映画【野いちご】のキャストとあらすじと感想!老人の見る夢とは(若干ネタバレあり)
出典:https://eiga.com/movie/47662/gallery/2/
映画「野いちご」のちょっとした紹介
「イングマール・ベルイマン生誕100周年映画際」は今年の7月に彼の生誕100周年を記念して開かれました(全国各地でまだまだ開催中です!)。
数々の美しい作品を生み出してきたスウェーデンの巨匠です。
彼自身は2007年に享年89歳でなくなりましたが、数々の名作は今なお生き続けています。
少し遅れましたが、今回はこの映画祭を記念して彼の超名作の1つ、映画「野いちご」のあらすじ、キャスト、感想を主に紹介します。
この作品はある老教授を描いた少し奇妙で美しい作品です。
ベルリン映画祭金熊賞など多くの賞を受賞した映画史に残る作品でもあります。
映画「野いちご」のあらすじ
スウェーデンのある老教授は次の日に名誉博士号の授与式を控えているにも関わらず飛んだ「悪夢」を見てしまします(この映画には「夢」がいくつか出てきます。とても奇妙で面白いので後ほど紹介します!)。
老教授イーサク(ヴィクトル・シェストレム)はそんな悪夢を見たためか早起きをして、飛行機で行くはずの予定を変えて車で行くことにします。
そこに同乗するのはイーサクの義理娘マリアンヌ(イングリッド・チューリン)。
序盤の道中、彼女は「あなたはエゴイストだ」「あなたの息子はあなたを憎んでいます」など涼しい顔でイーサクの頑固で冷たい性格を徹底的に批判して、彼の内面をボコボコにします。
凹んだイーサクは導かれるように彼が昔過ごした森の中の一軒家にたどり着きます。
マリアンヌが水浴びをすると言ってイーサクが一人になると、彼はかつてそこにあったほろ苦い出来事を思い出します。
結婚の約束をしていた従姉妹のサーラ(ビビ・アンデショーン)の思い出です。
そんな思い出に浸っていると、突然髪の短い金髪少女がイーサクの前に現れます。彼は思い出から現実に引き戻されます。
その少女は今からイタリアに行く予定のヒッチハッカーでした(彼女の名前もサーラです)。
そこでイーサクは連れの二人のボーイフレンドも一緒に車に載せることに。その3人は素直でキラキラした明るい若者でした。
彼らを含め、イーサクは様々な人たちに道中で遭遇します。
イーサクに子供の名前をつけて欲しいと願うほど尊敬しているガソリンスタンドの夫婦やとんでもなく仲の悪い夫婦、意地悪な96歳の彼の母など…。
彼はそんな中で若者、中年、老人、そして自分の過去を見つめながら「孤独」な現在を探って行きます。
映画「野いちご」の主要キャスト
出典:https://yansue.exblog.jp/20910106/
イーサク・ボルイ:ビクトル・シェストレム
医者として活躍し、精密な医療器具まで開発しました。人間性も含め世間的には評価が高いですが、親族からは「冷たいエゴイスト」だと思われています。
出典:https://yansue.exblog.jp/20910106/
マリアンヌ:イングリット・チューリン
イーサクの息子と結婚しましたが、ある事がキッカケで夫と距離を取っています。
出典:https://alchetron.com/Gunnar-Bj%C3%B6rnstrand
エーヴァルド:グンナール・ビョルンストランド
イーサクの息子でマリアンヌの夫。父と同じ医者。しかし内面も父と似て冷たい性格。
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サーラ(婚約者)(ヒッチハッカー):ビビ・アンデショーン
「過去」のサーラと「現在」のサーラ、両者ともイーサクの心の中に強く刻み込まれます。
老人の見る「夢」について(若干ネタバレ有り)
映画内にはイーサクの見た夢が鮮明に映し出されます。
それがとてもリアルで(矛盾していますが)、奇妙で、まさに私達が見る夢そのものなのです。
そんな奇妙で突飛で豊かなイーサクの夢を紹介します。
夢①-イーサクが授与式の前日に見た夢
「朝の散歩に出ると見知らぬ道に迷い込み
人っ子一人いない寂しい建物が静かに立つ
頭の上にある時計台を覗き込む
しかしそこには時針も分針も秒針もない
自分の懐中時計を確認しようとしてもそこにも針がない
困惑したイーサクは時計台を背に少し歩き出す
しかし何かに気が付いたのかまた来た道を戻る
そこで更に後ろを振り向くと、自分と同じような出で立ちをした男が背を向けて舗道に立っている
彼は男に近づき肩を掴んでこちらを振り向かせる
するとその男の顔はくしゃくしゃっとしている(表現が難しいですが、例えばよく芸人が網タイツを顔に被せられて引っ張られている時の顔です)
イーサクが彼の顔を確認すると、その男は倒れて体がなくなってしまう
次に彼の前に現れたのは棺を乗せた馬車
その馬車から棺がイーサクの目の前に落ちてくる
衝撃で空いた棺の隙間からは手が
その手はイーサクの腕を掴み這い上がって体を起こそうとする
起き上がったその正体を確認した彼は驚愕
それは自分と瓜二つのイーサクその人だった」
非常に気味の悪い夢ですね…。
面白いのが「朝のカンカン照り」の元で展開しているという所です。
ホラー映画の「夜にゾンビがでる」のような決まりきった描写ではなくあくまで不条理な場面になっています。
夢②-イーサクが物語の最後に見る夢です。
「昔過ごした森の中の一軒屋が現れる
親戚の子供達がゾロゾロと元気に出てくる
すると、老いたイーサクの方へサーラが颯爽と走ってくる
あなたのお父様はどこなのと声をかけます。
その横では子供達が風に吹かれながらとても小さな船着場ではしゃいでいる
手を握ってもらいながらイーサクは森を抜け父と母の元に案内される
少し離れた低い岸で静かに釣りをしている父とその後ろに座っている母
イーサクはこの静かで懐かしい風景に思わず頬が緩み、うっすらと涙を浮かべる」
とても美しい場面です!
清々しいし、見ている方の気持ちも落ち着きます。まさに悪夢とは正反対の夢です。
実はもう1つ悪夢があるのですが、そっちもかなりぶっ飛んでいます。
イーサクが医師の第一義務に答えられず有罪判決を受けたり、妻との間にあった出来事を見たりします。
どの夢も見ていて不思議なものなので是非「映像」で確認して見てください。
感想とちょっとの考察
「老いる」というのは歳をとる、つまり「時」を重ねるということです。
イーサクは時を重ねる過程の中で、たくさんの知識と名誉博士号を取るほどの社会的地位を手に入れました。
そんな彼でも「孤独」を感じ、義理の娘にはボコスカに言われ、悪夢にうなされます。
夢の中でサーラに鏡を向けられた時には現実を突きつけられ「苦しい」と一言漏らしてしまいます。
私はこんなイーサクが哀れで仕方ないと思いました。
しかしこの作品は決して悲観的なものではありません。
イーサクは道中様々な人にあってゆくことで「孤独」を受け入れ対峙しようと不器用に努力をします。
歳を取ることで内面的に成熟し、考えも凝り固まりがちな中、孤独や運命を受け入れて諦めるのではなく、それに自ら立ち向かって行く。
そんなキッカケを与えてくれたのは家族だけでなく、ヒッチハイカーや仲の悪い中年夫婦などの見ず知らずの人達でもあるのです。
この映画の優れた所は映像美とこうした人間臭い点を上手く描いて肯定している所にあると思います。
こんな人に見て欲しい
「孤独を感じている人」
「トラウマがある人」
「歳を取ることに不安がある人」
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