映画【ルックバック】ネタバレあらすじ!原作にないシーンの追加に「すごい」「しびれた」
河合優実、吉田美月喜が声優初挑戦にしてW主演を務めるアニメ映画【ルックバック】が6月28日(金)より全国劇場にて公開中です。
原作はTVアニメ化もされた人気作【チェンソーマン】などを手掛ける漫画家・藤本タツキが2021年に「ジャンプ+」に発表した同名の長編読み切り漫画。原作の魅力をそのまま、映画ならではの表現や手法で描かれる映画【ルックバック】には、公開直後からSNSなどで「大傑作」などと絶賛の声が相次いでいます。
本記事では映画【ルックバック】のあらすじや原作との違いなどをネタバレありで紹介します。
キャスト情報などネタバレなしの記事はこちらです。
◆映画【ルックバック】SNSの反響
レビューサイトFilmarksと映画.comでの平均評価は4.4、公開初日から3日間の興行収入ランキングで1位を獲得するなど快調な滑り出しを見せています。前評判を裏切らないクオリティにSNS上では絶賛の声が多数。「良すぎた」「とんでもない大傑作」「ありえないくらい泣いた」といった投稿がいくつも見受けられ、主人公たちと同じくクリエイティブの世界にいる人たちからも「クリエイターが人生で味わう殆どすべてが描かれている」「自分の半生と重なり過ぎて胸が苦しくなる」などと共感の声が多く寄せられています。映画【ルックバック】はまだまだ公開されたばかり。人気と評価がどこまで上がっていくのか、非常に楽しみです。
◆映画【ルックバック】ネタバレあらすじ
漫画に自信がある小学4年生の藤野は、自分よりも絵が上手い京本の存在を知る
学年新聞で4コマ漫画を連載している小学生4年生の藤野。クラスメートから褒められて天狗になっている彼女は、先生から「京本が学年新聞に漫画を載せたがっている」という話を聞きます。京本は隣のクラスの不登校の生徒。「そんな子にちゃんとした漫画がかけるはずがない」と鼻で笑う藤野でしたが、いざ学年新聞に掲載された京本の漫画を見ると、その画力は藤野を遥かに上回っていました。これまで自分が一番絵がうまいと思っていた彼女にとってはショッキングな体験です。今まで褒めてくれていたクラスメートからも「藤野の絵って普通だな」と言われる始末。悔しくなった藤野は本を買ったりネットで調べたりして絵を基礎から学んでいきます。来る日も来る日も描き続け、家族や友人から遠巻きに辞めるよう言われても机にしがみつけます。しかし小学6年生のある日、藤野は学年新聞に掲載された自分と京本の漫画を見て「やめた」と気持ちが切れてしまいます。藤野の絵も確かにうまくなってはいました。しかし相変わらず京本の方が上でした。才能の差を感じた藤野は、それ以来漫画を描くのを止めてしまいます。同級生と遊びに出かけたり、姉について空手教室に通ってみたりと、“普通の小学4年生”になります。
藤野は京本が自分の漫画のファンであったことを知り、再び漫画を描くことを決める
漫画に触れないまま時は流れ、藤野は小学校を卒業します。卒業式の日、藤野は先生から「卒業証書を京本に届けてやってくれ」と頼まれます。2人はお互いに学年新聞に漫画を掲載し合った仲だから、と。嫌々ながら京本の家に向かった藤野。鍵が開いていたので玄関に卒業証書を置いて帰ろうとしますが、奥から物音がします。家の人がいるのかと廊下を進んでいくと、角を曲がったところで大量の、自分のものよりも遥かに多い数のスケッチブックが積み上げられているのを目にします。そしてその奥には京本の部屋に通じる扉。藤野と京本の画力の差は才能ではなく、努力の差でした。藤野は一冊のスケッチブックの上に4コマ漫画の原稿を見つけると、思いつきで漫画を描きます。するとその漫画は手違いで扉の下をすり抜けて京本の部屋の中へ。藤野が慌てて家を出ると、あとから京本が追いかけてきました。部屋に入ってきた漫画を見て家に藤野が来たことに気がついたのです。同級生の藤野に「先生」をつけて呼び、たどたどしく「ファンです」と伝えてくる京本。藤野は慌て顔から一点、澄まし顔で京本のはんてんにサインを描き、「なぜ漫画を描くのを止めたのか」という京本の問いに、「賞に出す原稿を作っているから」とつい大見得を切ってしまいます。帰り道では初めてできたファンに喜びの感情を顕にし、小躍りしながら雨の中を走る藤野。そうしてまた藤野は漫画を描き続ける日々を再開します。
