松坂桃李が春ドラマで「好感度」上げに来た?ダメキャラ作品2連発の怪!

松坂桃李がこの春クール、2本の連ドラに主演している。大学の広報マン役とスーパーで働く青年役だが、いずれも「頼りない」「情けない」「覇気のない」と『ダメダメづくし』のダメ男キャラなのだ。俳優が1クールに2本主演するのも異例だが、キャラもかぶり気味なのはかなり珍しい。近年、映画ではシリアスで渋い演技が光っていたが、それを払拭するかのような真逆の役。しかし、これがなんとも共感を呼び起こす。昨年、女優の戸田恵梨香と電撃結婚したが、ひょっとして、パパになる前に、好感度を上げに来たのか。この新境地はナニ?!

あのときキスしておけばの松坂桃李https://www.tv-asahi.co.jp/anokiss/

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松坂桃李がこの春、何だか頼りない存在に?

好感度を気にする頼りないアナウンサーが、大学広報マンに転職

冒頭シーンは、アナウンサーが台風被害の現場リポートに出ている場面だった。スマートな背格好は、いかにも今時の若手イケメン風。被害に遭遇し、自宅の片付けをしている人に、声をかけるのだが、発する言葉がどうも歯切れが悪い。

「はぁ~、しかし」

「いやぁ、これは」

「ねぇ」

「これは何も言えないですねぇ」

え? これが台風リポート? 刑事ドラマなら、よくある冒頭の事件概要説明のシーンなのだろうが、なんとも要領を得ない。しかし、よく見ると、このアナウンサー、名もなき脇役ではない。主演の松坂桃李なのだ。そのリポート映像を見ていた大学の理事らは、深いため息をつく。つまり、完全なるダメキャラなのである。

1クールで異例の2本主演、しかもいずれもダメキャラ

この春クールのドラマで、松坂は2本のドラマに出ているが、いずれも今までとは一線を画すキャラを演じている。彼クラスが同じクールにおいて主演で2本も出るのも珍しいが、いずれもなんとも、不思議な笑いを呼ぶ役なのである。

NHK「今ここにある危機とぼくの好感度について」では大学広報マン役

冒頭の作品は、NHK土曜ドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」(後9・0)。当たり障りがないことをモットーに、とにかく意味のあるコメントは一切発しない主人公、神崎真。まぁ、アナウンサーというのは、客観性が求められるから、それも正しいのかもしれないけれど、あえて避けているところが、なんとも頼りない。しかも、後輩のイケメンアナに人気では抜かれ、メーンキャスターへの道はまだまだ遠い。

悩める30代アナに、大学時代の恩師が総長となったことから、母校の広報マンとしてお声がかかる。そそくさとアナウンサーに見切りをつけるのも、今どき感なのか。ところが、大学へ行くと、次々に不祥事が巻き起こり、対応にてんてこ舞い。得意のはずのその場しのぎ、で乗り切ろうとするのだが‥‥いっこうに通用しないというお話。

「え、これって、ぼくの落ち度なんですか?」

「ぼくって、仕事できないって思われてるんですか?」

世の中の理不尽であえぐ姿は、サラリーマン諸氏には響くはずだが、松坂の振る舞いは実に滑稽で哀れに見えるのだ。

映画「新聞記者」や「娼年」でのシリアスな演技が光ったが

近年、松坂といえば、シリアスな空気感の作品が多かった。日本アカデミー賞作品賞を獲得した映画「新聞記者」では、内閣情報調査室の官僚役。シム・ウンギョン演じる新聞記者と、国の不正に直面し、正義とのはざまに揺れ動くシリアスな演技が光った。今回の役とは真逆である。映画「不能犯」では世直しと称して、死へと追い詰めるサイコな役。映画「娼年」は男娼役と演技の幅をどんどん広げていた。気のいいイケメンのお兄さんからの脱皮を着々と進めているのがわかる。思えば、代表作は何だったか。NHK「梅ちゃん先生」という人もいれば、最近なら、フジテレビ系「パーフェクトワールド」あたりか。意外にパンチがないのだが、このドラマはNHK「カーネーション」でも知られる渡辺あや氏の手によるもので、今クールでも隠れファンは多いはずだ。

体裁を繕う日本人にありがちなリアルを体現して共感を呼ぶ

ただのブラックユーモアな作品というわけではない。危機管理という現代社会が抱える問題、そして日本人にありがちな体裁を繕う、というリアルな部分で立ち尽くす姿は、味わったことのある人は少なからずいるのではないだろうか。最初は笑っていられるが、次第にダメキャラである松坂に共感してしまうような感覚。彼の持つ、天性の柔らかい感性故だろう。昨年、女優の戸田恵梨香と結婚し、さらに役者としての成長を考えての選択のような気がする

テレビ朝日系「あのときキスをしておけば」では壊滅的に覇気のない男

もう1本は、テレビ朝日系「あのときキスをしておけば」(金曜後11・15)。松坂が演じるのは、スーパーで働く、壊滅的に覇気のない男の役。夢もなければ、何もない。唯一、漫画が好きなくらいの桃地のぞむ役。人気漫画家、唯月巴(麻生久美子)と知り合い、家政婦のように雇われるうち、キスをされそうになるのだが、「そんなつもりじゃないんで」と拒んでしまう。

魂入れ替わりのコメディーで男になった元女性に振り回され‥‥

それでも、沖縄旅行に誘われ、ついて行くのだが、そこで事故が。巴は死亡。しかし、生き残った桃地のもとへ、機内で巴の隣席にいた田中マサオ(井浦新)が、「私よ、私、巴」と近寄ってくる。魂入れ替わりのコメディーは大石静氏の手によるもの。美味しいところは、女性役を演じる井浦がすべて持っていくわけだが、それに振り回されるのが、またも松坂というわけだ。

ダメキャラで王道コメディーに挑んだ松坂桃李の挑戦は好感度UPとなるか

大学の不正に振り回され、魂の入れ替わった男性?に振り回され。

思えば、喜劇の主人公は何もしないのが王道なのだ。

チャップリン然り、「ピンクパンサー」のクルーゾー警部も。

周りで何が起ころうが、真面目な顔をして、笑わせる。

松坂桃李の新境地が、垣間見てとれる春ドラマ2本。

ダメキャラを演じることは俳優としてのある意味挑戦であり、冒険にもなる危機をはらむが、そんな『危機』をものともせず、『好感度』は上がったのではないだろうか。

松坂桃李テレビ朝日-210515

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