11月8日(土)放送の土曜プレミアム『世にも奇妙な物語35周年SP 秋の特別編』(フジテレビ系 午後9時~11時10分)の新作エピソードの1つは「七階闘争」です。
今回は『七階闘争』(主演:伊藤淳史)についてネタバレと考察を紹介します。
本作はマンションの7階に住んでいる森崎(伊藤淳史)が、突然退去を求められるところから物語が始まる。同じく7階に住む同僚の並川希(与田祐希)に誘われ、森崎は7階死守を誓う“七階市民”の集会に参加することになるが…。
【世にも奇妙な物語/七階闘争】のネタバレ
「#世にも奇妙な物語 35周年SP 秋の特別編」
お次は、「七階闘争」主演:伊藤淳史 です❗️ pic.twitter.com/b65cvnx3At— 「世にも奇妙な物語」公式アカウント✨😎 (@yonimo1990) November 8, 2025
「七階闘争」は…森崎北斗(伊藤淳史)が会社から自宅のマンションに帰ると、市役所の職員が待ち構えていた。聞けば「新しい部屋を用意するので、この部屋から退去してほしい」と言う。各地の七階で事件が多発したことを受け、すべての建物から七階を撤去すると国が決定したのだ。翌日、同じく七階に住む同僚の並川希(与田祐希)に誘われ、森崎は七階死守を誓う“七階市民”の集会に参加することに。他の仲間たちとともに建設中のマンションに行き、すべて7階に表示を変えるという「七階の刷り込み」など様々な活動に身を投じる森崎。しだいに森崎と並川の距離は近付いていく。しかしある日、“七階市民”のリーダー(笑い飯・西田幸治)が警察に捕まり……と展開。
リーダーが捕まった。SNSで“七階市民”の誹謗中傷もなされた。並川は「戦わないと」と森崎にいうが、森崎は「耐えるとき」という。並川は戦いに向かった。
以降、集会はなくなり、並川との会話も途絶えてしまう。そんな中、森崎の部屋の強制執行が決まる。すると、並川が森崎を訪ねてきた。並川は七階と運命を共にするという。森崎は反対する。
森崎は並川を抱きしめて「生きてくれよ、一緒に」と叫ぶ。並川は「とても嬉しいです。森崎さんとならどこまでも一緒に行ける。同志として」という。
並川は生まれたときからずっと七階で生きてきた。引っ越しても七階だ。「森崎さんと最後の時を生きたい」と並川。森崎は「最後じゃなくて、この先も一緒に生きていきたい」と訴えるが…。並川は「覚えておいてください。この七階からの光景を」と言い残して立ち去る。
並川は会社を辞めた。七階の撤去のおかげで犯罪が激減したと報じられている。
七階撤去に賛成の課長。森崎は「課長の犯罪率が高いというデータが出たら、標的になるかもしれませんよ」と課長に警告する。
七階が撤去されて3か月。他の階で犯罪が起きている。
最後まで戦っていた七階市民はどうなったのか分かっていない。
七階の犯罪率がゼロになり、世間の風向きが変わった。七階の評判が戻り始めている。
森崎はひとりで「七階の刷り込み」を実施する。
並川によるナレーション:「良かった、森崎さんだったら分かってくれると思ってました。」(おわり)
【世にも奇妙な物語/七階闘争】の考察
本作は、事件が全て7階で起きたことから、全ての七階を撤去しようとする政策が決定。国の命令なので抗うことができないのですが…。主人公はカワイイ同僚の女性に誘われて、反対活動に巻き込まれていきます。
7階を爆破して消滅させても8階が7階になるだろ!と主人公と一緒に視聴しながらツッコミを入れてしまいました(笑)
そして、なぜ並川がそんなに七階に強く愛着あるのかが不思議。ずっと七階に住んでいるからって…。
この「七階」はメタファー(比喩)で、何かに置き換えるといいのかな?と思いながら視聴していたのですが、上手く置き換えられず、言語化できず、気づいたら終わってました(笑)
そこで、七階の意味は何?という考察をしていきます。
七階の意味は非常識
演出・アベラヒデノブさんは「『七階闘争』は“非常識の復讐”のような、凄まじくもシュールで愛おしい物語です。」と解説しています。
非常識の復讐…。「常識」側が国、世間の声などでしょう。「非常識」側が七階撤去に反対する側、つまり主人公や並川さんたち。
