。
・パトラは既に2回踊って疲れ切っていて、モネは朝雄探しで不在、次の回のショーに出演するダンサーがいない。
・リカが急きょステージに立つことに。
・今日はペログリーズにいるが、リカはWS劇場のダンサーでもあるのだ。
・リカが準備を終えるまでのつなぎ役を客引きのうる爺井上順)に頼むことに。
・うる爺はかつて漫談師で、蓬莱の前で往年のコメディアンぶりを見せていたが、いざステージ衣装を身に着けると謎のかゆみに襲われてしまった。
・そうこうしているうちにリカが準備を終え、いよいよショーがスタート。
・ドレス姿で魅惑的に踊るリカだが、ノーさんがダンカンと消えてしまったため、スポットライトは固定されたままで彼女の踊りはたびたびライトから外れてしまう。
・シェイクスピア全集を取り返すためにペログリーズに忍び込んだ久部は、ケントちゃんが持って行った自分のボストンバックを追っているうちに隣のWS劇場に入り込んでいた。

ダンカンがいなくなり、大騒ぎになるWS劇場!
次のショーで踊るダンサーがいないため、今日はシフトに入っていないリカが呼ばれます。
リカはWS劇場のダンサーだったのですね。
さて、リカの支度の時間を作るために客引きのうる爺に漫談を頼むことになりますが、大門は彼が引き受けたことを驚き、フレは無理だというように顔をしかめます。
うる爺が漫談を辞めて客引きになった理由が何かありそうですね。
結局衣装を着た途端、謎のかゆみに襲われてうる爺はステージに出られません。
なんとかリカの準備ができ、ショーが始まりました。
その頃、シェイクスピア全集を追って、久部はペログリーズの裏からいつの間にか隣のWS劇場に入り込んでいました。

・シェイクスピア全集の入ったボストンバックを抱きしめて喜ぶ久部だったが、その耳に劇団の公演で使った曲「天国と地獄」のメロディが届く。
・「天国と地獄」に誘われてステージで踊るリカを見つけた久部は、彼女の魅力を殺している照明に苛立つ。
・蓬莱から照明スタッフがいないと聞いて歯痒さにいても立ってもいられなくなった久部は、劇場内を駆け抜けてスポットライトの元へ行き、リカの動きに合わせて巧みにピンスポットを当てる。
・ライトの動きに気づいたリカは、大胆に踊り切り、最後に蠱惑的に微笑んだ。
・リカの視線の先には、舞台への情熱にみなぎる久部の姿が。

シェイクスピア全集は久部にとってバイブルであり宝物なんですね。
そして久部は、もうひとつの宝物を見つけます。
いや、取り戻しました。
それはステージへの情熱です。
照明スタッフがいなくなったため、リカはステージの真ん中に固定されたライトの中でしか動けません。
偶然その姿を見ることになった久部は、矢も楯もたまらずホールを走り抜け梯子をのぼり、スポットライトをリカに当てます。
久部が操る光の中で、リカは艶やかに華麗に踊ります。
リカを見つめ続けながらピンスポットを当てる久部のギラギラした目。
ここから、いよいよ始まるのですね。

1話のネタバレ感想記事はこちら↓

2話「八分坂日記」

放送日:10月8日(水)22:00~23:09

2話のあらすじ

風営法の改正でストリップショーが厳しく規制されるようになり、2年前の熱狂が嘘のようにWS劇場は寂れてしまっていた。
パトラ(アンミカ)が踊るショーの客席は閑散としていてまるで盛り上がらない。
久部三成(菅田将暉)はWS劇場の支配人・浅野大門(野添義弘)から「うちで働いてみないか」と誘われ、WS劇場の法被を着てパトラのショーのピンスポを担当することになった。
劇場スタッフの伴工作(野間口徹)に連れられ、久部がダンサーたちの楽屋を挨拶に訪れると、そこでリカ(二階堂ふみ)と再会することに。
「頑張ります!」と気を吐く久部だが、リカは興味なさげに目をそらす。

2話のネタバレ

「どんな手段でもかまいやしない、ただ目的を果たすまで」リア王
・風営法の改正でストリップショーが厳しく規制されるようになり、現在のWS劇場は2年前までの熱狂が嘘のように寂れてしまっている。
パトラ鈴木アンミカ)が踊っても、閑散としている客席は盛り上がらない。
久部三成菅田将暉)はWS劇場の支配人・浅野大門野添義弘)に頼まれ、いざなぎダンカン小池栄子)とともに消えてしまった照明スタッフのノーさん大野泰広)の代わりにショーの照明を担当することになった。
・大門の妻のフレ長野里美)は劇場は今月いっぱいで閉めるのにと心配する。
・パートナーのトニー安藤市原隼人)をスタッフとして鍛えてほしいというパトラの頼みで、トニーは久部の助手として働くことに。
・劇場スタッフの伴工作野間口徹)に連れられて久部がダンサーたちに挨拶に行くと、倖田リカ二階堂ふみ)と再会するが、リカの反応は薄い。
・久部は、劇団・天上天下のスタッフであるトンちゃん富田望生)に、今夜から公演を再開すると聞く。

いよいよ久部がWS劇場で働くことになりました。
久部は演出家ですが、学生時代劇団で何でもやらされたので照明の仕事もできるのです。
いざなぎダンカンとともにいなくなってしまったノーさんの代わりに照明スタッフとして働くことになりましたが、劇場はあと3週間でおしまいなんですよね。
久部は照明スタッフをする代わりにスナック「ペログリーズ」の支払いをチャラにしてもらい、カタとしてとられていたシェイクスピア全集を返してもらいました。
肌身はなさず持っていたバイブルを取り戻して喜ぶ久部でしたが、ずっしりと重くかさばる全集を見た伴は、新書版が出ていることを教えてくれ、持ち運ぶのならこっちだなと言います。
伴は劇場を支えるために様々な苦労をしてきた様子で、頼りになりそうですね。
さて、久部は自分を追い出した劇団のスタッフ・トンちゃんに、しばらくWS劇場で働くこと、自分に考えがあることを話します。
トンちゃんは久部に、今夜から劇団が公演を再開、久部の「夏の夜の夢」を演出を変えて新しい形で上演することを伝えました。
かつて久部が舞台で使っていた巨大な蚊取り線香のセットは取り除いて普通の床でやるのだと言います。
トンちゃんは劇団に戻ってきてほしいと思っていますが、久部にその気はなさそうですね。

・八分坂交番の巡査・大瀬六郎戸塚純貴)はWS劇場の客席後方で風営法違反がないか見張っていたが、毛脛モネ秋元才加)が客の盛り上がりに応じて下着を外したためにショーを中断させる。
・モネと大門は事情聴取で警察に連れて行かれ、この日は営業停止に。
・久部は、ステージで自主練習をするリカのダンスに目を奪われる。
・伴に頼まれて、久部はリボンさんと呼ばれる常連客で神主の江頭論平坂東彌十郎)に忘れ物を届けるため八分神社へ行く。
江頭樹里浜辺美波)が論平の娘と知って久部は一度は忘れ物を持ち帰ろうとするが、潔癖な樹里がWS劇場への嫌悪感を語るのを聞いて、父が常連客であることを教えてしまう。
おばば菊地凛子)に会いに行った久部は「獅子座の女に救われる」と予言される。

WS劇場が営業停止になった日、空いているステージうを使ってリカはダンスの練習をします。
清掃をしていた久部はたまたま踊るリカを見て、クラシックバレエ仕込みの美しい姿勢とパフォーマンスを絶賛しました。
しかし、「どうしてこんなところで働いているんですか」とつい言ってしまい、リカにとがめられます。
「こんなところ」という言葉は、久部がストリッパーを下に見ていることの表れですね。
1話でおばばは、“仕事を得て、仲間を得て、一国一城の主となる”と予言しました。
久部はWS劇場で働き始めたので、仕事を得るというのは当たったことになります。
仲間を得るというのも、今後の展開で実現していきそうです。
それでは、一国一城の主になるというのはどういう意味なのでしょうか。
その疑問を久部はおばばにぶつけますが、忘れてしまったという答え。
ただ、おばばは新たな予言を告げます。
“あんた、獅子座の女に救われるね。獅子座の女は大事にしな”と。

・久部は、放送作家・蓬莱省吾神木隆之介)に、お笑いコンビ「コントオブキングス」の彗星フォルモン西村瑞樹)と王子はるお大水洋介)、そして客引き・うる爺井上順)がいるグローブ荘の一室へ連れて行かれる。
・WS劇場の今後について聞かれた久部は、皆に「役者の仕事はされないんですか」と聞き返し、フォルモンに劇団経験があると聞くと目を輝かせる。
・久部はトニーと一緒に天上天下が公演中の小劇場へ行き自分の舞台美術を運んでくる。
・オーナーのジェシー才賀シルビア・グラブ)がWS劇場の改装の見積もりを頼んでいるのを見て、大門は劇場が畳まれるのが決定的だと改めて知り絶望する。
・大門は、久部にリカ、モネ、パトラを呼んでこさせて、劇場が今月いっぱいであることを告げたが、納得できないダンサーたち。
・久部が立ち上がり、ここは渋谷の一等地の劇場だから芝居をやれば儲かるはずとぶち上げる。
。久部に連れてこられた蓬莱省吾神木隆之介)は、確かに今は小劇場ブームだけれど最初から客は入るだろうかと疑問を呈するが、久部は劇場を閉める前にトライする価値はあると言う。
・リカは「面白いんじゃない?」と賛成し、パトラも乗り気だが、仕事に誇りを持つモネは久部が内心ストリップを下に見ていると感じて反発する。
・そこへ、フレの茶飲み友達のおばばが登場してステージで華麗なタップダンスを披露する。
・おばばはフレとともに見事なダンスを踊り、「これくらい踊れるようになってから一人前のことを言いなさい!」と力強く告げた。
・大門が「あんたに掛けてみるわ!」と言うと、おばばが「私も獅子座の女だった!」と叫ぶ。

「コントオブキングス」のフォルモンは劇団にいた経験があるようですし、芸達者のうる爺、面構えの良いトニー、舞台映えする顔のパトラ、表現力の優れたモネ、そして華やかさとオーラを持つリカ。
もしかしたら、おばばやフレも?
なんだかワクワクする役者が揃いましたね。
蓬莱には演出助手をやってもらうことになりました。
皆が芝居の演目を聞くと、久部の合図とともに伴が緞帳を上げて「夏の世の夢」の舞台美術を見せます。
つまり、久部はすでに伴にも話を通しているということ。
事前に舞台美術の“巨大蚊取り線香”を運び込んでいたことも含めて、実にやり手ですね。
さあ、いよいよ物語が動き出します。
久部のもとで八分坂の人たちは輝くことができるのか、久部は自分のやりたい演劇を実現できるのか。
お楽しみはこれからです!

2話のネタバレ感想記事はこちら↓

3話「夏の夜の八分坂」

放送日:10月15日(水)22:00~22:54

3話のあらすじ

WS劇場の向かいに建つ古アパート・グローブ荘では、久部三成(菅田将暉)が台本を必死に書いている。
シェイクスピアの「夏の夜の夢」を、WS劇場で上演するために書き換えているのだ。
蓬莱省吾(神木隆之介)は久部に夜食を頼まれ、同じグローブ荘に住んでいる倖田リカ(二階堂ふみ)の部屋へ。
久部はリカの作った具なしラーメンに文句をつけながらも、書く手を休めない。
久部が書き終えた原稿をリカが読もうとすると、異常なほどに久部はガードする。
リカと蓬莱は「長いと客が飽きる」「出来るだけセリフは少ない方が助かる」などと言いたい放題。
すると久部はかんしゃくを起こして原稿をビリビリに破ってしまう。

3話のネタバレ

「やろうと思ったことは、思ったときにやるべきだ」 ハムレット
久部三成菅田将暉)はWS劇場で行う「夏の夜の夢」の上演台本を執筆する。
・久部から夜食を頼まれた蓬莱省吾神木隆之介)が倖田リカ(二階堂ふみ)にお願いすると、インスタントラーメンを作ってくれる。
・「夏の夜の夢」が5幕あることを聞いたリカが長過ぎると注文をつけると、久部は書いていた原稿を破り捨てて書き直す。
・WS劇場屋上では、コントオブキングスの彗星フォルモン西村瑞樹)がシェイクスピアの芝居などやりたくないと相方の王子はるお大水洋介)にこぼしていた。
・台本ができあがって皆に配られる。
・はるおは蓬莱に、他の仕事があるだろうし抜けても良いと言うが、蓬莱はコントオブキングスもWS劇場も好きだし、久部も面白そうだし、クイズ番組の問題を作るよりも演出助手の仕事のほうが向いていると思うと話す。

蓬莱は、久部の目的が何かはわからないけれど今は彼に頼るしかWS劇場の未来はないと考えています。
演出助手として、献身的に久部を支えていて心強いですね。
リカも寝ているところを起こされたのに夜食を作ってくれるなんて良いところがあります。
具のないインスタントラーメンですが、おいしそうです。
台本を書き上げ疲れ果てて眠る久部を、起こしに来てくれるのも優しいですね。
コントオブキングスのフォルモンは、芝居なんかやりたくないと言いながら頭の中はコントのことでいっぱいのようです。
自分たちは面白いのかという根源的な悩みを抱えているんですね。
煮え切らない反応の相方のお尻をイライラして蹴飛ばします。
はるおは相方のフォルモンだけでなく、蓬莱にも気を遣っていて繊細で優しい人柄なんですね。
さて、台本が皆に配られ、いよいよ配役の発表です。

クベ版「夏の夜の夢」
★ヘレナ⇒倖田リカ二階堂ふみ
★ハーミア⇒毛脛モネ秋元才加
★アテネ公爵・シーシュース&妖精王・オーベロン⇒彗星フォルモン西村瑞樹)(2役)
★アマゾンの女王・ヒポリタ&妖精の女王・タィテーニア⇒パトラ鈴木アンミカ)(2役)
★職人のボトム⇒うる爺井上順
★村人・ピーター・クインス⇒ケント(松田慎也)
★ハーミアの父・イージーアス⇒浅野大門野添義弘
★ディミートリアス⇒王子はるお大水洋介
★ライサンダー⇒トニー安藤市原隼人
★妖精・パック⇒久部三成菅田将暉

ハーミアはライサンダーの想い人。
ディミートリアスはイージーアスが決めたハーミアのフィアンセ。
そしてハーミアの友達のヘレナは、ディミートリアスに想いを寄せています。
この4人の男女の関係が、いたずら好きの妖精パックによって混乱していきます。
配役が発表されて納得する人、戸惑う人、様々でしたが、特にトニーは俳優なんてやったことがないと拒否反応を示していましたね。
「夏の世の夢」のトリックスター、妖精パック役は久部が担います。
「演出助手の仕事は演出家から目を離さないこと」と言われた蓬莱は、生真面目にその言葉を守って久部に付き従います。

・久部は劇場スタッフの伴工作野間口徹)や蓬莱とともにストリップで使用していた衣装や機材で使えそうなものを物色するが、ステージ用の照明・パーライトがないことがわかり伴に手配を頼む。
・「演出助手の助手」に決まったモギリの毛利里奈福井夏)が描いた「夏の夜の夢」のチラシを久部は気に入り、コピーして渋谷の劇場や八分坂の飲食店に置いてもらうよう蓬莱に指示した。
・台本の読み合わせが始まるが、トニーの声が小さすぎて聞こえない。
・勝手にアドリブ演技を展開するうる爺やセリフに文句をつけるモネに久部は腹を立て、灰皿を投げつけようとするが、それをたしなめるようにリカがお手本を求める。
・「我ら役者は影法師」と妖精パックの世界を表現する久部だったが、理解してくれる者は少なく、蓬莱は休憩を告げる。
・ステージでひとりセリフの練習をしているリカに近づき、久部は読み合わせで見せた演技を褒めるが、、リカは灰皿を投げようとしたことを諫める。
・暴走しがちな自分を反省した久部はこれからも助言をしてくれるように頼むが、リカは自分を理解者だと思わないでほしい、自分はただストリップに飽きただけとそっけない態度。
・「ここに芝居を愛している人間なんて1人もいない」と断言するリカに対し、久部も自分を追放した劇団「天上天下」への復讐のためにWS劇場の人間を利用しているだけだと言う。

スタッフの伴は、心強い存在ですね。
そして、モギリの里奈が描いたチラシはシェークスピアと蚊取り線香のイラストが印象的でした。
演出助手の助手、ということですが、これから彼女の活躍も見られそうですね。
ところで久部にとって、リカは特別な存在のようです。
久部が演劇への情熱を取り戻したのは、リカにピンスポットを当てたことがきっかけとなったわけですし、劇団を立ち上げる時にも後押しをしてくれた人だと思っていました。
しかし、リカは特に久部に好意を持っているわけではなく、ストリップに飽きただけだと言います。
「ここに芝居を愛している人間なんて1人もいない」と断言するリカに、久部も自分を追放した劇団への復讐のためにWS劇場の人間を利用しているに過ぎないと声を荒らげました。
でも、本当にそうなのでしょうか?
台本の読み合わせをしているリカは芝居心が感じられました。
配役の理由を説明する久部、パックのセリフを披露する久部には熱い情熱があると思うのです。
久部は心の支えのリカにそっけなくされて傷ついたことを隠すために強がりを言ったように見えました。