藤野キョウとして漫画家デビューした2人、しかし京本の美大進学によってコンビは解消することに
中学に進んだ藤野が京本とともに1年かけて完成させた漫画を出版社に持ち込むと、編集者は絶賛。賞で佳作を取り、藤野キョウとして漫画家デビューした2人は立て続けに雑誌に読み切り作品を載せていきます。そしてついには連載の話が。しかし京本は美大への進学を希望し、そこでコンビは解消となります。漫画家・藤野キョウは藤野一人になって連載に臨みます。プロとして来る日も来る日も初の連載漫画を描き続ける藤野。掲載順位のグラフは浮いたり沈んだりをしながら、作品の人気は徐々に上がっていき、ついにアニメ化が決定します。ところが連載が好調な一方で、藤野はアシスタントに悩まされていました。思うような背景を描いてくれる人材がいないのです。編集者との相談の電話を終え、作業に戻る藤野。そこへニュース速報が飛び込んできます。山形の美大で通り魔事件があったというニュースでした。そこは京本が通っている大学です。藤野は急いで京本に電話をしますが反応はありません。一向に繋がらない電話を切った直後、母親から着信。美大での通り魔事件の犠牲者の一人が京本だと知った藤野は、連載を休み、葬儀のために帰省します。京本の部屋の前に立ち、すべての始まりとなった4コマ漫画を発見する藤野。引きこもりで不登校だった京本を外の世界に取り出した一編でした。もしもそれさえなければ京本は外に出ず、死ぬこともなかったのではないか。なぜ漫画を描いてしまったのか。描いても何の役にも立たないというのに。藤野は激しい後悔とともに漫画をビリビリに破ります。すると破れた漫画の切れ端が藤野の手を離れて京本の部屋の中へ。そして現実はあり得たかもしれない“もう一つの現実”に分岐します。
もしもあの日漫画を描いていなかったら…あり得たかもしれないもう1つの現実と藤野の再起
もしも京本が外に出なかったら。もしも小学校時代に藤野と出会っていなかったら。分岐した世界において藤野の力を借りずに部屋の外に踏み出し、美大に進んだ京本。元の世界線と同じく通り魔事件の犯人と遭遇しますが、そこに一人の女性が現れて助けてくれました。京本はすぐに相手が漫画を書いていた同級生の藤野であることを見抜きます。もう一つの世界線ではそこで2人は初めて出会います。小学生で一度漫画を止めたはずの藤野がまた描き始めたことを知った京本は、家に帰って自分でも一編4コマ漫画を描いてみます。タイトルは「背中を見て」。すると京本が描いた漫画は次元を超えて元いた世界の藤野の元へ。別の世界線でも出会った2人が悲劇を逃れて藤野キョウとして花開く予感をさせつつも、“もしも”はあくまで“もしも”の話。残念ながら現実にはなりません。しかし時空を越えた京本の漫画が藤野を動かします。漫画を見て彼女の部屋に足を踏み入れた藤野は、自分の漫画の同じ巻が何冊も収まった本棚や、読者アンケートのはがきを見つけます。そして振り返った部屋の扉には、初めて会った日にサインを書いたはんてんが掛かっています。自分の漫画の“熱狂的なファン”としての京本の姿を発見した藤野。かつて藤野は京本に「なぜ漫画を描くのか」と問われました。その問いとともに思い出される2人の過去。ともに漫画を描いた日々。自分の漫画を楽しんでくれる京本の姿。現在に戻ってきた藤野の手元には自分の漫画の最新刊があります。京本の死によって漫画を描く意味を失いかけていた藤野は、京本の部屋の中でその答えを見つけ、作業場へと戻ります。デスクの正面の窓に、おそらくは別時空の京本から届いた4コマ漫画を裏向きに貼って、京本の背中を見ながら漫画を描き続けていくのです。
