【大恋愛】アート引っ越しセンターのコラボにみる新しい広告のカタチ

出典:TBS 金曜ドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」公式サイトより

「大恋愛~僕を忘れる君と」のドラマの舞台には、元小説家の間宮真司(ムロツヨシ)が勤務するアート引っ越しセンターがそのままの企業名で登場する。TBSとアート社がコラボする形で実現したようだが、このコラボに新しいテレビ広告の在り方を予感させる。

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アート引っ越しセンターは「大恋愛」のスポンサーではない

ドラマ【大恋愛】の提供スポンサーは?

P&G、森永乳業、小林製薬、KIRIN。現在放送されている「大恋愛~僕を忘れる君と」(TBS系)の番組スポンサーである。番組の出資者ともいえるスポンサー群にアート引っ越しセンター(アートコーポレーション株式会社)は入っていない。これはちょっと意外だった。

10月1日付のスポニチの記事によると、「引っ越しシーンにアート引越センターが全面協力。間宮や先輩の木村(富澤たけし)、後輩の小川(杉野遥亮)が着用する制服や段ボール、トラックなどは実際にアート引越センターで使用しているもの」とある。

大概、この手のものは、あ、モデルはここだろうなという、それっぽい会社名や商品名が使われる。たとえば、ドラマ中、割と大事な役割を果たす「黒酢はちみつドリンク」は実在する商品ではないようだが、タマノイの「はちみつ黒酢ダイエット」をモデルにしたようだ。

ドラマ中にスポンサー企業の商品がそれとなく使用されていることはよくあるが、かなり目立つポジションでリアルに存在する企業(しかもスポンサーではない)が登場してくるのは正直、びっくりした。

録画やネット視聴に強い広告手法

で、思ったのである。リアルタイムでの視聴者が減り、録画やタイムシフトマシンやネット視聴に流れる中で、こういう見せ方の方が広告効果が大きいのではないかって。なにしろドラマ本編に出てくるわけだから、スキップできないところが強みだ。宣伝する気満々のあまりにもいやらしい出し方をすれば、視聴者の反感を買いそうだが、これくらいの出し方であれば自分的には違和感がない。

【大恋愛】放送中のツイート数の変化

実際、1週間のツイート数を「アート引っ越しセンター」(図)で調べてみると、放送された放送後の10月13日に跳ね上がっている。

出典:Yahoo! JAPAN リアルタイム

同様に「黒酢 はちみつ」(図)でやってみると、こちらも同じ傾向がみられる。

出典:Yahoo! JAPAN リアルタイム

【大恋愛】のコラボトラックが街中を走る?

おそらく広告代理店が噛んでいるのだろうが、やはり違和感なく受け入れられたのは、ストーリーの中に無理やりねじ込んだのではなく、「大恋愛」の脚本そもそもが「引っ越し業者」を設定していたからだろう。ドラマ用に書き下ろされたオリジナル脚本というのはその意味で小回りが利く。

アート引っ越しセンターは番組とコラボし、都内で「尚と真司を乗せた大恋愛引っ越しトラック」を5台限定で走らせるそうだ。このトラックを撮影し、ツイッターやインスタに「#大恋愛引越しトラック」とタグをつけて写真を投稿すると、抽選で番組オリジナルグッズが当たるキャンペーンも実施される。

ドラマの世界観を追体験したい、共有したいという視聴者は少なくない。事実、アニメやドラマの聖地巡礼は経済効果を生む。去年放送された「陸王」もロケが行われ作品の舞台ともなった行田市を中心に埼玉県に約10億円の経済効果を生み出した(日本経済新聞)。その意味で、この「トラック」イベントも話題性抜群だ。

「大恋愛」のドラマの中に何度も登場することで、アート引っ越しセンターの認知効果は上がったはずだ。ムロやサンドの富澤の仕事ぶりを見て、もしかしたらアート引っ越しセンターに就職先として興味を持つ若者が出てくるかもしれない。あるいは懇切丁寧な引っ越し作業を見せることで、企業イメージの向上に寄与するかもしれない。

新しい広告としてのドラマの価値

もちろん「半沢直樹」みたいに企業の悪を描くようなドラマだとむしろ逆効果になってしまうが、就活もの、新入社員ものなどがテーマのドラマだったら、その舞台に使われることは企業にとってプラスである。

「大恋愛」が引っ越しシーズンにあたる1~3月期のドラマだったらより効果があったのに。ふとそんなことを思ってみたりもしたが、そこまで露骨だと「あざとい」なんてネット民に批判されてしまうかもしれない。言えることは、アート引っ越しセンターは、このドラマで通常のスポンサーよりおいしい思いをしているということだ。

さて、ねらい目は「黒酢はちみつドリンク」。スポンサーのKIRINはこれを商品化してぜひとも売ってほしい。

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