・久部は八分神社を訪れ、神主の娘・江頭樹里浜辺美波)にチラシを渡す。
・WS劇場の事務室に訪れたオーナーのジェシー才賀シルビア・グラブ)に、大門が芝居を上演することを説明、劇場を渋谷のニュースポットにすると息巻く。
・ジェシーは久部に、「夏の夜の夢」はこの5年でもかなり上演されていて余程のことをやらなければ話題にならないと告げた。
・久部はトニーを連れて、劇団「天上天下」に突撃しチラシを配る。
・主宰者の黒崎小澤雄太)は、「天上天下」でトニーと同じライサンダー役を演じる男とトニーとの対決を提案。
・稽古中を理由に、久部がトニーを連れて劇場を出ようとすると、黒崎は劇団員たちと逃げたと言って笑う。
・久部が怒りに震えるのを見たトニーは黒崎たちのところへ戻り、情感たっぷりの演技を披露するのだった。
・久部は、案内所のおばば菊地凛子)から「同じ道を進むな」、「灰皿は灰を捨てるためにある!」というアドバイスをもらう。
・立ち稽古でパトラがフォルモンのお尻を蹴ると、フォルモンは激怒するが、久部は役者のいいところを見つけるのが演出家の仕事だと言い、なぜオーベロン役にキャスティングしたかを説明する。
・「たまに見せる悲しそうな顔がいい」とフォルモンの良さを語る久部の言葉に、蓬莱はコントオブキングスはボケとツッコミが逆だったことに気がつく。
・フォルモンは怒って屋上へ行ってしまうが、そこではるおを相手にボケとツッコミを逆にしてネタをやってみて、最後にお尻を蹴られて大笑いする。
・お笑いの新たな可能性をつかんだフォルモンは清々しい表情で稽古場に戻り、稽古を再開、パトラにお尻を蹴るように促し、一同は笑いと拍手。

樹里はシェイクスピアも「夏の夜の夢」も本当はあまり知らないのに久部に対して知ってる素振りをしたのでしょうか。
ひそかに書店に「夏の夜の夢」の本を買いに行っているところ、可愛いですね。
演劇に興味があるのかもしれません。
また、オーナーのジェシー才賀や、ジャズ喫茶「テンペスト」のオーナー・風呂須太郎小林薫)が演劇に詳しいことが今後何か意味を持ってくる可能性もあり、楽しみです。
さて、2話の一番の見どころは「天上天下」で見せたトニーの演技でした。
久部が侮辱されたことで覚醒したのでしょうか。
圧巻の芝居を見せて、「天上天下」の一同を黙らせます。
いよいよ立ち稽古。
パトラに蹴られることに我慢できないフォルモンでしたが、久部から体の大きな人が奥さんの尻に敷かれている感じがほしくてキャスティングしたこと、自分では気づいていないかもしれないけれど、たまに見せる悲しそうな顔が良いことを説明されました。
そこで、これまで一緒にネタ作りをしてきた蓬莱がコントオブキングスのボケとツッコミは逆のほうが面白いのではと気がつきます。
蓬莱の言葉を聞いてすぐにコントを試してみるところがお笑いのプロですね。
コントも演劇も役を演じるという点は同じ。
トニーとフォルモンが芝居に目覚めたことで、「夏の夜の夢」上演がますます楽しみになってきました。

3話のネタバレ感想記事はこちら↓

4話「初日前夜」

放送日:10月22日(水)22:00~22:54

4話のあらすじ

久部三成(菅田将暉)による「夏の夜の夢」の初日公演が翌日に迫っていた。
WS劇場では、倖田リカ(二階堂ふみ)、蓬莱省吾(神木隆之介)たちが追い込み準備に追われる。
リカが「で、明日はうまく行くの?」と聞くと、自信いっぱいに「もちろん」と断言する久部。
その頃、八分神社の社務所には神社本庁の清原(坂東新悟)が来ていた。
風紀が乱れた八分坂にいることに我慢できず限界に達した巫女の江頭樹里(浜辺美波)は清原に「1日も早く出て行きたいんです」と訴える。
出て行けば八分神社は廃社になるという清原の言葉に、神主の論平(坂東彌十郎)は肩を落とす。
すると清原は、街も変わりつつあるしもう少し頑張ってみたらどうか、と「夏の夜の夢」のチラシを取り出す。
「楽しみにしているんです」と論平は喜ぶが、樹里は「シェイクスピアへの冒涜です!」と声を荒らげる。

4話のネタバレ

「人間ってなんて馬鹿なんでしょ!」  夏の夜の夢
・初日を翌日に控えた久部三成菅田将暉)は案内所のおばば菊地凛子)から「甘さで足元をすくわれ、甘さで人に救われる」と告げられる。
・劇団・天上天下の主催者・黒崎小澤雄太)は、トンちゃん富田望生)に、明日のWS劇場で上演される「夏の夜の夢」のチケットを取るように言う。
・八分神社の社務所に来た神社本庁の清原坂東新悟)に、巫女の江頭樹里浜辺美波)は早く出て行きたいと頼むが、出て行くと廃社になるという清原の言葉に、神主の父・論平坂東彌十郎)は肩を落とした。
・「夏の夜の夢」のチラシを取り出して「街も変わりつつあるようではないですか」という清原に、論平は楽しみにしていると喜ぶが、樹里は「シェイクスピアへの冒涜です!」と声を荒らげる。

久部は強気のように見えますが、初日を前に不安と緊張でいっぱいなんですね。
なんだかんだ言っておばばの予言にすがろうとするところがあります。
また、久部はスルーしていましたが、おばばは東宝ミュージカルの出演経験があると言っていました。
タップダンス上手でしたものね。
久部の古巣である劇団・天上天下は、「夏の夜の夢」公演が順調なようです。
黒崎は、同じく「夏の夜の夢」を上演する久部の劇団が気になるのでしょうか。
制作スタッフのトンちゃんは、内心久部を応援しているので、鑑賞できるのが嬉しそうですね。
樹里は、相変わらず八分坂を出て行きたいようですが、神社本庁から来た清原が「街も変わりつつあるし」と言っていました。
ストリップ劇場のWS劇場が芝居小屋に変わることが広まりつつあるんですね。

毛脛モネ秋元才加)の息子、朝雄佐藤大空)が素晴らしい公演ポスターを描いてくれて久部は喜び、蓬莱省吾神木隆之介)にコピーして街に貼るよう指示をする。
・さらに久部は蓬莱に、自分が演じるパックの最後のセリフにもうひと工夫ほしいので台本を書いてほしいと頼み、蓬莱は嬉しさを隠しきれない。
・劇場スタッフの伴工作野間口徹)から、パーライトを借りられるところがどうしても見つからないという報告を受けた久部は、仕方なくパーライトのない演出プランに切り替える。
・明日の初日を前に昼稽古したいところだが、コントオブキングスの彗星フォルモン西村瑞樹)と王子はるお大水洋介)は営業、モネは家庭訪問など、皆のスケジュールが合わず、夜のゲネプロ(通し稽古)まで全員での稽古ができない。
・ステージでストレッチをしている倖田リカ二階堂ふみ)に久部が声をかけ、2人で稽古するが次第に熱血指導になっていく久部に対してリカは冷めた表情。
・劇場の事務所では、支配人・浅野大門野添義弘)が妻・フレ長野里美)に頼んで、小道具にセリフのカンペを仕込ませている。
・そこへ営業から帰ってきたコントオブキングスの2人は、久部のアドバイス通りにしたら大成功だったと報告し、演出家としての久部の才能を認めるように。
・朝雄の担任教師・楠木関谷春子)が家庭訪問にやってくるが、モネはゆっくり話せる場所ということでジャズ喫茶「テンペスト」に連れて行く。
・楠木はモネに、朝雄が描いた裸で踊るモネの絵を見せ、モネの仕事が噂にならないよう配慮して朝雄の絵だけ教室に張り出さなかったと言う。
・モネを追いかけてきた大瀬六郎戸塚純貴)は、朝雄の家出の原因はそれではないかと言うが、モネは口をはさまないでときっぱり告げる。
・楠木は朝雄の絵の優れた才能を伸ばすためにも今の環境は良くないと言い、暗に施設に預けるべきだとほのめかすが、テンペストに居合わせた久部がストリッパーへの偏見だと反論。
・モネは、口を出してきた久部に怒りを向け、楠木にもこれからはシェイクスピア俳優として生きていくから心配は不要だと告げた。
・珈琲代を払おうとする楠木を、テンペストのマスター・風呂須太郎小林薫)が「11万3000円です」とふっかけて追い出す。
・ステージでセリフ練習をしているリカのところへ、WS劇場のオーナー・ジェシー才賀シルビア・グラブ)がやって来て、新しいものも取り入れなさいと言い2人でマイケルジャクソンのスリラーを踊る。

モギリの毛利里奈福井夏)が描いたチラシも味わい深かったですが、朝雄のポスターは鮮明な印象を残す見事なものでした。
朝雄は優れた絵の才能があるのですね。
担任の楠木はその才能を惜しみ、猥雑な八分坂の環境でストリッパーの母親に育てられるのは教育上良くないと判断して、児童相談所に相談すべきだと忠告します。
それを聞いていた久部は、ストリッパーという職業への偏見だと反論しますが、モネの怒りは楠木ばかりではなく久部にも向かいました。
自分と息子のことは他人に介入してほしくないのですね。
「これからはシェイクスピア俳優として生きていく」という宣言のなんと気高いことでしょう。
モネの決意を久部は受け止めますが、同時にそれは公演の成功というプレッシャーになります。
さて、久部は蓬莱にパックのセリフに決意表明みたいなものを入れたいと言って、台本の加筆を頼んでいました。
これは久部から信頼されたということで、放送作家の蓬莱にとって嬉しいことですね。
ただ、蓬莱が一生懸命考えたセリフとポーズ、久部はあまりピンとこなかったようです。
さて、久部の熱い想いを一身に受けるリカは、オーナーのジェシーとなぜかスリラーを踊る羽目に。
ジェシーは昔、リカのようにステージに立っていて、その前は俳優座にいたとのこと。
道理で演劇に造詣が深く、ダンスもキレキレなわけです。
ジェシーからのリカへのアドバイス、「(舞台の上で緊張しないためには)大きな声を出すこと」は的を射ているのでしょうね。

・パーライトは用意できず、うる爺井上順)は台本にはない自分のネタを入れるつもり、さらに大門はセリフを覚えられない様子で、初日前日なのに皆それぞれ予定があって稽古もできない、久部は蓬莱にだけ準備不足の不安な気持ちを打ち明けるが、蓬莱は力強く励ます。
・久部は、大門にイージーアスを降りてもらい自分がパックと二役をやることを決意するが、体中にセリフを書いている大門を見て言い出せない。
・久部は蓬莱、伴、トニー安藤市原隼人)と、劇団・天上天下が上演中の小劇場ジョン・ジョンへ行き、スタッフの佐々木近藤芳正)に黒崎には許可をもらっていると嘘をついてパーライトを1灯、無断で拝借してしまう。
・WS劇場に貼ってあるポスターを見ている樹里にフレが声をかけ、面白いんですかと聞かれて、わからないけれどあんなの見たことないと答える。

急に決まった公演ですから、準備不足は致し方無いこと。
しかしリカには自信たっぷりな態度を見せていた久部は、内心不安でいっぱいなのですね。
蓬莱にだけ、天上天下を見返したいという強い気持ちと準備不足の不安をこぼす久部と、「僕は久部さんの夏の夜の夢は好きです」と励ます蓬莱。
2人の信頼関係ができてきていて胸が熱くなります。
けれども、古巣の劇団の劇場に嘘をついてパーライトを拝借するのはいけませんね。
樹里はやっぱり「夏の夜の夢」が気になるようです。
朝雄が描いたポスターを見ていると、フレがチラシを渡してくれ、さらに神社に貼ってほしいとチラシの束を渡します。
面白いかどうかはわからないけれど、あんなの見たことない、面白いんじゃない?とフレに言われて、樹里はますます公演を観たくなったのではないでしょうか。

・ゲネプロ(本番同様に行う通し稽古)が始まったが、パーライトを盗まれた黒崎、トンちゃん、アキラ宮原尚之)がやって来る。
・久部と黒崎は言い争いになり、久部がパーライトはゲネが終わったら返すと言うが、黒崎は初日祝いにくれてやると言う。
・黒崎は、出番が来てステージに向かう久部を追いながら、こんなことをしていたら一歩も前に進めない、自分の人生に他人を巻き込むんじゃないと語り続ける。
・ゲネの最中のトラブルに役者たちは困惑するが、伴が「続けて」と力強く告げた。
・モネの演技に割って入って、あの男を信じちゃだめだと言う黒崎。
・叫び続ける黒崎の声を切るように、あるいは呼応するように、トニーがセリフを言いモネを抱き上げて空気が変わる。
・さらに叫ぶ黒崎、だがそこへリカの声が入ってくると舞台は完全に物語の世界に染められた。
・アドリブで楽しませるうる爺、フォルモンと久部のかけ合いもぴったり。
・ロビーに出た黒崎とトンちゃんは素直に面白かったと感想を言い合う。
・最後にパーライトで照らされた久部演じるパックが「ノーシェイクスピア、ノーライフ」と蓬莱の考えたセリフを採用して、ゲネプロは終わった。

激情のロビーで演劇論を激しく言い合う久部と黒崎ですが、久部は黒崎のほうを決して見ず大瀬やアキラに向かって怒鳴り続けます。
そこに久部の弱さを感じますし、黒崎を前にしている久部は自分の思いだけで突っ走る子どものようです。
黒崎は、久部に腹を立てながらも内心は心配しているようですね。
黒崎は、久部が灰皿を盗んだことも知っていて、「こんなことをしていたらお前は一歩も前に進めないぞ」と言います。
久部の才能を惜しんでいるようにも聞こえますね。
パック役の出番が来た久部を追って、黒崎もステージ前にやって来ます。
ゲネプロの最中なのに、「あいつの頭にあるのは自分のことだけ!」と久部をそしり続ける黒崎。
その流れを鮮やかに断ち切ったトニーとリカが見事でした。
ただ見方によっては、黒崎という異物が入ったことによって、2人の演技が一段階上に上がったようにも感じられます。
特にリカの圧巻の演技は、久部も驚くほどでした。
モネは、役者として生きていく覚悟ができましたし、トニーは、同じライサンダー役のアキラに、セリフがないシーンはどうしたら良いかを聞く勉強熱心さ。
フォルモンは痛めつけられる役を楽しそうにやっていたし、うる爺も生き生きとアドリブを入れていました。
大門のセリフ覚えには少し不安がありますが。
久部のパックは華がありますね。
蓬莱の考えたセリフとポーズが採用されて良かったです。
皆、それぞれが輝き始め、いよいよ初日を迎えます。
4話のネタバレ感想記事はこちら↓

5話「いよいよ開幕」

放送日:10月29日(水)22:00~22:54

5話のあらすじ

「夏の夜の夢」公演初日。WS劇場では関係者を集めたミーティングが開かれる。
舞台監督の伴工作(野間口徹)が1日のスケジュールを手際よく説明した後、久部三成(菅田将暉)が「劇団クベシアター、旗揚げです」と高らかに宣言し、場内は大きな歓声で包まれた。
八分神社の神主・江頭論平(坂東彌十郎)と江頭樹里(浜辺美波)がお祓いを執り行うためにWS劇場にやってくる。
目の前を通る倖田リカ(二階堂ふみ)を見てにやける論平の姿にうんざりする樹里。
WS劇場のステージ上に祭壇が設けられお祓いが始まった。
神妙な静けさの中、久部は並々ならぬ思いでステージを見つめる。

5話のネタバレ

「一度しくじったからと言って、やると決めたことを見合わせてはダメだ」 テンペスト
・「夏の夜の夢」公演初日。
久部三成菅田将暉)が「劇団クベシアター」の旗揚げを高らかに宣言する。
・八分神社の神主・江頭論平坂東彌十郎)と娘・樹里浜辺美波)が公演前のお祓いを執り行う。
倖田リカ二階堂ふみ)を目にした論平はデレッとした笑みを浮かべ、娘の冷たい視線を浴びる。
蓬莱省吾神木隆之介)は、樹里に一目ぼれ。
・久部は樹里に初日を見てほしいと声をかける。
・ロビーでストリップダンサーたちの写真を眺めていた樹里はうる爺井上順)になぜお金のために人前で裸になれるのかと疑問をぶつけた。
・「彼女たちも僕ら芸人と同じく人を楽しませるのが好きなんじゃないか。彼女たちは人に脱がされているのではなく自分の意思で脱ぐんだよ」といううる爺の言葉に樹里は考え込む。
・リカや毛脛モネ秋元才加)宛てのお祝いのスタンド花が到着し、それを見たトニー安藤市原隼人)はパトラ鈴木アン ミカ)のために門松のような飾りを作る。
・取材に来た記者(宮澤エマ)が、活動再開は久部ファンとして嬉しいと話す。