でも、ちょっとこのままだと解像度が低いというか、モヤモヤが残るので、違う意味はないか?さらに考察を進めていきたいと思います。
七階の意味は不条理に抗う者たちのこと
「七階闘争」という作品は、世の中の不条理との戦いを風刺しているに思いました。
七階の犯罪率が高いから、七階を撤去すれば犯罪をなくせる…という政策自体が不条理。
そして、国に無理やり七階を撤去させられることや、国の命令には従わないといけないということも不条理。
国が強制する不条理といえば、太平洋戦争時、日本は国民を兵隊にとりました。これも不条理なこと。
ということで、七階の意味は不条理に抗う者たちのこと、と考察したいです。
七階の意味は誰かにとって大切なもの
並川は「何もない場所でも、誰かにとっては、かけがえのない所ってこともあるじゃないですか」「私にとって七階は家族」と言っていました。
七階は他の人にとっては撤去すべき場所でも、並川にとっては大切な場所でした。
特別じゃないものが、誰かにとって大切なものであるという事実。
サン=テグジュペリの『星の王子さま』では、「きみのバラをかけがえのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ」とあります。
並川にとっての七階も同じように、時間をかけて、かけがえのないものになったのかもしれません。
七階の意味はターゲット
劇中で、主人公の森崎が課長に対して、今度は「課長」がターゲットになるかもしれないと忠告しています。
「七階」というのがターゲットにされただけ。
これ、小説&映画の「リアル鬼ごっこ」を思い出します。西暦3000年。 佐藤という姓を持つ国民が増えすぎたので、新たな王様が、佐藤を減らすため、リアル鬼ごっこという政策を発令します。佐藤さんが追われ、処刑されていく理不尽な設定です。ここではターゲットが「佐藤」姓。
一方、『七階闘争』ではターゲットが七階。もし血液型のA型がターゲットだったら、もし鈴木さんがターゲットだったら。
今作は何かがターゲットになる怖さが描かれていると思います。
七階の意味はマイノリティ
七階の意味はマイノリティのメタファーにも思いました。
マイノリティとは、社会において数的に少数派であり、主流の文化や価値観から外れた集団や個人を指します。
劇中では、七階死守を誓う“七階市民”の会の人たちは、転居をごねてお金をつりあげようとしてる、お金が欲しいんだ!というデマが流れます。その際、否定しても少数意見だから通らない、という趣旨の展開になっていきました。
課長からは“七階市民”は変な人とみられてましたね。シュプレヒコールもやっかいがっていました。少数派の声はかき消され、蔑まれ、虐げられてしまう。
そんなことを思ってしまいました。
七階の意味は正義や世間の声
『七階闘争』の終盤、七階の評判が高まります。他の階で犯罪が起きたりしたからですかね。
あと、七階が抑止力になっていたのでは?という意見も報じられました。批判してたくせに勝手なものです。
劇中で「七階」の評判が変化していくのが、とても意味深でした。
これを見て、私は七階は「正義」のメタファーに感じました。
正義と悪は立場が変わると、変わります。時代や状況によっても変わります。
戦争時は人をたくさん殺すことが正義です。平常時では殺人罪になります。
また、「世間の声」とも解釈できます。大衆の勝手な意見というやつです。
七階は、そんな移ろいやすい価値観である「正義」「世間の声」のメタファーに思えてなりません。
七階の意味はエンターテインメントだから考えなくていい?!
主演の伊藤淳史さんは「ジャンルは違えど“なにこれ!?”みたいな不思議さと奇妙さを持つ作品になっていて、これぞ『世にも奇妙な物語』だなと思いました。」とコメント。
たしかに「なにこれ?」と奇妙な作品になっています。その上で、伊藤淳史さんは「エンターテインメントとして見ていただくと、すごく面白くなっていると思いますので、ぜひ楽しんでご覧いただけたらうれしいです。」ともアピールしています。
奇妙な世界に乗っかり、エンターテインメントとして楽しむこと。これがある意味、正解かもしれません。(笑)
まさにザ・奇妙な物語だった本作。皆さんはどう感じましたか?