◆映画【ルックバック】原作との違い
ストーリーは原作と大きく違いがありません。設定変更や追加プロットなどはなく、原作漫画の物語がそのまま、アニメ映画に仕上げられています。そのため上映時間も58分とかなり短いです。しかし一方で細かな部分では原作になかった描写や、原作から膨らませた演出が見受けられました。
終盤の悲劇感をより強めた、原作にない編集者との電話のシーン
原作にはなかったシーンとして、映画では藤野が連載漫画家として成長していく過程が描かれました。浮き沈みする掲載順位のグラフと、変わっていく作業環境。藻掻きながらも連載を軌道に乗せ、アニメ化にまで持っていった、少女時代から変わらない藤野の努力ぶりが伺えます。特に印象的だったのが編集者との電話のシーン。藤野は作業場でたった一人作業デスクに向かいながら、編集者にアシスタントについて相談しています。思うような絵を描いてくれるアシスタントがおらず、ストレスを抱えている様子が激しくなる貧乏ゆすりからも読み取れます。連載作品のアニメ化が決定し、ここからが正念場。だというのにいいアシスタントがいない。おそらくこのとき藤野の頭には京本がいたはずです。もしも彼女がいてくれたら、きっと自分が望むような絵を描いてくれたはず。しかしそこへ飛び込んでくる通り魔事件のニュース速報。コンビを解消して以来、おそらくは最も京本を欲していたであろうタイミングでの急展開が、悲劇感と喪失感をより強め、その後の物語を深めています。この映画オリジナルのシーンは、藤野役を務めた河合優実の自然な演技も相まって、SNSで「すごい」「しびれました」「原作を凌駕した」と称賛の声が上がっていました。
原作にハマれなかった人こそ見てほしい、映画が示したある種の “正解”
【ルックバック】は絵と行間に魅力が宿る物語です。それゆえに漫画だと読み手次第で物語の速度が違います。セリフとあらすじだけを追う人と、絵の細部まで読み込む人とでは物語の感じ方も違ってくるでしょう。一方で映画は鑑賞者が全員同じ速度で物語体験をします。クリエイターが意図した速度とテンポで物語を追いかけます。クリエイターがある種の“正しい速度”を提示することによって、鑑賞者は物語と一体になることができるのではないでしょうか。“正しい速度”の一例として注目したいのは京本家からの帰り道で小躍りする藤野の序盤のシーンと、藤野が京本との共作の日々を振り返る終盤のシーンです。どちらもその後の藤野の行動に変化を与える重要なシーンとなっています。クリエイターが提示する映画【ルックバック】における“正しい速度”に乗って楽しむことで、藤野への感情移入とその後に来る感動がより深まるようになっています。原作と映画はストーリーこそ同じですが、感じ方はかなり変わるはずです。原作が話題になっていた当初、今ひとつハマれなかったという人もいるでしょう。そういう人にこそ、改めて映画で【ルックバック】を体験していただきたいです。
◆作品情報
【ルックバック】
全国公開中
原作:藤本タツキ「ルックバック」(集英社ジャンプコミックス刊)
監督・脚本・キャラクターデザイン:押山清高
美術監督:さめしまきよし
美術監督補佐:針﨑義士・大森崇
色彩設計:楠本麻耶
撮影監督:出水田和人
編集:廣瀬清志
音響監督:木村絵理子
音楽:haruka nakamura
主題歌:『Light song』by haruka nakamura うた : urara
アニメーション制作:スタジオドリアン
© 藤本タツキ/集英社 © 2024「ルックバック」製作委員会
画像出典:ルックバック公式サイト、ルックバック公式X