劇団クベシアターの旗揚げです。
まずは八分神社神主の論平によるお祓いがありました。
ただ、この時パトラだけが名前を読み上げられませんでした。
論平はリカにデレデレしていましたから、うっかり飛ばしてしまったのかもしれません。
「呪われたりしないですよね?」と不安げなパトラですが…。
蓬莱はこの日初めて巫女の樹里と会い、清らかで可憐な容貌にひと目で惹かれます。
その樹里はずっとWS劇場を目の敵にしてきましたが、久部がシェイクスピア劇を上演すると聞いてからは興味が出てきたようで、初日を見てほしいと久部から言われて内心嬉しい様子。
また、うる爺からストリップダンサーたちの心意気を教えてもらって、樹里の心情に変化が出てきたようです。
リカやモネにお花が届いているのを見て、自分で竹の飾りを作るトニー、愛しいですね。
マスコミの取材も入って、初日の華やかな雰囲気が伝わってきます。

・開場1時間前、モネは朝雄佐藤大空)の紅白帽を買いに出かけてしまう。
・アパートで台本を読むリカのところへ久部が行き舞台に立つ心構えを説くが、どうせならもっと安心させてと言われ、リカの言うがままに後ろから抱きしめてドギマギする。
・外に出た久部は路上で踊るロックンロール族とトラブルになり、通りかかった警官・大瀬六郎戸塚純貴)が割って入るが久部は傷だらけに。
・パトラがストレッチ中に肉離れを起こしてしまう。
・パトラの負担を減らすために芝居の設定やセットを大幅に変更することになり、セリフのアンチョコを張り付けていたセットを撤去されて劇場支配人・浅野大門野添義弘)は大弱り。
・パトラが怪我し、モネはまだ帰ってこず、彗星フォルモン西村瑞樹)は弁当が2種類あったら両方食べたくなると荒れていて、トラブル続きに久部はイライラするがその都度最善の指示を出す。
・冷静沈着な舞台監督・伴工作野間口徹)や蓬莱のサポートのおかげもあって、劇場はようやく開場時間の18時半を迎えた。
・WS劇場の外には入場待ちの行列ができ、フレ長野里美)は喜ぶが、うる爺は緊張する。
・昔から本番に弱いうる爺は舞台に上がれないと言うが、久部はうる爺が出ないならスナック「ペログリーズ」のウェイター・ケントちゃん松田慎也)に台本を持たせて代役をやってもらうと告げる。
・「どんなことがあっても芝居は中止にしない、僕はそのためにここにいるんだ」という久部の強い決意を聞き、うる爺は覚悟を決めた。
・客席には、ジャズ喫茶「テンペスト」の風呂須太郎小林薫)と仮歯ひょうろく)、樹里、大瀬、黒崎小澤雄太)とトンちゃん(富田望生)や劇団員たち、案内所のおばば(菊地凛子) 、変装した論平、劇場オーナーのジェシー才賀シルビア・グラブ)などが続々と入って来るが、久部は満席にしたいと言いロックンロール族を招待した。
・ステージでは、普段やる気のないもぎりと思われていた毛利里奈福井夏)が躍って場をつないでくれていた。
・何度も劇場の前に姿を現していた怪しい老人を昼間は追い払ったフレだったが、最後には無料で客席に入れる。
・劇団クベシアターの開幕。

もうすぐ開場、というタイミングでトラブル続出です。
パトラはダンサー時代も何度も肉離れを起こしているんですね。
ただ今回の怪我はもしかすると、お祓いで名前を読み上げられなかったことが原因なのでしょうか?
「人の体より大事な舞台なんてないんです」と、まずはパトラのことを第一に考えた久部は立派です。
トニーに病院へ連れて行ってもらって診断の結果なんとか出演できることになりましたが、パトラの負担を少しでも軽くするために設定やセットやセリフを変更することになりました。
それで、セットにカンニング用のセリフを張り付けていた大門は困ってしまいます。
モネは、明日の運動会に朝雄が使う紅白帽を買いに出て行ってしまうし、フォルモンは弁当が2種類あって選べないと贅沢な文句をつけるし。
おまけに、うる爺は入場待ちの観客を見て緊張で舞台に上がれないと言い出す始末。
でも、モネはなんとか間に合いましたし、フォルモンへは久部が自分の弁当を与えて落ち着かせました。
うる爺には、セリフをまったく覚えていないケントちゃんに台本を持たせて読ませてでも幕を上げるときっぱり言います。
久部の誇りと覚悟が伝わり、うる爺も腹を決めました。
久部が満席にしたいとロックンロール族を呼びに行っている間、開幕までの場つなぎをしてくれたのは里奈です。
里奈はいつももぎりの仕事が終わった後原宿で踊っていたんですね。
「初日の演出家ってやることがないんだ」と言っていたのが嘘のように久部はあれこれ対応を迫られますが、なんとか開演にこぎつけることができました。

・終焉後、客席で弁当を食べるリカとモネの視線の先には、肩を落とした久部が。
・リカは劇場内にまだ残っている老人を見つける。
・うる爺は緊張のあまり頭が真っ白になり15分も郡上踊りを続け、リカはジェシーの入れ知恵でスリラーを踊り、他にもアクシデントがあって、悪ふざけのような芝居だったと落ち込む久部。
・素人を集めて芝居なんてできるわけがなかった、一番演劇をなめていたのは僕だったと久部。
・ジェシーはシェイクスピアに必要なポエムがなかったと酷評。
・客席は埋まったが招待客が多かったため売り上げは芳しくなく劇場を続けるためには毎週120万円は稼がなければならないと大門が話すと、久部は客を呼ぶために一番効果的なのは口コミだと言う。
・案内所でおばばに愚痴を聞いてもらっていると、黒崎と記者が入って来て久部は慌てて隠れる。
・2人は劇団クベシアターの芝居をゴミみたいだったとこき下ろす。
・劇場のホールで肩を落としている久部のところへリカが老人を連れてきた。
・ステージに上がった老人を見て久部が驚愕、彼は日本を代表するシェイクスピア俳優・是尾礼三郎浅野和之)だった。

クベ版「夏の夜の夢」初日が終わりました。
うなだれた久部の様子を見ると、どうやらうまくいかなかったようです。
うる爺は緊張して15分も勝手に踊り続けるし、リカはジェシーに言われるがままスリラーを踊るし、その他にも何かアクシデントがあったようで、久部が目指す芝居とは天と地ほども違う“悪ふざけ”のようなものだったと。
ジェシーからも、黒崎と記者からも、散々な酷評でした。
「全ては僕のミスです。素人を集めて芝居なんてできるわけない、一番演劇をなめていたのは僕だった」と、責任を負う久部はやはり立派です。
ただ、観客の中には心に響いた人もいたようですね。
劇場を出た樹里の目にはうっすら涙が浮かび、ネオンを見上げる顔はこれまで見たことのない表情をしていました。
そして、フレが無料で見せてあげた老人も、わざわざ演出家に会いたいと劇場に残っていたのです。
その老人こそが、大御所俳優の是尾礼三郎。
彼の登場は久部にどんな影響を及ぼすのか。
最低の評判から始まった劇団クベシアター、ここからどう巻き返していくのか楽しみです。

5話のネタバレ感想記事はこちら↓

6話「やめてやる今夜」

放送日:11月5日(水)22:00~22:54

6話のあらすじ

クベ版「夏の夜の夢」初日公演を終えたばかりのWS劇場の客席。
思うような公演ができずに落ち込む演出家・久部三成(菅田将暉)のもとへ倖田リカ(二階堂ふみ)がひとりの観客を連れてくる。
彼は、日本を代表するシェイクスピア俳優・是尾礼三郎(浅野和之)だった。
是尾は、久部が敬愛してやまない蜷川幸雄氏が演出した舞台にも数々出演している大御所俳優で、久部は対面に深く感激する。
久しぶりに渋谷を歩いていてWS劇場の前を通りかかったという是尾は、クベ版「夏の夜の夢」に一定の評価を示した。
是尾の言葉に舞い上がった久部は是尾を打ち上げ会場へ連れて行く。
蓬莱省吾(神木隆之介)は江頭樹里(浜辺美波)を打ち上げに誘うが、樹里の目には久部しか映っていない様子。
そして、打ち上げ会場では久部を見る目が変わったリカが待っていた。

6話のネタバレ

「落ちていくものにあまり追い討ちをかけなさるな!」 ヘンリー八世
・クベ版「夏の夜の夢」の初日終了後、思うような公演ができずに落ち込んでいる久部三成菅田将暉)のもとへ倖田リカ二階堂ふみ)がひとりの観客を連れてくる。
・彼は、日本を代表するシェイクスピア俳優・是尾礼三郎浅野和之)だった。
・是尾はクベ版「夏の夜の夢」について一定の評価を示し、感激した久部は打ち上げに彼を誘う。
・公演で失態を演じたうる爺井上順)は心から反省し、ケント松田慎也)を相手に必死で稽古していた。
蓬莱省吾神木隆之介)は久部にうる爺を降板させないよう頼むが、久部はボトムはうる爺の役だと明言、蓬莱はそれをうる爺に伝える。
江頭樹里浜辺美波)は公演を観て感動し久部に感想を話そうとするが、久部は是尾を連れて打ち上げ会場のテンペストへ向かう途中だったので、樹里を蓬莱に預けて待っていてもらう。

クベ版「夏の夜の夢」の初日公演は、トラブルや役者の暴走で散々な出来になってしまい、久部は絶望の淵にいました。
しかし、久部が敬愛してやまない蜷川幸雄氏が演出した舞台にも出演した大御所俳優・是尾礼三郎がやって来て、ある程度の評価をしてくれます。
久部は大感激。
久部は、是尾がセットの巨大蚊取り線香に言及するとスタッフのアイディアだと言い訳し、発想を褒められると即座に自分が考えたと言う変わり身の早さ。
とにもかくにも是尾のおかげで久部は立ち直ることができました。
一方で、毛脛モネ秋元才加の息子・朝雄佐藤大空)が、リカに盆踊りとマイケルが面白かったと言っていたことは興味深いですね。
久部自身は、うる爺の盆踊りとリカのスリラーが舞台を壊したと思っているのに皮肉なものです。
そのうる爺は、アドリブに逃げずに台本通り演じようと必死で稽古していました。
久部が「ボトムをやれるのはうる爺しかいない」と言っていたと蓬莱が伝えると、うる爺は大感激して稽古にますます熱が入ります。

・久部の挨拶で初日打ち上げが始まり、スペシャルゲストとして是尾礼三郎が紹介された。
・八分坂のベンチで久部を待つ樹里と蓬莱。
・打ち上げを盛り上げる彗星フォルモン西村瑞樹)と自分の在り方に思い悩む王子はるお大水洋介)。
・リカに前の劇団を辞めた理由を聞かれて、観客に迎合して笑いを入れるやり方が許せなかったと話す久部。
・今日、それよりもふざけた芝居を昔の仲間たちに見せることになってしまい悔しがる久部。
・久部が樹里たちの元へ来て、蓬莱を先にテンペストへ行かせ、樹里の感想を聞く。
・久部は不本意な出来だった公演を樹里から褒められて複雑な思いだったが、打ち上げに誘った。
・樹里は喜び、一度帰宅して父の論平(坂東彌十郎)を連れて打ち上げに参加する。

久部はテンペストに是尾を連れて行く間、樹里を蓬莱に任せて待っていてもらいました。
久部が戻って来るのを八分坂の通りで待つ2人。
久部のことを聞きたい樹里と自分をアピールしたい蓬莱の会話が切なかったですね。
樹里を待たせていることを思い出した久部は店を飛び出そうとしますが、リカに引き留められ、前の劇団を辞めた理由を聞かれて方向性の違いだったと説明します。
前の劇団は観客に迎合してシェイクスピアを軽んじ、くだらない笑いを入れたのが許せなかった、ところが今日自分の劇団はもっとふざけたことをやりそれを昔の仲間に見られてしまったと悔しがります。
それを聞いたリカは、久部が目指す芝居はこの八分坂の客たちは求めていない、まずは客を呼ぶことが大事であり、本当にやりたいことはそれまでとっておくようにと告げました。
本当にやりたいことと観客を楽しませることにズレがあるのは、エンタメの命題のひとつなのでしょうか。
初日公演は久部にとって到底納得できないものでしたが、ひとりの観客である樹里の心を大きく揺さぶりました。
ノートに細かく感想を書き留めるほど感動したのです。
これまでツンツンしていた顔しか見せていなかった樹里は、「夏の夜の夢」の感想を語る時、本当に幸せそうで瑞々しい表情でした。
しかし、樹里の感動の言葉は、久部の心を動かさなかった。
樹里が演劇もシェイクスピアもよく知らない人物だからでしょうか。
でも演劇人として、そういう観客の感想をこそ本当は大事にしなくてはならないのでは。
あんなのはシェイクスピアではないと言われて傷ついた顔をする樹里でしたが、久部のおかげでこの街が変わっていく期待を語ります。
「見てよかったです」と感謝を伝える樹里に「君は幸せな人だな」と言う久部。
でも、人を幸せにできる芝居を作ったことの意味を、久部はもう一度考えてほしいです。
意地を捨てて。

・やはりこの街でやっていこうと父に伝え、樹里は父とともに打ち上げ会場のテンペストへ行く。
・久部は伴工作野間口徹)に呼ばれてうる爺の稽古を見に行く。
・樹里に感想を聞いたリカが樹里の言葉尻をとらえて絡み出し、いつか戯曲通りの「夏の夜の夢」も観てみたいという樹里に、演劇は祝祭劇だから今日の舞台が正しいのだと冷たく告げる。
ジェシー才賀シルビア・グラブ)がやって来て打ち上げの費用は自分が持つと言う。
毛利里奈福井夏)の歌に続いて大瀬六郎戸塚純貴)がうる爺のマネをして盛り上がっているところへ、うる爺とケントがやって来る。
・うる爺は自分は役を降ろされて代わりに大瀬がやることになったのだと思い違いをして出て行く。
・手分けして探すが見つからない。
・いつの間にか是尾は店から姿を消していた。
・うる爺がバイクにはねられて病院に運ばれたことがわかった。
・ジェシーは久部にみんなの人生を狂わせていると言いお芝居ごっこはおしまいと告げる。
風呂須太郎小林薫)はみんな大人なんだから自分の人生を自分で生きているだけ、久部が背負い込むことじゃない、劇団っていうのはそういうもんですよ、と言う。
・ジェシーを表まで見送ったリカが煙草を吸っていると、劇場前にいたトロ生田斗真)が笑顔でやって来た。
・久部は案内所のおばば(菊地凛子) に「劇団は解散だ」と思いをぶちまける。
仮歯ひょうろく)が、うる爺は命に別状はなく両足を骨折して全治2か月、と知らせに来ると、おばばは「それまでは休演だわ」と言う。
・案内所を出た久部が思案に暮れ、ふと顔を上げると、道路工事の現場で働く是尾を見つけた。

自分の感想が久部に受け入れてもらえずに傷ついた樹里でしたが、打ち上げに誘ってもらって嬉しそうでした。
しかし、打ち上げ会場でリカに絡まれ「もう少し勉強なさい」とまで言われて、我慢できずに父を連れて帰ってしまいます。
せっかくこの街でやっていこうと思ったのに、「やっぱりこの街出て行こう!」と。
ふくらんだ気持ちを一気にぺしゃんこにされてしまったのですね。
初日を終えたリカが久部の演劇への想いを尋ねたり、樹里にきつく当たったりしたのはなぜでしょうか。
実際に舞台に立ってみて、演出家の久部に興味を持ち始めたのか、あるいは久部自身に好意を持ったのか。
それとも、リカの過去に何か関係しているのでしょうか。
リカは、クラシックバレエの素養があり、日頃から日本文学を読み、ついこの前までストリップダンサーとしてステージに立っていた人です。
おまけに何やら因縁のありそうな怪しい男性まで現れました。
リカの過去が解き明かされることはあるのでしょうか。
さて、うる爺の誤解とその後の事故は本当に悲しい出来事でした。
うる爺の誤解が解け、一日も早く回復することを祈るばかりです。
さて、劇団の公演はどうなるのでしょうか。
このタイミングで、是尾の現在の状況が明らかになりました。
是尾礼三郎がWS劇場にやって来て、わざわざ久部に「夏の夜の夢」の感想を伝えたのは目的があったのでしょうね。
是尾を有名な俳優と知っていたのは、久部と蓬莱、そしてジェシーと風呂須でした。
その中で是尾と面識があったのが風呂須です。
「ご無沙汰しています」と是尾に挨拶していましたね。
テンペストのマスター、風呂須太郎は何者なのでしょう。

7話「コンビ解散だ」

放送日:11月12日(水)22:00~22:54

7話のあらすじ

久部三成(菅田将暉)率いる劇団クベシアターは、大御所俳優・是尾礼三郎(浅野和之)を迎えて稽古する日々を送っていた。
「夏の夜の夢」の初日公演から1週間が経ったが観客は思わしくなく、売り上げは目標の半分にも満たない状況。
しかし久部は来週からシェイクスピア後期の名作「冬物語」を上演すると息巻いていた。
支配人・浅野大門(野添義弘)の妻・フレ(長野里美)は、売上金を持って田舎へ帰ろうと言うのだが、大門は「是尾礼三郎の復活は演劇界にとっても大ニュースです」と熱弁する久部にもう一度賭けてみることを決意する。
翌日の朝、訪れたオーナーのジェシー才賀(シルビア・グラブ)に大門は「今週の売り上げです」と封筒を差し出すが、実はそこには小細工があった。

7話のネタバレ

「私をかつての私だと思ってはいけない」 ヘンリー四世
久部三成菅田将暉)率いる劇団クベシアターは、交通事故で入院してしまったうる爺井上順)の代わりに是尾礼三郎浅野和之)に参加を依頼することに。
・シェイクスピア後期の名作「冬物語」であれば出演するという是尾の条件を飲んだ久部は、上演用の台本を執筆。劇団の人々は、昼は「冬物語」の稽古、夜は「夏の夜の夢」の本番という怒涛の1週間を送った。
・オーナーのジェシー才賀シルビア・グラブ)は劇団に週120万円のノルマを課したが、「夏の夜の夢」の観客数は思うように伸びず売り上げは51万6千円だった。
・支配人・浅野大門野添義弘)の妻・フレ長野里美)は、売上金を持って田舎に帰ろうと言うが、大門は「是尾礼三郎の復活は演劇界にとっても大ニュースです!」と熱弁する久部に賭けることにし、“赤糸威本大札大鎧”を売ってジェシーへ渡す金を工面する。
・しかし、ジェシーはすべてお見通しで、“赤糸威本大札大鎧”を購入し、乱士郎佳久創)に着せていた。
・「冬物語」初日、久部はアルコール中毒の疑いがある是尾を見張るようにケント松田慎也)に言うが、是尾は脱走して酒を飲み泥酔してしまう。
・久部や蓬莱省吾神木隆之介)はあわてるが、舞台に立った是尾は見事な演技を見せ、久部は感動。

久部は「夏の夜の夢」の演出家でありパック役、さらにはうる爺の代わりにボトム役も演じることになり、「冬物語」の台本も執筆するという忙しさ。
しかし久部の奮闘虚しく、観客動員数は伸び悩んでいました。
大門が売りはらった“赤糸威本大札大鎧”を乱士郎が着ているシーンは面白かったですね。
『鎌倉殿の13人』で、佳久創さんは武蔵坊弁慶を演じ、菅田将暉さんは源義経、シルビア・グラブさんは藤原兼子でした。
シェイクスピア俳優・是尾礼三郎を迎えれば話題性もあるのではと期待しましたが、それ以降も思うようにはなりません。
舞台に上がれば流石の芝居を見せる是尾ですが、アルコール依存症という不安を抱えています。
ジェシーからは、毎週120万円の売り上げがなければ劇場をノーパンしゃぶしゃぶの店にしてしまうと言われており、劇団クベシアターの船出はなかなかに困難なようです。

彗星フォルモン西村瑞樹)がテレビの仕事が決まった前祝いにおごると言って一同を焼肉に誘う。
パトラ鈴木アン ミカ)や毛脛モネ秋元才加)は喜ぶが、倖田リカ二階堂ふみ)は客と約束があると出かけていく。
・ところが、テレビの仕事が決まったのはフォルモンの相方・王子はるお大水洋介)だけだった。舞台のはるおを見たテレビ局のプロデューサー(新納慎也)が、番組のレギュラーに抜擢したのだ。
・ジャズ喫茶「テンペスト」で話しているはるおたちから少し離れた席で、劇団を手伝うことになった江頭樹里浜辺美波)が上演時間を短くするために台本でカットできる部分を検討していた。
・店に入って来たリカは樹里のそばの席に。
・久部がやって来て、リカをちらちらと気にしながら、樹里と台本の相談を始める。
・樹里はキャラクター自体をカットするよう大胆な提案をするが、リカはその案を完全に却下し、1週間前と同様樹里に「もっと勉強なさい」とクールに言う。
・危険な雰囲気の男・トロ生田斗真)がリカを迎えにやって来て2人で出ていくのを見て、久部は激しく動揺する。トロは、マスター・風呂須太郎小林薫)とも古い知り合いの様子。

樹里は、演出助手の助手の助手として、劇団を手伝うようになっていました。
上演時間を短縮するために台本を削る修正案を久部に出していたのですが、居合わせたリカからは全否定され、肝心の久部はリカとトロの関係に気もそぞろで樹里に向き合ってくれません。
切ないですね。
しかしその樹里も、自分のことを見てくれている蓬莱の気持ちには気づきません。
天津甘栗のお店の営業時間を聞いて蓬莱が教えてくれてもお礼も言わずにスタスタと行ってしまいます。
それだけ傷ついているから、なんでしょうね。

・久部はプロデューサーを見送ったはるおに声をかけるが、彼は苦悩していた。
・大きな仕事は「コントオブキングス」のコンビにではなく、はるお個人へのオファーで、その仕事を受けるとなるとコンビは解散ということになる。
・久部ははるおの新たな道を応援するが、「冬物語」を降板すると聞くと態度が一変して反対する。しかしプロデューサーから150万円の前金を受け取ったと言われると再び話を受けるように言うのだった。
・前金はお世話になったフォルモンに渡したいとはるおが言うと、久部は自分から渡すと言って150万円を強引に預かり、案内所のおばば菊地凛子)に保管してもらう。
・その頃、八分神社にはリカとトロが賽銭箱の前でキスを交わしていた。2人を目撃した樹里は思わず物陰に隠れるが、そこにやって来た父・論平坂東彌十郎)に気づくと必死に追い払った。

同じ舞台に出ていたのに、コンビの一方だけに仕事が決まり、それを機に解散になってしまうという流れ、残酷ですが現実にも見る風景です。
「コントオブキングス」のはるおは、常に先輩のフォルモンを立ててきましたが、舞台で目を引くのははるおのほうで、業界からも評価が高いのですね。
有名なコメディアンの息子という血筋もあるのかもしれません。
テレビ局のプロデューサーから帯番組のレギュラーの話をもらったはるおは、果たしてフォルモンを差し置いて自分だけ出世してもよいのかと苦悩します。
しかもその仕事を受けるならコンビは解散だと事務所は判断しました。
断ったほうが良かったかと悩むはるおに、久部は「自分の幸せを掴むのに何の遠慮がいる?」と、背中を押します。
しかし、はるおが「冬物語」も降板することになると言うと、自分だけ幸せになれればいいのか、と態度を一変。
ところが、はるおがプロデューサーから前金150万円をもらったと聞き、再び話を受けるように背中を押す久部。
二転三転する発言に、会話を聞いていたテンペストの店員・仮歯ひょうろく)あきれた様子です。
久保は基本的には、はるおの新たな道を応援したいのでしょうね。
ただ、劇団を守ることを何よりも優先したいことから、矛盾だらけの発言をしてしまいます、

・テンペストで久部とはるおの会話を聞いていた警官・大瀬六郎戸塚純貴)が、そのことをフォルモンをはじめとする劇団員たちに伝えてしまう。
・フォルモンは自分に話をしに来ないはるおに対して怒りや悲しみを抱く。
・久部はフォルモンに、はるおから感謝の気持ちを込めた金を預かっていると伝えるが、その額を5万円と言い、かえって怒らせてしまう。
・部屋で自分の荷物をまとめているはるおに、蓬莱は励ましの言葉をかけるが、はるおは久部が金を着服しないか信じられないので、確認して欲しいと頼む。
・はるおが劇団の皆に挨拶をしていると、そこへフォルモンがやって来て2人は顔を合わせてしまう。
・はるおの父であり人気コメディアンのポニー田中堺正章)が高級車ではるおを迎えに来て、八分坂は大騒ぎに。

口が軽い大瀬のせいで、フォルモンははるおのことを知ってしまいます。
せめて本人から直接話を聴きたかった、それが一番悔しいのでしょうね。
情がないと嘆くフォルモンに、それは違うと久部ははるおから預かっているお金の話をしますが、その額を5万円と告げて、一層怒らせてしまいました。
一方蓬莱は、親身になってはるおを励まします。
蓬莱の人間性が伝わってきますね。
はるおは、フォルモンに渡すように預けた金を久部が着服しないか確認してほしいと蓬莱に頼みました。
久部を信じていないのですね。
はるおは、劇団の皆から祝福され、「ここで学んだことは一生の宝です」とお礼を言います。
そこへ、フォルモンがやって来ました。

・フォルモンははるおに笑顔で、いつか前説で自分も番組に呼んでくれと握手を求めるが、はるおは冷たく「どいてもらっていいですか」と告げて父の車に乗る。
・うずくまってしまうフォルモンと、車の中で嗚咽するはるお。
・公演のはるおの代役に大瀬が名乗りを上げ、パトラはコントオブキングスの相方も大瀬にやってもらえばと言うが、フォルモンははるお以上の相棒はいないと呟く。
・はるおがもらった150万円を、来週分の売上金の保険として大門に渡す久部。
・その様子を廊下から聞いていた蓬莱は、こんなことをいつまで続けるんですかと久部に訴えて去る。
・打ちひしがれた久部に聞こえたのは、ステージでひとり稽古をするトニー安藤市原隼人)の声だった。
・久部はトニーに演技指導を始め、久部に導かれてトニーの芝居が繊細に、豊かに磨かれていく。

怒りや悔しさ、寂しさ、悲しみを押し隠して笑顔で(でも目は笑わずに)手を差し出すフォルモン。
その手を取ることなく冷たい言葉を残して去っていくはるお。
シェイクスピアの「ヘンリー四世」でハル王子が即位した時、それまで放蕩仲間だったフォルスタッフを冷たく突き放し追放しますが、まさにその場面を、大水洋介さんと西村瑞樹さんが見せてくれました。
素晴らしかったです。
フォルモンは心置きなくはるおを旅立たせたかったし、はるおは自分を憎んででもフォルモンに前へ進んでほしいと願ったのでしょうね。
「はるお以上の相棒はいねえよ」
胸に沁みました。
さて、久部は、はるおの背中を押そうとしたりとどまらせようとしたり再度背中を押そうとしたり、態度を二転三転させた挙げ句の果て、はるおがもらった前金を着服して、売り上げが足りない時に使ってほしいと大門に渡してしまいました。
すべてを察した蓬莱は、劇団が立ち行かないことはわかっているはず、こんなことをいつまで続けるんですかと真剣に告げて去っていきます。
久部と劇団を心から思うからこその進言です。
蓬莱の言葉に落ち込んで頭を抱える久部の耳に、トニーが稽古する声が聞こえてきました。
演出家・久部のスイッチが入ります。
熱のこもった指導に応えるように、トニーのセリフに命が吹き込まれました。
「花の女神、フローラだ」

8話「八分坂の対決」

放送日:11月19日(水)22:00~22:54

8話のあらすじ

WS劇場では、演出家・久部三成(菅田将暉)によるシェイクスピア劇「冬物語」が上演されている。
八分神社の巫女・江頭樹里(浜辺美波)は芝居を見ながら懸命にメモを取っていた。
隣の席の父・論平(坂東彌十郎)から「芝居に集中出来ねえだろ」と言われても、カット出来る箇所を必死にチェックしている樹里は聞く耳を持たない。
久部に惹かれ始めている樹里は久部のためなら何でもやる覚悟なのだ。
既に台本はかなりブラッシュアップされていて、出番を全カットされたおばば(菊地凛子)は客席で恨み事を言っている。
舞台上で芝居している是尾礼三郎(浅野和之)とケントちゃん(松田慎也)に、突如、客席から「下手くそ!」とヤジが飛んだ。
客席から叫んだのはリカ(二階堂ふみ)の元情夫・トロ(生田斗真)だった。

8話のネタバレ

「そうか、そんなにいちゃつくのか!」 トロイラスとクレシダ
・WS劇場では、久部三成菅田将暉)率いる劇団クベシアターによるシェイクスピア劇「冬物語」が上演されている。
・客席では八分神社の神主・江頭論平坂東彌十郎)の隣で、娘の樹里浜辺美波)が台本でカットできるところを探すためにメモをとっていた。
是尾礼三郎浅野和之)とケントちゃん松田慎也)が芝居している時、客席からトロ生田斗真)の「へたくそ~」などというヤジが飛び、是尾は動揺するが芝居を続ける。
・舞台袖からパトラ鈴木アン ミカ)、毛脛モネ秋元才加)、彗星フォルモン西村瑞樹)、伴工作野間口徹)がその様子を見て、ヤジを飛ばしているのが倖田リカ二階堂ふみ)の元に最近戻って来た情夫のトロであることに気づく。
・あまりに酷いヤジにフォルモンが袖から飛び出して一喝すると、トロはおとなしくなった。
・一方、事務所では久部と演出助手・蓬莱省吾神木隆之介)、劇場支配人・浅野大門野添義弘)と妻・フレ長野里美)が、オーナーのジェシー才賀シルビア・グラブ)に公演について報告していた。
・ジェシーは、客が増えないのは上演時間が長過ぎるからだと指摘し、現状の90分から45分に短縮、1日2回公演から6回公演にしようと無茶を言い、久部を困らせる。
・久部が出番のために部屋を出た後、ジェシーは蓬莱に、「ハムレット」や「ロミオとジュリエット」のような有名な作品をやったほうが客は呼べると言うが、蓬莱は、久部が主演を是尾で考えているのでそれはできないと言うのだった。

樹里は久部に頼まれて健気に台本の直しの手伝いをしているというのに、肝心の久部は、怪しげな男・トロとリカの関係が気になって仕方ありません。
長年WS劇場で長年働いてきたパトラ、モネ、フォルモン、伴は、トロがリカの元情夫であることを知っていて、知らないのは久部だけ。
「冬物語」の公演は是尾の名演を中心に劇団員たちも頑張っているようですが、客足は今一つです。
単純に観客を増やせば良いのなら、ジェシーが言うように、シェイクスピアの中でもなじみ深い作品を選んだり、1日何公演も上演すれば良いのでしょうが、是尾を中心に考えると若い主人公の作品はできませんし、久部は劇団員たちの体力と芝居のクオリティを守りたいのです。
ジェシーはシビアな視点で、久部がいなくても蓬莱がいれば何とかなるのではと言い出し、蓬莱を不安にさせます。
劇団の行く末は決して明るくないのですね。

・劇団を去った王子はるお大水洋介)の代役を担うことになった大瀬六郎戸塚純貴)の初舞台は見事なもので、歌も演技も華があり観客を喜ばせる。
・終演後、モネが、劇場のピンチを救ってくれた大瀬に礼を言う。
・モネの息子の朝雄佐藤大空)は大瀬のピストルに興味津々だがモネに怒られる。
・学校へ行きたくないとごねる朝雄に、伴がお手製のピストルのおもちゃをプレゼントしてくれた。
・ヤジに傷ついた是尾を励ますため、久部と蓬莱は演技の講義をしてほしいと頼み、初めは断った是尾だったが夜公演の後に演技実習をすることを引き受ける。
・久部は、伴からヤジを飛ばしていたのがリカの関係者であるトロだと告げられ、2人の関係を察知して落ち込んでしまった。
・樹里と蓬莱と台本の打ち合わせをしていても集中できない久部に、樹里はリカとトロが2人で出かけたと教えたため、久部は出て行ってしまう。

大瀬には演劇の才能があるのですね。
歌ったり芝居したりする姿は堂に入っていました。
いつもは冷たくあしらうモネも、今回ばかりは大瀬に感謝します。
しかし、劇団員と警察官の二刀流で大瀬は楽しそうですね。
一方、相方のはるおを失ったフォルモンは寂しそうです。
さて、有能な劇場スタッフの伴は手先も器用で、朝雄のためにピストルのおもちゃを作ってくれました。
学校よりも劇場のほうが面白いよな、と朝雄に言う伴は心優しいですね。
ところで朝雄が学校へ行きたがらない理由は何でしょう。
もしかしたら聡明な朝雄には、授業が簡単すぎてつまらないのかもしれませんね。
さて、久部が思いを寄せるリカはトロとよりを戻しそうで、久部は台本の直しに集中できないでいます。
久部を好きになってしまった樹里はそんな久部の様子にイライラしています。
そして、そんな樹里にひと目惚れした蓬莱もきっと傷ついているのでしょう。
それぞれの想いはこの先どこへ着地するのでしょうか。.

・リカとトロはジャズ喫茶「テンペスト」にいた。
・リカが新宿・歌舞伎町の風俗店で働けば、トロは120万円受け取ることができて殺されずに済むのだという。
・リカは自分は本気で役者としてやっていきたくなってきたのだと伝えるが、トロは口説き文句を告げて出て行く。
・カウンターの影に隠れていた久部は、トロが去ったと思いリカのところへ駆け寄り、あの男は怪しすぎるしリカがいなくなっては公演は中止になってしまうと訴えるが、リカは自分の人生だからと言って出て行く。
・マスターの風呂須太郎小林薫)にあの男はどういうつもりなんだと怒りをぶつけると、カウンターの影から立ち去ったと思ったトロが出てきた。
・リカを風俗店に売るなんて絶対にダメだと叫ぶ久部の顔に、トロはナイフを突きつけて脅し、別の役者を探すんだなと笑って出て行く。
・リカが案内所のおばば菊地凛子)に相談すると、おばばは、歌舞伎町に行ったら二度と戻ってこられないよと強い語調で告げる。
・リカは、いつもスタンド花を贈ってくれるのが論平だと知り、八分神社を訪れて論平に力を貸してほしいと頼む。
・家宝の七福神を持ち出した論平は樹里に見られて咎められるが「行かねばならんのだ」と出て行く。
・WS劇場では是尾が演技の講義をしていて、「演じることで一番大事なのは、自分を信じる心だ」と言い、子猫とたわむれる様子を実演して、劇団員や久部を感動させた。
・久部のところへ樹里がやって来て、父がリカを救うために七福神をトロに渡しに行った話をし、久部にリカを助けてあげてほしいと言う。

いつの間にか、リカは本気で役者の道を進みたいと思うようになっていました。
久部に認められたことも大きかったのだと思います。
それなのに昔の男がやって来て、自分を風俗店に売ろうとしている。
そこで、スタンド花の送り主を調べて論平だとわかると彼に助けを求めるのがリカらしいですね。
頼られて嬉しい論平は、家宝を持ち出してトロに渡そうとします。
そんな父を見て、やっていることはめちゃめちゃだけどなんだかカッコよかったという樹里。
樹里は自分にキツく当たるリカを苦手に思いながらも、120万円で売られてしまうのはおかしい、なんとかしてあげてくださいと久部に詰め寄ります。
樹里こそカッコいい女性だと思います。

・久部は大瀬の荷物を物色し、座布団の下にあった拳銃を見つけて持ち出すが、それを朝雄が見ていた。
・テンペストで論平はリカとともにトロに会い、売れば120万円はするという七福神を渡す。
・すると久部が拳銃を持ってやって来て、ナイフを取り出したトロと向き合った。
・どうせおもちゃだろと余裕のトロに、久部が劇団の中に警察官がいるのだと銃口を向けるとトロの顔色が変わる。
・そこへ蓬莱がやって来てそれは伴が作ったおもちゃだと耳打ちしたので衝撃を受ける久部。
・しかし、おもちゃとわかった上で拳銃をトロに向け、血走った目で迫っていく久部にトロは恐怖におののきナイフを手放した。
・久部は「おもちゃでした」と言い、芝居に大事なのは自分を信じる心だと告げると、トロはそのまま振り返らずに出て行く。
・優秀な役者を手放したくなかっただけと言う久部に、嬉しそうに寄り添うリカ。
・論平はいずれまた必要になるかもしれないと言って家宝の七福神を久部とリカに差し出し、久部はありがたく大門に預ける。
・後日、久部の古巣の劇団・天上天下では「ハムレット」のフォーティンプラス役のオーディションが行われ、応募者の中に芝居に目覚めたトロの姿があった。

覚悟を決めてリカを救うために立ち上がった久部は、大瀬の脱いだ制服やその周りを物色して拳銃を見つけます。
しかし実はそれは伴が朝雄のために作ったおもちゃでした。
もしも本物の拳銃だったら大変なことになっていたかもしれません。
久部は蓬莱からそれがおもちゃだと伝えられて一度は気持ちがくじけそうになりますが、自分を信じて立ち向かっていき、その気迫でトロに勝ちます。
是尾の教えが脳裏にあったのか、それともリカを絶対に奪われたくない気持ちの強さだったのか。
トロは拳銃ではなく、久部の迫力に負けたことが相当ショックだったのですね。
なんと芝居に目覚めてしまいました。
ただ、オーディションを受けたのが、劇団・天上天下なのが気にかかります。
トロはあの舞台映えするビジュアルと圧倒的な存在感できっと合格することでしょう。
久部の古巣の劇団にトロが入ることは、今後の展開に大きく関わってくるように思います。
一方、蓬莱は久部への信頼がどんどん揺らいでいっていますね。
はるおのお金や論平の七福神で補填して問題を先送りしていても、このままではいずれ劇場は終わりを迎えてしまうでしょう。
それは蓬莱だけでなく久部も身にしみてわかっているはずなのに。
さて、9話は30分延長です。
いよいよ最終章に入っていきますよ。

9話「トニーはまだか」

放送日:11月26日(水)22:00~23:24

9話のあらすじ

演出家の久部三成(菅田将暉)は、思いを寄せる倖田リカ(二階堂ふみ)と深夜のWS劇場に2人きりでいた。
リカを守るために元情夫・トロ(生田斗真)を追い出した勇敢な姿に、リカも少しずつ久部に惹かれ始めていた。
親密な雰囲気が漂う。
久部は、劇場が軌道に乗ったら「ハムレット」を上演するつもりだと語り、ハムレットは久部自身が演じ、その恋人・オフィーリアはリカに演じてほしいと言う。
「演出家の先生に任せるわ」とリカは言い「これからも私たちを引っ張っていって」とささやいた。
2人は手をつないで飲み屋へと向かう。
一方、八分神社の居間では巫女の江頭樹里(浜辺美波)が物思いにふけっていた。
久部とリカの関係が気にかかる樹里を思いやって父の論平(坂東彌十郎)は、「あの二人に恋愛関係はないような気がするなあ」とつぶやくが、樹里の不安は消えない。

9話のネタバレ

「私は夢を見た、アントニーという皇帝がいた」 アントニーとクレオパトラ
倖田リカ二階堂ふみ)を歌舞伎町で働かせようとしていたトロ生田斗真)を撃退した久部三成菅田将暉)は、WS劇場の客席でリカと良い雰囲気で会話している。
・久部の住まいや実家を聞き出すリカ。
・久部は劇団が軌道に乗ったら「ハムレット」をやりたいと夢を語る。
・リカは、久部がWS劇場に来てから何もかもが変わったと話して軽くキスをする。
・八分神社の巫女・江頭樹里浜辺美波)は久部とリカが別れますようにと祈祷する。
・翌日のWS劇場では、ジェシー才賀シルビア・グラブ)がトニー安藤市原隼人)をある“ヤバい取引”に行かせるために貸してほしいという話をする。
・帰りは夜公演の開演時間である19時を過ぎるとのことで久部は断るが、ジェシーは、トニーを貸してくれれば今週分の支払いはチャラにしてもいいと言い出した。
・毎週120万円の工面に苦労している劇場支配人の浅野大門野添義弘)と、ジェシーから翡翠の指輪をもらったフレ長野里美)はジェシーに懐柔され、久部も最終的に了承してトニーを行かせることにする。

久部は最初に会った時からリカに惹かれていましたが、リカのほうは相手にしていませんでした。
しかし、歌舞伎町の風俗店に自分を売ろうとしたトロから必死で守ってくれた久部を見直しているようです。
妖艶なリカの態度に久部は翻弄されっぱなしですが、リカはどこまで本気なのでしょう。
今の住まいや実家の場所を聞き出したのはどんな思惑があるのでしょうか。
実家が小田急線の千歳船橋だと久部が言うと、リカは「意外と近い…」とそっとつぶやいていましたが、どういう意味なのか。
久部はいずれ「ハムレット」をやりたい、その時にはハムレットは自分が演じ、恋人のオフィーリアはリカに演じてほしいと夢を語ります。
久部のおかげで皆が変わった、目標ができたというリカの言葉には嘘はないように感じました。
さて、WS劇場のオーナー・ジェシーが無理難題を言ってきて劇団クベシアターは危機に陥ることになります。
ある取引に箔をつけるためにトニーを連れて行きたいというのです。
役者がそろっていなければ幕は開けられないという久部の訴えはもっともですが、、ジェシーは自分が雇っている従業員なのだから本来断りを入れる必要もないと圧をかけてきます。
その上、今週分の支払いをチャラにしてもいいという言葉には抗えません。
果たして、夜公演までにトニーは帰ってこられるのでしょうか。

・久部は、演出助手の蓬莱省吾神木隆之介)、江頭樹里浜辺美波)、舞台監督の伴工作野間口徹)の3人と、今夜の公演をどうするか話し合う。
・トニーが間に合うかどうかわからないまま幕を開けることに3人は反対するが、久部は今週分の120万円のノルマが免除されるという美味しい話があるためトニーを行かせたい。
・蓬莱が本人の気持ちを聞いてみたらと言う言葉に従って、久部はジャズ喫茶「テンペスト」でトニーと会う。
・トニーは舞台が大事だからと依頼を拒否、久部は本番には間に合うと説明するが、トニーの恋人・パトラ鈴木アン ミカ)は、彼は開演2時間前から是尾礼三郎浅野和之)に教えられたウォーミングアップのメニューを実践しているのだと話す。
・是尾がセリフを吹き込んだカセットテープとラジカセを常に持ち歩いているトニーの情熱に、久部は役者の鑑だと感動するが、劇場の未来のためにはオーナーの言うことを聞くほかない。
・ウォーミングアップ前の瞑想のためトニーが出て行くと、パトラは次の作品で彼をもっと出番の多い役にすることを条件に、説得すると言う。
・トニーは、ジェシーの秘書・乱士郎佳久創)&乱太郎佳久耀)兄弟とともに品川ふ頭の取引場所へタクシーで向かう。
・ジェシーが扱っていた“昆布茶ババロア”による美容詐欺商法を警察が嗅ぎつけたため、マレーシアの裏組織にその商法を売却するという取引だった。
大瀬六郎戸塚純貴)が警官をクビになったことを明るく報告し、一同は驚く。

久部は、どんな時も劇団が第一ですね。
相手の事情を知って心を動かされても、最終的には劇団の存続を一番に考えて動く人です。
トニーがどんなに芝居への熱い情熱を持ち、地道で真摯な努力を重ねているかを知っても、結局ジェシーの言いなりになって取引現場へ行かせてしまいました。
でも、それが結果として公演を危機に陥れることになります。
ただこの展開があったからこそ、トニーのひたむきな想いやパトラの深い愛情が描かれることになりました。
ジェシーは、WS劇場の他にもいくつも遊興施設を経営していますが、怪しい健康法でも儲けようとしていたのですね。
元は役者だったので、いずれは久部の味方になってくれるかと思っていましたがそんなに甘くはないようです。
底知れない人物ですね。

・トニーが帰ってくるまで時間稼ぎをしなければならず、蓬莱はカットしたシーンを復活させることを提案、削ってしまった幕間のおばば(菊地凛子) のシーンを戻そうと樹里が言い久部も同意した。
・開幕前に毛利里奈福井夏)がダンを踊り、是尾はいつもよりもたっぷりと間(ま)をとって重厚に演じ、幕間では“時”に扮したおばばがアドリブも交えて時間稼ぎをする。
・トニーの出演シーンが近づくがまだ戻ってこないため、ケントちゃん松田慎也)のアイデアを採用して、すでに終わったシーンでカットされていた是尾のセリフを回想シーンとして挿入することに。
・さらに、彗星フォルモン西村瑞樹)はパトラに「ついてこい」と言うと、2人でシェイクスピアの四大悲劇をネタに即興の漫才を始めて、客席は大爆笑。
・大瀬と久部の登場シーンでは、アドリブを許された大瀬が刑法をネタに楽しいトークを繰り広げるが、久部はうまく対応できない。
・是尾とケントちゃんのシーンも終わり、舞台上には誰もいなくなってしまった。
・伴が、舞台装置の雪を降らせ始め、蓬莱も小太鼓を鳴らすのを手伝う。

客が楽しんでいる裏側でスタッフや演者たちのギリギリの綱渡りが繰り広げられるシチュエーションは、『王様のレストラン』や映画『ラヂオの時間』などでもお馴染み、三谷幸喜さんの筆が冴えわたります。
とにかくトニーが帰ってくるまでの時間を稼ごうと劇団員もスタッフも必死で頑張る姿が面白く、愛しく、切ないです。
前回まではジェシーの命令で上演時間を短縮するために努力していたのに、今回はなんとか引き延ばしたい。
ゆーーーーっくりと振り向く是尾の姿、最高でした。
追いつめられると皆、思わぬ知恵や才能が出てくるんですね。
おばばは、突然出番をふられたのに、堂々と見応えある“時”を演じましたし、ケントちゃんも抜群のアイデアで場を救ってくれました。
即席のコンビとは思えないくらい息ぴったりの見事な漫才を披露したフォルモンとパトラにはワクワクしました。面白かったです!
当意即妙のアドリブ力で繋いだ大瀬も素晴らしかったですが、久部は立ち尽くすだけで何もできませんでした。
ステージ上で一番力を発揮できなかったのが久部かもしれません。
大瀬を「お見事でした」と称賛した伴が、久部には「そこ立たない」と冷たくあしらったのが象徴的でしたね。
皆ができることを出し切った後、誰もいないステージの間(ま)を持たせるために、伴が咄嗟に場面転換をし雪を降らせ始めたのには感動しましたし、すぐに伴に駆け寄って小太鼓を鳴らした蓬莱も流石でした。
大騒ぎの後に、静かに降り続く雪。
誰かをじっと待っているように。

・樹里が、父・論平坂東彌十郎)にステージへ上がるように促し、論平は覚悟を決めてステージへ進んでいく。
・毎日観劇している論平はセリフを覚えていて、大ファンであるリカの相手役をなんとか務める。
・トニーを乗せたタクシーがようやく到着し、久部は論平に向かって「そいつは偽物だ!」と叫ぶ。
・客席から姿を見せたトニーは圧巻の演技で劇場の空気を一変させ、ようやく芝居は本筋へ戻った。
・ところが、取引現場に警察が踏み込まれたという。
・ジェシーは、取り調べを受けることになった乱太郎に会社やジェシーの名前を出さないように電話で指示を出し、立ち去ってしまう。乱太郎ひとりに全て罪を被せるつもりなのだ。
・終演後、メンバーたちはトニーを労うが、そこへ大門が警察が来たと知らせに来る。トニーは警察に尾行されていたのだ。
・トニーは自首することを決心するが、舞台に穴をあけてしまうことを泣いて詫びる。
・全て自分の責任であると悔やむ久部に、トニーは久部に取引現場で録音したカセットテープを渡した。
・取引と劇場が無関係であると装うため、トニーはストリップを見に来た客という設定にし、一同で芝居を打つ。
・出入り禁止の客として暴れるトニーに、大瀬が警官として飛びかかり、パトラが平手打ちをする。
・劇団員たちの迫真の演技に久部は「みんないい芝居するなあ」と胸打たれた。
・トニーは連行され、残ったメンバーそれぞれが複雑な思いを抱える中、樹里が久部にテンペストで待っている客がいると知らせに来る。
・テンペストにいたのは客席で芝居を観ていたニット帽の男で、久部が心酔している高名な演出家・蜷川幸雄小栗旬)だった。

論平がステージに上がる展開には、ついに坂東彌十郎さんが舞台の上へ!と胸高鳴りました。
「大和屋!」と大向こうの声が聞こえてきそうでしたね。
論平はリカの相手役ができて嬉しかったのでしょうし、芝居の面白さにも目覚めた様子。
さて、皆が芝居を引き延ばし最後に論平が場を繋いでくれたおかげで、トニーは舞台に登場することができました。
パトラが言っていたように、久部がWS劇場に来たことで一番変わったのはトニーでしょう。
ストリップ劇場の用心棒だった時は、強面で無口で何を考えているかわからない人物でした。
それが、久部がやって来たことで劇団に巻き込まれて芝居を始めることに。
しかし、セリフ合わせはいつも小声で聞き取れず、「やらなきゃだめか?」が口癖でした。
ところが劇団・天上天下とのライサンダー対決で覚醒してからは、稽古熱心で台本をボロボロになるまで読み込み、天上天下の劇団員にまで質問するほど真摯に取り組むようになります。
ずっと見守ってきた視聴者にとって心から応援したい人物になっていたトニーが、ここで劇団から去ってしまうなんて。
劇団・クベシアターの最高の演技を観ることができたのが、終演後のステージの下であったこともやるせないです。
リカはパトラに対して「信じるって気高いことよね」と言っていましたね。
トニーの帰還を心から信じたいと思います。
ところで、このドラマそのものがひとつの舞台なのでは、という声が1話から散見されていましたが、ここへ来てさらに増えてきたようです。
「一度幕を開けたからには何があっても最後までやってもらう。私がやらせる。それが舞台監督の仕事です」という伴の言葉は、演劇界の「The Show Must Go On」という言葉に通じます。
また、「俺みたいな素人はそれくらい(準備を)やらないとお客さんに失礼になるんで」「ひとりでも楽しみにしている客がいるなら休演はよくないです」と言ったトニー。
強い気持ちで開場を宣言した伴。
開演を待つ客たちを見ながら「みんな楽しみにしてる。あの人たちのためにも決して中止にはしない」と涙をぬぐう久部。
「一度幕を開けたからには何があっても最後までやってもらう。私がやらせる。それが舞台監督の仕事です」と静かに強く告げた伴。
何があっても舞台を続けなければならないと自分の全てを出し切って奮闘した劇団員たち。
蓬莱も樹里も里奈もおばばも論平も、皆、本当に格好良かったです。
もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう (もしがく)】演劇は誰のためにあるのか、エンターテインメントは何のためにあるのか、それを届けてくれるドラマだと思います。
次週はFNS歌謡祭のためにお休みになります。
10話の放送は12月10日(水)です!

10話「さらば八分坂」

放送日:12月10日(水)22:00~22:54

10話あらすじ

久部三成(菅田将暉)率いる劇団クベシアターは、トラブル続きの中綱渡りで「冬物語」の上演を終えた。
ジャズ喫茶「テンペスト」で久部を待っていたのは、カリスマ演出家・蜷川幸雄(小栗旬)。
久部は、憧れてやまない演出家からの高い評価と熱い演劇論に大感激。
さらに「とにかく今は、がむしゃらに突き進みなさい」と激励されて震えるほどの感動を味わう。
久部は気づかなかったが、蜷川は、マスターの風呂須太郎(小林薫)とも親しそうに談笑を交わしていた。
深夜のWS劇場で、久部は支配人・浅野大門(野添義弘)と共に、劇場オーナーのジェシー才賀(シルビア・グラブ)と対峙する。
そばに置かれたラジカセからは、逮捕されたトニー(市原隼人)の肉声が流れてきた。

10話ネタバレ

「万歳、やがて王となるお方!」マクベス
トニー安藤市原隼人)の帰りを待つために皆で時間稼ぎをしてなんとか「冬物語」の上演を終えた夜、久部三成菅田将暉)はジャズ喫茶「テンペスト」で蜷川幸雄小栗旬)と対峙していた。
・久部が長年心酔しているカリスマ演出家・蜷川幸雄は、舞台は何が起こるかわからないところが面白い、大切なのはノイズだと言い、裏ではトラブル続きだった「冬物語」を高く評価する。
・蜷川は知り合いにも観劇を勧めると言い「がむしゃらに突き進みなさい」と久部を激励した。
・蜷川は、テンペストのマスター・風呂須太郎小林薫)に懐かしそうに話しかけるが、久部はそれに気づかない。
・久部はWS劇場の事務所で支配人・浅野大門野添義弘)と共に、オーナー・ジェシー才賀シルビア・グラブ)と会う。
・2人は、トニーが残したカセットテープの音声をジェシーに聞かせる。
・それは、トニーが逮捕された事件にジェシーが関わっていたことの証拠になる音声で、久部と大門はテープと引き換えに週120万円の支払いを無しにしてほしいと持ち掛け、ジェシーはあっさりと応じた。
・今後はジェシーが週13万円で劇団クベシアターにWS劇場を貸すという形になる。

まさか、世界のニナガワが登場するとは!
しかも演じるのは、蜷川幸雄さんに薫陶を受けた小栗旬さんでした。
雰囲気がそっくりで、煙草を持った手を頬に当てる姿はまさに在りし日の蜷川幸雄監督です。
久部が蜷川監督に心酔しているのは1話から描かれていましたが、まさにそのカリスマ演出家から直に自分の舞台の感想をもらえる日がくるなんて、久部はどんなに感激したことでしょう。
蜷川監督は、元ストリップ小屋でシェイクスピア劇を上演することを面白がります。
予定調和は罪悪だと言い、トニーが帰ってくるまでの苦肉の策の一つ、彗星フォルモン西村瑞樹)とパトラ鈴木アン ミカ)の漫才をノイズだと褒めてくれました。
大瀬六郎戸塚純貴)のことも、良い目をしていた、彼は伸びますと称賛。
しかし古い付き合いの是尾礼三郎浅野和之)には成長の跡が見えないと言い、途中乱入した江頭論平坂東彌十郎)を「ただの雑音」と酷評します。
実際にもシェークスピア作品に出ている名優・浅野和之さんと、坂東の名跡を継ぐ歌舞伎役者・坂東彌十郎さんを(脚本上とはいえ)褒めさせないところに遊び心を感じます。
是尾以外は役者ではないことを久部が説明すると、「素晴らしい」と絶賛し、「人間はそれぞれ培ってきた人生がある。それを土台にして演劇という新たな身体表現で新しい自分に出会う、その瞬間に僕たちは立ち会うんだ」と語る蜷川監督。
演劇の本質をとらえた言葉ですね。
テンペストのマスター・風呂須は、是尾とも知り合いのようでしたし、蜷川監督とも旧知の仲のようですね。
何者なのでしょうか。
さて、久部や大門をずっと悩ませていた劇場の運営問題は、思わぬ形で解決します。
トニーのおかげですね。
劇団としては、トニーを失ったことは大きな痛手になりましたが。

・案内所のおばば菊地凛子)は久部に対し、やがて小屋主になると予言し、「世界はあなたのもの!」と告げる。
・WS劇場には蜷川から久部と是尾宛てにスタンド花が届き、感動に震える久部。
・大瀬は毛脛モネ秋元才加)にこれから役者としてやっていくと宣言し、告白しようとするがモネはけん制してつき合う可能性はゼロだときっぱり言い、あなたは朝雄佐藤大空)の父親が誰かも知らないし聞いてもこないと告げるのだった。
蓬莱省吾神木隆之介)は、トニーの代わりに舞台に立つことになり憂鬱な表情。
・久部に無理だと抗議したが聞き入れてもらえなかった蓬莱は、江頭樹里浜辺美波)に愚痴をこぼし、うる爺井上順)がいた頃が一番楽しかったと言うと、樹里も「わかる」と共感した。
・久部についていけない時があると話す蓬莱だったが、樹里の励ましに力をもらう。
・久部がリカにおばばの予言の話をすると、リカは「小屋主になっちゃえば」と言い出し、弱みを握って大門を追い出せばいいとけしかける。
・樹里は久部に、今のメンバーで上演できそうなシェイクスピア作品を調べてきたとノートを見せるが、上映作品は自分が決めると突き放されてしまう。
・樹里が伴工作野間口徹)に演出助手について質問する。演出助手は演出家とは異なり、実務的な仕事を行う役割だと聞いて樹里はやってみたいと話す。

蜷川監督は、是尾から案内状をもらったのでWS劇場に足を運んでくれたのですね。
スタンド花も贈ってくれました。
感激で有頂天な久部ですが、メンバーたちはいろいろあるようです。
大瀬はモネを呼び出してプロポーズしようとしますが、モネは告白の言葉を言わせません。
ただ、自分たち親子がどんな苦労をしてきたかも知らないし知ろうともしないでのんきに告白しようとする大瀬に腹が立っているようにも見えます。
一方、逮捕されてしまったトニーの代役には蓬莱が抜擢されました。
大瀬と違って、蓬莱は自信もやる気もまったくありません。
蓬莱は久部の芝居への熱意はよくわかっているものの、たまについていけない時があると樹里に話します。
時に傲慢に物事を進める久部に対して、蓬莱は疑問を持っているようです。
一方的に代役を命じられて不満を持っていた蓬莱ですが、想いを寄せる樹里の励ましで、ようやく舞台に立つ決心をしました。
そんな樹里は久部への想いだけでなく、本当に芝居そのものが面白くなってきたのでしょうね。
減って来てしまった今のメンバーで上演できるシェイクスピア作品を調べてきますが、久部には相手にされません。
それでも、舞台監督の伴に演出助手について質問するなど、とても熱心です。
リカからは巫女に専念するように冷たく言われますが、樹里は自分が本当にやりたいことを見つけたのでしょうね。

・「冬物語」の舞台に立った蓬莱は、極度の緊張でセリフもしどろもどろ。
・エンディングで、出番ではないはずの大瀬が突然登場、モネ演じるハーマイオニに愛の告白をし仕方なくモネもOKして観客たちは大喜びで拍手喝采。
・終演後、モネは卑怯だと大瀬に怒りをぶつけるが、大瀬は朝雄の父親が誰であろうとモネの息子なら自分は朝雄を愛すると誠実に告げる。
・大門はテンペストで劇団員たちに、今後は1日2万円の使用料だけで劇場を使えるようになり、すべてトニーのおかげだと報告。
・大瀬とモネはその場を借りて、2人が交際することになったと皆に報告した。
・さらにフォルモンとパトラは新たにコンビを結成することを報告する。

「表に出るタイプではないから作家になったので」とトニーの代役を拒否する蓬莱に、失敗してもそれもまたノイズだから良いと言う久部。
強引な久部について行けないと思う蓬莱でしたが、樹里の励ましで舞台に上がります。
しかし、自信のなさがそのまま芝居に出てしまい残念な出来栄えでした。
“演技が下手な演技”がとても上手だった神木隆之介さん、流石です。
蓬莱が演技がうまくないというのは大きなポイントでしたね。
大瀬のように役者としての意外な才能を発揮するという展開ではありませんでした。
蓬莱はあくまでも演者ではなく優れた作り手として開花していくのではないでしょうか。
さて、舞台の上で告白した大瀬に、是尾はシェイクスピアへの冒涜だと怒りますが、久部はこれこそがノイズだと喜びます。
観客も自分が観た公演だけに起こった特別な出来事に興奮したのでしょう。
カーテンコールではスタンディングオベーションが起こり、久部は大感激。
一方、モネは、舞台の上という断ることができない状況でプロポーズした大瀬に卑怯よと怒ります。
終演後、役ではなく大瀬自身としてプロポーズさせ、全力で拒絶をするモネ。
でもモネは、大瀬の誠実でひたむきな想いを結局受け入れたんですね。
テンペストに皆が集まり、お金の問題で劇場を閉じる心配がなくなったこと、モネと大瀬の交際報告、さらに、フォルモンとパトラの新コンビ結成と、喜びが重なって大門が乾杯しようとしたところで、それは久部の役割だろうとさりげなくリカが止めました。
大門も賛成して、久部が音頭を取って乾杯するのですが、ここの場面にリカの深謀遠慮を感じます。

・久部は大門を事務所に誘い出し、これまでの売上金はどこへ消えたのか、帳簿と金庫の中身を見せてほしいと話す。
・横領を疑われたと思った大門は驚き激怒するが、久部は大門の妻・フレ長野里美)を問いただす。
・フレの指に輝いている翡翠の指輪はオーナーからもらった物だが、さっきポケットに入れた翡翠のブローチについて久部が聞くと、フレはブローチもオーナーにもらったのだと主張。
・そこへリカとともにジェシーが現れ、自分はブローチはあげていないと言い、さらにブローチを確かめて翡翠ではなく偽物だと看破する。
・大門はWS劇場への愛情を訴えて土下座するが、リカの無言の圧力もあって久部は2人を許さず、大門とフレは八分坂を出て行くことに。

大門は決して善良なだけではない支配人でしたが、劇場とダンサーたちを愛する気持ちは本物でした。
久部にWS劇場の未来を託した気持ちも本物だったことでしょう。
そして、フレはいずれ誰かの代役で舞台に立つ時が来るのではと予想していたのですが、それどころか裏で皆を裏切って来たんですね。
おばばと踊ったタップダンスがフレの一番の晴れ舞台でした。
妻の悪事には気づいていなかった大門でしたが、すべてを知った後も妻を責めることはありません。
潔く八分坂を去る決意をした大門に支配人としての誇りを感じました。
野添義弘さんと長野里美さんは、実に味わい深い演技で本作を支えてきました。
この2人がいなくなってしまうのは本当に寂しいです。
「この世は舞台?じゃあ楽屋はどこになるってんだ」と言ったのは誰なのか、予告では影になってよくわかりませんでしたが、一瞬、亡き西田敏行さんのように見えました。
三谷さんが敬愛する市川森一さん脚本の『淋しいのはお前だけじゃない』(1982年)は、西田敏行さん主演でした。
サラ金の取り立て屋をしている主人公が借金返済に苦しむ人たちと一緒に大衆演劇の旅一座を結成する物語。
三谷さんはこのドラマを見て脚本家になることを決心したそうです。
フレが随所で言っていた「桑名に帰ろう」というセリフは、『淋しいのはお前だけじゃない』の中で泉ピン子さん演じる主人公の妻が何度も愚痴っていた言葉でした。
大門の姿が一瞬西田敏行さんに見えたのは、勘違いではなかったのかもしれません。

・久部が案内所に行くと、おばばは「“おとこ”から生まれた男に気をつけろ」と忠告するが、久部はそんな人はいないと笑う。
・WS劇場へ戻って来た久部を待っていたリカは、笑顔で迎えると、あなたの劇場と言ってWS劇場を指し示す。
・久部はリカに、ロングランを成功させて動員数を増やし大きな劇場へ、そしていずれは紀伊國屋ホールを目指すと夢を語る。
・「あなたの夢は、私の夢」と応じるリカを強く抱きしめる久部。
・リカは、去っていく大門とフレを見せまいとして久部にキスをする。
・久部は、「ハムレット」の稽古が行われている古巣の劇団・天上天下に乗り込んでいくが、ハムレットを演じているのが、かつて自分と闘ったトロ生田斗真)であることに驚く。
・気を取り直して意気揚々と自分の劇場を持ったことを報告するが、劇団主宰の黒崎小澤雄太)や劇団員たちには取り合ってもらえなかった。
・外まで見送ってくれた制作スタッフ・トンちゃん富田望生)に、久部はこっちだって最高の「ハムレット」を見せてやると息巻く。
・テンペストでは、樹里の横に座った蓬莱が自分の身の上話をするがなかなか樹里の興味を引くことができない。
・蓬莱は、自分の母親の名前が「乙子」だと言い、「僕は“おとこ”から生まれてきたんです」と笑わせようとするが、樹里は酔って寝てしまっていた。

久部が大門とフレを問いただしている間に、ジェシーを連れてきたのはリカです。
フレがブローチをジェシーからもらったと嘘をつくだろうと見抜いていたわけで、抜かりないですね。
甘いささやき、強い言葉、時にはキスで久部を思うがままにあやつっているリカ。
抱擁している時のリカの表情を見ていると久部を愛しているようには見えないのですが、彼女の目的は八分坂を出ることなのでしょうか。
そういえば、久部の実家の住所を聞いていましたね。
さあ、いよいよ劇場支配人となった久部の夢は大きく広がります。
彼の芝居への情熱は素晴らしいのですが、周りがあまり見えていないことが気がかりです。
有能な舞台監督・伴工作野間口徹)が、「久部くんはね、僕から言わせると、惜しい」と言っていましたね。
伴はいつも必要なことしか言わない冷静な人物ですが、お酒のせいもあるのか饒舌に久部について語りました。

「自分というものがない。人の影響を受け過ぎる。自分のやりたい演劇というものが見つかっていないし、見つかっていないということに気づいていない。だからね、同じことを繰り返す。いいものは持っているんだけどね。

さて、おばばの予言「お前の足を引っ張るのは“おとこ”から生まれた男」という言葉は、シェイクスピアの『マクベス』のオマージュです
「女の股から生まれたものはマクベスを倒せない」という魔女の予言に、マクベスはすべての人は女性から生まれるからと安堵するのですが、やがてマクベスを倒しにやってきたものは「私は母の腹を破って出てきた(帝王切開)」と告げるのです。
では、本作での「“おとこ”から生まれた男」とは誰でしょうか。
それは久部の身近にいる人物。
蓬莱でした。
次回、ついに最終回!
30分拡大版です。

11話(最終回)「思い出の八分坂」

放送日:12月17日(水)22:00~23:24

11話(最終回)のあらすじ

久部三成(菅田将暉)は倖田リカ(二階堂ふみ)にそそのかされ、支配人の浅野大門(野添義弘)と妻・フレ(長野里美)を追い出してWS劇場を手に入れる。
リカとの関係は良好、かつて案内所のおばば(菊地凛子)に告げられた「一国一城の主となる」という予言が当たったことに。
しかし、おばばは久部にもらった植木が枯れていることに気づいて「あの男の運気が下がっておるぞ」と呟く。
たくさんのスタンド花が並ぶようになったWS劇場。
上演演目は「冬物語」から「ハムレット」へと変わっていた。
主人公のハムレットは久部が演じているが、ひときわ人気があるのは大瀬六郎(戸塚純貴)が演じるレアティーズで、2人の対立シーンでも観客は圧倒的にレアティーズの味方。
久部は予想外の反応に困惑する。
一方、楽屋ではヒロイン・オフィーリアを演じるリカが自信を喪失していた。
久部は懸命にフォローするが、リカは楽屋を出て行ってしまう。

11話(最終回)のネタバレ

シェイクスピアは記す。
「終わりよければ、すべてよし。途中の道がどうであれ」終わりよければすべてよし

・案内所のおばば(菊地凛子) がタロット占いをしていて「あの男の運気が下がっておるぞ」と呟く。
・WS劇場にはたくさんのスタンド花が飾られ、中でも「大瀬六郎様 フジテレビ」の文字が目立つ。
・上演されているのは「ハムレット」、オフィーリア役の倖田リカ二階堂ふみ)は熱演だが力量不足が明らか。
久部三成菅田将暉)が演じるハムレットよりも、大瀬六郎戸塚純貴)が演じるレアティアーズのほうが圧倒的人気で、客席から黄色い声援が巻き起こるほど。
・終演後のロビーでは、劇作家・井上ひさし三谷幸喜)が大瀬への絶賛の言葉を蓬莱省吾神木隆之介)に語り、大瀬は大勢の取材陣に囲まれている。
・アンケートも大瀬への称賛の言葉ばかりが並び、久部は不満。
・久部の古巣である劇団・天上天下でも「ハムレット」を上演中でトロ生田斗真)がハムレットを熱演。
・劇団クベシアターを偵察した制作スタッフのトンちゃん富田望生)が、主宰・黒崎小澤雄太)にWS劇場の評判を伝えると、黒崎は「手は打ってある」と言い、トンちゃんは不安になる。
是尾礼三郎浅野和之)は、大瀬が目立ち過ぎることとリカの下手な演技への不満をケントちゃん松田慎也)にぶつけ、どこかへ出かけてしまう。
・女性用楽屋で、久部はオフィーリア役の難しさにイライラしているリカを慰め、毛脛モネ秋元才加)とパトラ鈴木アン ミカ)も気まずい空気を変えようとかつて突然姿を消したダンサー・いざなぎダンカン小池栄子)が渋谷に帰ってきているという話をするが、リカは不機嫌なまま出て行き久部も追いかける。
・楽屋には、『お笑いスター誕生』出演に向けてネタ合わせをしようと、彗星フォルモン(西村瑞樹)がパトラを呼びにやって来る。
・続いて大瀬がモネをデートに誘いに来るが、息子・朝雄佐藤大空)の用事で忙しいモネとは予定が合わない。シングルマザーの自分とつき合うのはこういうことだと告げるモネを懐深く受け入れる大瀬。

劇団クベシアターで美しく妖艶な存在感を誇るリカは、「ハムレット」でもヒロインのオフィーリアを演じていますが、難役に苦労しているようです。
是尾もリカの演技に不満を持ちますが、演出家のお気に入りならば仕方ないと納得した様子。
ところで身体を休めに行くと言いおいて、彼はどこへ行ったのでしょうか。
久部が大瀬の人気を不満に思っていること、リカがオフィーリア役を持て余していること、是尾がどこかへ出かけたこと、黒崎がクベシアターに何か仕掛けようとしていること、モネが大瀬のデートの誘いを断ったこと、沖縄に逃避行したダンカンが渋谷に戻ってきているらしいこと等、序盤に数々の種がまかれました。
それぞれのエピソードが複雑に絡み合って最終回の物語が展開していきます。

・久部とリカが稽古をしに来たため、客席で舞台の絵を描いていた朝雄は絵を置いて出て行った。
・久部は熱心に演技指導するが、リカは不機嫌にオフィーリア役は荷が重いと言って去る。
・ひとり残されてしまった久部は、朝雄の絵を見てふと筆を入れるが絵の具がたれて汚れてしまい、ハンカチでぬぐおうとして取り返しのつかないことになってしまう。
・劇団員たちの中で絵を台無しにした犯人は誰かと騒ぎになり、久部も素知らぬ顔で会話に混じる。
伴工作野間口徹)が、絵の具で汚れたハンカチが大瀬の演じているレアティーズの衣装のポケットにに入っていたと言って持ってきた。
・一同は大瀬が犯人だと思い込んで責め立て、モネも自分が食事の誘いを断ったせいなのかと怒り心頭。

久部はどうして朝雄の絵に筆を加えようと思ったのでしょう。
好意でちょっと直すつもりが、台無しにしてしまいます。
さらに良くないのが、正直に謝らなかったことです。
それどころか、大瀬の仕業にするという捏造まで行います。
主役の自分よりも人気がある大瀬に対する妬みが根底にあったのでしょうが、実に愚かな行動です。
皆に疑われてしまった大瀬に対して久部はわざわざ
「自分を見失わないこと」
「本人にはわからないものだから」
と告げに行きました。
自分を見失っていてしかもそれを自覚していないのは、久部自身だというのに。
ところで、伴が大瀬の衣装のポケットから汚れたハンカチを発見したのはなぜでしょうか。
それは1話で描かれています。
舞台監督の伴は、劇場の掃除からダンサーたちの衣装の洗濯まで様々な雑用もこなしてきているんですね。
楽屋に脱ぎ捨てられた衣装を集めて洗濯機に入れる場面がありました。
WS劇場がストリップ劇場から芝居小屋に変わった現在も、劇団員たちの衣装の管理を担っているのでしょう。
仕事のできる伴のことですから、洗濯前に必ずポケットの中身を確かめているのでは。
久部は多分、伴がハンカチを見つけることを見越していたんですね。

江頭樹里浜辺美波)は蓬莱にお客さんは入るようになったけれど今はみんなギクシャクしていて、前に蓬莱が言っていたように「夏の夜の夢」を上演していた頃のほうが良かったのではと話す。
・蓬莱も、集団は目的地がわからずに走っている時が一番盛り上がるものだからと言う。
・ケントちゃんに呼ばれてジャズ喫茶「テンペスト」にやって来た久部は、酔いつぶれている是尾を見て絶望する。
・是尾は1週間ほど前にファンに誘われて酒を飲んだことがきっかけでそこから飲むようになってしまったと話すが、そのファンとは劇団・天上天下の黒崎だった。
・久部は是尾を許さず、今度酒を飲んだら劇場を出て行ってもらうという約束通り、降板を言い渡した。
・みんなには体調がすぐれないために降板ということにすると言って、久部はマスターの風呂須太郎小林薫)に是尾の酒代は自分が払うと言う。
・久部はこの日の夜公演のカーテンコールは自分ではなく是尾を最後にすると告げた。
・その後、久部は蓬莱から劇場と劇団とリカ自身のためにオフィーリア役の交代を考えてほしいと進言される。
・樹里が、絵の具で汚れたハンカチを久部に見せて、これは以前自分があげたものだと言い、芝居のためにならないことをなぜ平気でするのかと涙ぐむ。
・ひとり落ち込む久部のもとへ仮歯ひょうろく)が是尾の酒代の請求書を持ってきたが、その金額は58万円だった。風呂須は50万円でいいと言っているとのこと。
・久部は毛利里奈福井夏)に事務所の金庫を開けさせて50万円を取り出し、1万円を里奈に渡して口止めする。
・しかし、里奈はすぐに蓬莱に報告。
・朝雄の担任教師・楠木関谷春子)がモネを訪ねてきて、「ハムレット」を観劇した、素晴らしかったと言い、朝雄が描いた絵をモネに見せて教室に貼ると話す。
・是尾は最後の舞台が終わると、置手紙を残して姿を消した。
・里奈が金庫の金が51万円足りなくなっていると証言し、オフィスに集まった一同が久部を不審に思う中、ケントちゃんは顔色を変えるが是尾の降板理由を明かさないと約束している久部は事情を言えず、支配人の自分がどう使おうと勝手だと言い張る。
・納得できない皆に問い詰められて、久部は咄嗟にいざなぎダンカンに金を貸したと作り話を始める。
・一緒にやってきた仲間に信じてもらえないのは寂しいと言いながらホールへ逃げていく久部。
・ホールで久部が見たのは、たった今罪をなすりつけたいざなぎダンカンだった。
・噓がバレて信頼できない人とは一緒にやっていけないと皆から見放された久部は、僕の下で芝居ができないのならみんな出て行けと叫び、朝雄の絵を台無しにしたのも自分だと告白する。
・罪を着せられていた大瀬は、怒るどころか疑いが晴れたことを久部に感謝する。

嘘に嘘を重ねた久部は、すべてが明らかになった時皆の信頼を失ってしまいます。
朝雄の絵を台無しにしてしまったのは悪気があったわけではなく少し手を加えることでより良いものにしようと思ってのことで、すぐに素直に謝れば大事にはならなかったはず。
売上金に手をつけたのも是尾の酒代を払うためで、正直に打ち明けていれば皆の理解を得られたと思います。
久部は是尾の名誉を守りたくて本当のことを言わなかったのでしょうか。
腹を割って話すことをせず、その場だけごまかすような嘘を重ねたことで久部は皆から見放されてしまいました。
かつて、金庫の金に手をつけた浅野フレ長野里美)とその夫・大門野添義弘)と同じことをしたんですよね、久部は。
そもそも是尾にお酒を飲ませたのは、黒崎でした。
黒崎もまた卑怯な手を使ったのです。
正々堂々とハムレット対決をしてもらいたかったのに。
気の毒だったのは樹里です。
樹里はずっと久部と久部の劇団のために役に立ちたいと心を尽くしてきました。
それなのに、自分があげたハンカチを罪をなすりつけるための工作に使われてしまったのです。
あのハンカチは、9話で開演を楽しみに待つ客たちを見て涙ぐむ久部に樹里が差し出したものです。
樹里は、芝居に情熱をかける久部に惹かれていたのだと思います。
その久部が劇団の仲間に罪を着せる姿に、どんなに失望したことでしょう。
しかも、そのハンカチは樹里があげたものだと気づいていなかった久部。
「ハンカチなんてどれも一緒だと思っているから、平気でそういうことができるんです」
是尾の尊厳を守ろうとする久部と、樹里の真心を踏みにじり、大瀬やダンカンに罪を着せる久部は同一人物。
ひとりの人間の中に善も悪もあるということがシビアに描かれます。

・久部は、ハムレットとオフィーリアと優秀なスタッフがいれば舞台の幕は開けられると強がり、リカと伴とケントちゃんを連れてテンペストへ行くが、店内では弱音を吐く。
・そこへ樹里がやって来て、他の皆は今後のことについて話し合っていると報告した。
・リカからはなぜ本当のことを言わないのと言われ、風呂須は支払いを待つと言ってくれたが、久部は意地になっていた。
・ふと、久部が前から気になっていた風呂須の正体について質問すると、西武劇場にあるカフェで10年働いていただけで演劇の仕事をしていたことはないことがわかる。
・しかし、伴は、風呂須は演劇の知識は豊富に持っていると言い、久部は風呂須にアイデアを求めた。
・風呂須は役者の数が足りなくても“仮面劇”ならばシェイクスピアはできると言い、久部は喜ぶ。

リカが「なんで本当のことを言わないの」と久部に聞いたということは、久部はテンペストに集まったメンバーには是尾のために金庫の金に手をつけたことを話したのですね。
そもそも、テンペストへの支払いだったわけですし。
そのテンペストのマスター・風呂須は、以前から只者ではないオーラと威厳を放っていました。
久部は、風呂須が是尾とも蜷川幸雄とも顔見知りであることに気づいていたんですね。
演じているのが小林薫さんであることもあって、演劇関係の大物かと思われましたが、実は西部劇場のカフェで働いていたということがわかりました。
カフェに来る演劇関係者や観客たちの会話が何とはなしに耳に入って来る日々の中で、芝居に関する知識も自然と蓄積されていったのでしょう。
実際にステージに立つわけではないけれど、演劇への理解が深いのは、この風呂須と、そして樹里もそうなのだと思います。
樹里は、2つに分かれてしまった劇団クベシアターの間で、どんな思いでいるのでしょうか。
少人数になってしまったクベシアターは、風呂須のアドバイスで、仮面劇をやることに。
樹里も久部たちとともに劇場へと走っていきます。

・劇場へ走り込んできた久部たちの後でゆっくり入っていくリカは、帰ろうとするダンカンに会う。
・ダンカンは、明日どうなるかわからないんだから今できることをやったほうがいいと告げ、リカはオフィーリアも同じようなことを言っていたと答えて、去って行くダンカンを見送る。

リカとダンカンのシーンは、最終回の肝のひとつでした。

ダンカン「明日どうなるかわからないんだからさ、今できることをやったほうがいいわよ」
リカ(笑う)
ダンカン「何?」
リカ「オフィーリアも同じようなことを言ってた」
ダンカン「誰?」
リカ「…ちょっとした知り合い」
ダンカン「ふーん。じゃあね」

去っていくダンカンを目で追いながらリカは、
「私たち、今はこうでも、明日はどうなることやら。まあ素晴らしいご馳走」
とセリフを呟くのです。
ほんのわずかなシーンでしたが、二階堂ふみ×小池栄子の会話劇は実に見応えありました。
ダンカンは、リカに「今できることをやったほうがいい」という言葉を告げるためにこの物語に再登場したのだと思います。
ヒロインを旅立たせる重要な役割を担った小池栄子さんの華やかで力強い存在感が胸に残りました。
この場面で映るスタンド花、八分坂派出所から大瀬へ、蜷川幸雄小栗旬)から久部と是尾それぞれへ、彗星フォルモン西村瑞樹)へはかつての相方である王子はるお大水洋介)から、リカへは江頭論平坂東彌十郎)から贈られていて、細やかな描写が嬉しくなってしまいます。

・ステージを使っての仮面劇の稽古中、ハムレット役の久部は感極まって「僕が求めていたオフィーリアだ!」と仮面をつけたオフィーリア役の女性を抱きしめるが、仮面を外すとそれはリカではなく樹里だった。
・リカはオフィスでジェシー才賀シルビア・グラブ)にもっと広い世界で勝負したいと相談し、ジェシーも力になると請け合う。
・深夜、劇場から出てきたリカを久部が追いかけてくるが、リカは自分は八分坂を抜け出したいのだと言って別れを告げる。
・劇場の円形の舞台に放心状態で横たわる久部に、樹里が話しかける。シェイクスピアは劇団の座付き作家だったから劇団員皆に役を与えているしだからどんな作品も温かいと。
・父の転勤が決まり自分もついていくという樹里に、久部が蓬莱の母親について尋ねる。
・蓬莱の母親が「乙子(おとこ)」であることを聞くと、久部はこれまでの礼を樹里に言い、劇団の解散を伴に告げる。
・久部は劇団員たちに後のことは蓬莱に任せると伝えて案内所へ向かった。
・「これからどこへ行けばいい」と久部が聞くと、おばばは「運命は星が決めるのではなく自分の思いが決めるんだ」と力強く告げる。
・通りでローラー族の族長・ズン林希)に出会うと、久部はシェイクスピア全集が入ったボストンバックを渡し、八分坂を出て行く。
・八分神社で、蓬莱は樹里に劇団を任されたけれど力を貸してくださいませんかと頼むが断られ、「好きです」と告白するが「そうでもない」と言われてしまう。
・その後、ジェシーが密輸で逮捕されてWS劇場は人手に渡り、劇団も解散。皆それぞれの道を進んでいる。
・2年後、ジェシーが営む弁当屋で配達の仕事をする久部は、配達先の区民センターで聞き覚えのある声とセリフに立ち止まる。
・声をたどっていくと、畳張りの一室に懐かしいメンバーが揃って「真夏の夜の夢」の稽古をしていた。大瀬、モネ、パトラ、トニー、フォルモン、大門、フレ、うる爺。朝雄も伴もいる。演出しているのはケントちゃん。演出助手は蓬莱。
・久部が廊下から皆の様子を見ているといつの間にか隣に樹里がいて、上演する予定はなくたまに集まって稽古をしているのだと教えてくれる。
・樹里が、顔を出したら皆さん喜ぶと思いますと言うが、すでに久部はそこにいなかった。
・区民センターを出て行く久部に、受付の女性が追いかけてきてシェイクスピア全集の入ったボストンバックを渡す。受付の女性はズンだった。
・かごにシェイクスピア全集を積んで幸せそうに自転車を漕ぐ久部。
「この世はすべて舞台。男も女も役者に過ぎぬ」
「ノーシェイクスピア、ノーライフ!」

「素晴らしい!今までで一番です。僕が求めていたオフィーリアだ」
久部がリカだと思って称賛したオフィーリアは、樹里でした。
仮面をつけていたとはいえ、声で気づかず抱きしめて初めてわかるなんて。
樹里はどこまでも報われないですね。
同じ頃、そのリカはジェシーに芸能関係者を紹介してほしいと頼んでいたのですから、久部の想いも報われません。
顔の広いジェシーは東宝芸能の社長とも懇意で、東宝シンデレラのオーディションについて後押ししてくれそうです。
東宝シンデレラといえば、樹里を演じる浜辺美波さんがニュージェネレーション賞を受賞したオーディションですね。
遊び心のある場面でした。
リカは八分坂を出る決心をし、久部のリカへの想いは、儚く散ってしまいます。
リカが久部を利用しようとしていたことを、久部は気づいていなかったのでしょうか。
気づいていてもいなくても、恋心は本物だったんですね。
道に佇む久部とグローヴ荘の外階段から見下ろすリカの2人は、まさにロミオとジュリエットの構図でした。
失恋して空っぽになってしまった久部に、樹里はシェイクスピア劇はなぜ沢山の登場人物がいるのかという話をします。
座付き作家だったシェイクスピアは皆を舞台に立たせるためにそれぞれに役を与えたのだろうと言う樹里に、久部は「良く勉強したな」と言いました。
三谷幸喜さんも、沢山の登場人物それぞれに見せ場を作るところがシェイクスピアに通じますね。
何よりも大切だったシェイクスピア全集すら持たずに、久部は八分坂を出て行きます。
ところが、2年後、ジェシーが営む弁当屋で働いているというのが面白いですよね。
どうやら久部は渋谷から離れていないようです。
配達中に元劇団員たちが稽古している場所に出くわすなんて、夢のような終わり方でした。
信頼を失い居場所を失った久部でしたが、彼らに芝居の面白さを与えたのは間違いなく久部だったんですよね。
トニーがなかなか戻ってこなくて大変だった公演の時、台本の一部を変えるように提案して時間稼ぎに一役買ったのはケントちゃんでした。
そのケントちゃんが今は演出を担当し「久部さんがここにいたらなんて言われるだろうか、考えて」なんて指示を出していることに胸がいっぱいになります。
ケントちゃんは事の成り行きを知っていますから、皆に是尾の件の事情を話したのかもしれませんね。
うる爺もいて、トニーもいて。
大門とフレもいます。
皆が稽古をしているシーンは本当に楽しそうでしたし、それを見ている久部も幸せだったと思います。
偶然にもシェイクスピア全集がまた久部のもとへ戻ってきました。
ズンはずっと、捨てもせず売りもしないでいつか再会する時のために預かっていてくれていたんですね。
久部が再び始動する時が、やって来そうです。

【もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう】の原作は?

本作に原作はありません。
三谷幸喜さんの完全オリジナル脚本ですので、視聴者はストーリーを新鮮に受け止め展開を自由に想像しながらドラマを楽しむことができますね。
ドラマの原作とは別の話になりますが、YOASOBIが書き下ろした主題歌「劇上」は三谷幸喜さんの私小説「劇場ものがたり」を原作として制作されました。
三谷さんが「劇上」のために書き下ろした自伝だそうです。

主題歌のために脚本家が小説を書き下ろすなんてすごい!
三谷さんの情熱を感じるわね。

【もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう】の最終回予想(最終回後追記)

最終回後に追記しました。

久部は演劇で成功することができる?

若き演劇青年・久部三成には演劇で名をはせたい、敬愛する蜷川幸雄先生に認められたいという夢があります。
果たして夢は叶うのか、最終的に彼はどこへたどり着くのか、見守っていきたいと思います。

最終回後追記
蜷川幸雄が公演を観て絶賛してくれたおかげで、劇団クベシアターの評判は上々、WS劇場には沢山のスタンド花が並び、観客であふれるように。
久部の夢は叶ったかのようでしたが、しかし、人気が沸騰したのは主演の久部ではなく大瀬でした。
久部の妬みが原因で、劇団の運命は思わぬ方向へ。

登場人物それぞれの行く道は?

もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう】は、多数の人物が登場する群像劇です。
三谷作品では、すべての人物が主人公のように丁寧に描写されますから、それぞれの夢や葛藤、苦悩や喜びが毎話描かれていくことでしょう。
ひとり一人がどんな生き方をしてどんな未来に向かって進んで行くのか、とても楽しみです。

最終回後追記
2年後、登場人物たちはそれぞれの道を進んでいます。
・蓬莱は、フジテレビやNHKなどテレビ局で忙しく働いているようですね。聡明で機転が利き心優しい彼は放送作家としてますます活躍していくことでしょう。
・フォルモンとパトラは売れっ子の人気コンビに。
・はるおは出待ちのファンに囲まれるほどのスターに。「ノイズハムレット」公演ではフォルモンへスタンド花を贈っていましたね。どこかの現場で元相方とバッタリ会うこともありそうです。
・案内所はクレープ店になり、キュートなおばばがクレープを売っています。
・PARCO劇場にはトロ主演、黒崎演出の「リチャード三世」の大きな広告が貼られていました。
・是尾は道路工事の作業員の仕事を元気に頑張っているようです。
・モネと朝雄と大瀬は仲良く過ごしているようですね。
・ジェシーは逮捕されてしまったようですが、その後弁当屋を営み、乱士郎と乱太郎、そして久部を雇いました。面倒見が良いんですね。リカを芸能界へ送り込んだのもジェシーのコネでした。
・樹里の演劇への情熱は素晴らしいと思います。いずれ劇作家を目指す可能性はないでしょうか。もしくはシェイクスピア研究者になるとか。
・リカはタレントになり、ハンバーガーチェーン店のCMに出演しています。裕福だった少女時代から没落しやがてストリップ劇場で踊るようになっていたリカは、何としてでも這い上がって華やかな場所へ行きたかったんですよね。リカが目指すのは、WS劇場よりももっと光り輝く場所。舞台のスポットライトだけではこれまでの日々は救われなかったのかもしれません。テレビのまばゆいライトを浴び大衆から愛されるスターに上り詰めてようやく、彼女の過去が癒されるのかもしれませんね。野望を叶えていくリカはカッコいいし、ジェシーもそういうところに共鳴したのだと思います。
・八分坂で手にしたものはすべて失った久部。でもまた元劇団員たちの芝居への愛に出会いシェイクスピア全集ももどってきました。久部がこれから進む道には、何が待っているのでしょうか。

最終回後追記
久部は1話でリカに惹かれてWS劇場で働くようになり、最終回で失恋とともに劇場を去ります。
久部の芝居への情熱は本物でも、煩悩や妬みが彼の判断を狂わせ、嘘を積み重ねることになり皆からの信頼を失ってしまいました。
大門とフレ夫婦を追い出したことの因果応報のように、劇団を手放すことに。
何よりも大切なシェイクスピア全集を人にあげて、何も持たずに八分坂を出て行きます。
次々と消えていく八分坂のネオンサイン。
華麗に舞うリカだけに光が当たります。
リカは(久部の幻想の中で)最後に久部を見送ってくれたのでしょうか。
恋と劇団をいっぺんに失った久部を。
でも、結局八分坂を本当に去るのはリカでした。
八分坂のリカを最後に見届けたのが久部だったのかもしれません。
初めて会ったあの日リカにスポットライトを当てた久部。
久部が愛したリカ。
久部が求めていたオフィーリアは樹里だったのに。
それぞれの報われない想い。
久部も樹里も蓬莱も失恋してしまいました。
人生はなかなか思い通りになりませんね。
もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう。
楽屋はどこにもなくて、ずっと舞台の上で踊り続け演じ続けていくのが人生なのでしょうか。
ただ、もしも楽屋があるのだとしたら、それはたとえば区民センターの和室のような場所なのかもしれません。

倍速で見るのはもったいない、じっくりと向き合って登場人物たちの表情やセリフをしっかり受け取ってこそ面白さがわかるドラマでした。キャストとスタッフの皆さんにスタンディングオベーションを贈りたいです。エンターテインメントの歴史に残る素晴らしい作品だと思います。

【もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう】の見どころ

シェイクスピアへのオマージュ

【もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう】、このタイトルは、シェイクスピアの「お気に召すまま」のセリフ「全てこの世は舞台、人は皆役者に過ぎぬ」にちなんでいます。
三谷幸喜さんは、今回シェイクスピアの世界をみんなでやるというイメージで脚本を書いたそうで、登場人物の名前や店の名前などもシェイクスピア作品から取られているものが多いようです。

俳優名 役名 シェイクスピア作品の登場人物
菅田将暉 久部三成 マクベス(マクベス)+
リチャード三世(リチャード三世)
二階堂ふみ 倖田リカ コーディリア(リア王)
神木隆之介 蓬莱省吾 ホレイシオ(ハムレット)
浜辺美波 江頭樹里 ジュリエット(ロミオとジュリエット)
戸塚純貴 大瀬六郎 オセロー(オセロー)
アンミカ パトラ鈴木 クレオパトラ(アントニーとクレオパトラ)
秋元才加 毛脛モネ デズデモーナ(オセロー)
佐藤大空 朝雄 アーサー(ジョン王)
小林薫 風呂須太郎 プロスペロー(テンペスト)
市原隼人 トニー安藤 アントニー(アントニーとクレオパトラ)
菊地凛子 おばば 魔女(マクベス)
坂東彌十郎 江頭論平 ロレンス神父(ロミオとジュリエット)
井上順 うる爺 ウルジー(ヘンリー八世)
野間口徹 伴工作 バンクォー(マクベス)
シルビア・グラブ ジェシー才賀 ジェシカ(ヴェニスの商人)
佳久創 乱士郎 ランスロット(ヴェニスの商人)
野添義弘 浅野大門 アテネのタイモン(アテネのタイモン)
長野里美 浅野フレ 執事フレーヴィアス(アテネのタイモン)
富田望生 トンちゃん シートン(マクベス)または
ドン・ペドロ(空騒ぎ)
小澤雄太 黒崎 クローディアス(ハムレット)
西村瑞樹 彗星フォルモン フォールスタッフ(ヘンリー四世)
大水洋介 王子はるお ハル王子(ヘンリー四世)
ひょうろく 仮歯 キャリバン(テンペスト)
福井夏 毛利里奈 マリーナ(ペリクリーズ)または、
カタリーナ(じゃじゃ馬ならし)
松田慎也 ケントちゃん ケント伯爵(リア王)
小池栄子 いざなぎダンカン ダンカン(マクベス)
浅野和之 是尾礼三郎 コリオレーナス(コリオレーナス)
生田斗真 トロ トロイラス(トロイラスとクレシダ)

壮観だわ!ドラマはシェイクスピア作品の世界とどこまでリンクするのかしら。

菅田将暉、3年半ぶりの連続ドラマ主演

菅田将暉さんの連ドラ主演は、絶賛を浴びたドラマ『ミステリと言う勿れ』(2022年)以来約3年半ぶりとなります。
座長として、皆で遊ぶものや差し入れそして会話など、様々に心を配った菅田さん。
俳優部の窓口として要望をこっそりスタッフに伝えたり、俳優陣の意見の調整役もしたり、良いチームになるために力を尽くしたそうです。
金城綾香プロデューサーは、菅田将暉さんのおかげもあって現場はとても楽しく和やかな雰囲気だったと語っています。
細やかに気遣いをしながら皆を引っ張る、頼もしい座長ですね。

それぞれ世代や経験が異なる俳優陣をまとめるのは苦労もあっただろうけど、座長として良い空気づくりをしていたんだね。素晴らしいな。

菅田将暉が演じる主人公は自分勝手な嫌われ者?

久部三成は、演劇への情熱と蜷川幸雄やシェイクスピアへの愛情は本物であるけれど、周囲に対しては自分勝手で人の話を聞かない青年。
これが三谷さんによる菅田将暉さんへの“あてがき”であるとはちょっと信じられないですが。
“主人公なのに嫌われ者”という異質な役を菅田将暉さんはどう演じるのでしょうか。

菅田将暉さんのインタビューより
「当時の人たちはみんなエネルギーがあって、それぞれの生き様がステキなんです。久部は嫌われていく役ですが、今の時代、嫌われることも、失敗もできないじゃないですか。壁にぶち当たる前に「3歩先に壁があるよ」と教えられる時代だから、壁にもぶつかれない。そんななかで、ある程度、盲目的に進んでいく久部たちの生きる力みたいなものを見ていただくことは、何か意味があるんじゃないかなと思います。

久部は欠点も含めて視聴者から愛されるような、そんな人物になりそうだね。

「久部がSNSをやっていたら叩かれて、炎上するでしょうけど」と菅田将暉さんは言っているけど、パワーのある主人公は魅力的だと思うわ。
神木隆之介さんは久部のことを「すごく強引だけど、僕たちを新しい場所へ連れて行ってくれるんじゃないかという期待感も抱かせる人」と語っているわね。

三谷幸喜さんのインタビューより
大河ドラマで演じてくださった源義経を見たときに「この人には今後こんな役をやってほしい」という思いがすごく膨らんだんですよね。それは、ただのいい人とか何か一色で語られるものではなくて、もっといろんな面を持った、憎まれ役、嫌われ役も含んだ複雑な役を見てみたいと思ったんです。その思いから今回の久部のキャラクターが出来上がりました。

神木隆之介演じる蓬莱省吾は三谷幸喜がモチーフ!

神木隆之介さんが演じる新人の放送作家・蓬莱省吾は、若き三谷幸喜さんがモチーフになっています。
そのことについて神木さんは、嬉しさと緊張感があった、三谷さんの動きや話し方を役にどこまで反映させるべきかを一生懸命考えたと話しています。
ただ、役名は“蓬莱省吾”で“三谷幸喜”そのものではないし、もとから脚本の中に三谷さんの要素は入っているので、神木さんはそれをどうピックアップして表現していくのかが大事だとも言っています。
一方、三谷さんは神木さんのコメディのセンスに感激したそうです。

三谷幸喜さんのインタビューより
自分が書いたものをこんなにも正確に面白く具現化してくれる俳優さんに会ったのは、正直初めてでした。脚本の何倍も面白くしてくれるし、若い方なのにこんな力を持った人がいるんだなと感激して。

主役の一つ!巨大オープンセット!

本作のために、1984年の渋谷を再現した巨大なオープンセットが建てられました。
ほかの作品からも美術部や大道具のスタッフが招集されて作られたという大規模なセット。
菅田将暉さんは「今まで出演したドラマの中でもはるかに一番豪華で、未来がある」と感じたそうです。
三谷さんは、セットを見てタイムスリップした感じになったそうで、特にストリップ劇場と坂を挟んで目の前にある古いアパートはそのままだったと語っています。
そのアパートから通りを横切って劇場に入っていく導線が完璧に再現されていたとのこと。
今回は「1984年の渋谷」という明確な設定がありますが、今の渋谷では景色も変わっているし通行する人を止めることも大変だし現地での撮影は難しかったのでしょうが、丸ごとセットを作ってしまうのはすごいことです。
60メートルくらい続く坂に約20軒のお店などが並んでいる「八分坂」。
夜は様々なネオンの光がカラフルに輝き、その光が路面に反射して艶やかで猥雑な雰囲気を醸しだします。
輝く夜の街で、登場人物たちそれぞれにどんな光が当てられるのでしょうか。

もうすでに撮影は終わってオープンセットは壊されているそうだけど、内部の様子を詳しく見たいなあ。セットツアー撮ってくれてたら嬉しいんだけど。

1984年の渋谷を再現

1984年の渋谷が舞台の本作は、街の様子や人々の服装や持ち物など、当時の流行や風俗をできるだけ再現しています。
その時代のお菓子が当時のパッケージで出てきたり、登場人物がタバコをポイ捨てしてもとがめられなかったり。
物語は三谷さんの実体験が元になっていますが、ドラマとしてはファンタジーです。
けれどもディテールまでリアリティを大事にする演出が、現実の私たちとの橋渡しをしてくれるんですね。
こだわりぬいたプロの仕事は、当時を知る視聴者にノスタルジーを感じさせ、その頃生まれていなかった人たちには新鮮さを届けることでしょう。

三谷幸喜が現代に届けるパワフルな1980年代!

現代は不安に満ちた時代です。
夢と熱気があった1980年代に生きた人々を描くことで、現代の人たちにメッセージやエールを送りたい、そういう三谷幸喜さんの想いがこの物語の出発点だそうです。
夢を追いかける人たちの輝きが現代をどう照らしてくれるのか、大いに期待しています。

パワーにあふれた時代を描いたドラマからきっと私たちも元気をもらえるんじゃないかな。

金城綾香プロデューサーが“大人のワンダーランド”と言い、三谷さんが“大人のファンタジー”という「八分坂」のセットで、どんな物語が繰り広げられるのか楽しみだね。