多部未華子主演のドラマ『シャドウワーク』がWOWOWにて放送・配信されます。佐野広美によるの人気小説が原作でDV被害者女性たちが生死を賭けた選択に迫られるミステリー。
本記事では、シャドウワークの原作小説のあらすじ、ネタバレと結末を紹介します。
【シャドウワーク】ネタバレ
あらすじ
紀子(多部未華子)は繰り返される夫の暴力から命がけで逃れ、フラッシュバックに苦しみながらシェルターにたどり着く。一方、ある女性の死の謎を追う刑事の薫(桜井ユキ)。出会った二人の前にはさらに多くの死が待っていた。それぞれに迫られる究極の選択は、己の死かDV夫への罰か。身近な者からの苛酷かつ執拗な暴力と支配・DVに潜む恐怖と闇を描く。
DV被害者が住む志村家とは?
志村家は誰にも内緒の施設。DV被害者である女性を匿っている。一般的な江の島にある2階建ての古い家。運営者は志村昭江(寺島しのぶ)。パン屋を営み、住人はパン屋で働く。入居数は4名でパン屋の従業員寮となってる。昭江は利益のためではなくDV夫から逃れてきた女性たちが独り立ちできるように促している。看護師の間宮路子(石田ひかり)はDVに悩める女性を見つけ出し志村家を紹介。サポート的存在となっている。
20年前、DVに苦しむ昭江と路子はシェルターで知り合った。DVの夫に殺されかけた昭江は夫を刺殺。路子とふたりで志村家の庭に死体を埋めた。路子の夫は資産家。ふたりで協力し溺死させる。夫の遺産で志村家を買いとりパン屋を開業。DV被害者を匿う。匿われた住人が新たに施設を開き、同様の施設が全国各地にある。
宮内紀子はDV被害者
宮内紀子・30歳(多部未華子)はDV夫から逃れるためシェルターに入居後、間宮路子から「志村家」を紹介される。救急搬送が3度。間宮路子は看護師で病院で知り合った。両親はすでに他界。一人っ子の紀子は友人もおらず、頼れるのは路子だけ。
紀子のほかの入居者は、奈美(トリンドル玲奈)31歳、洋子(上原実矩)24歳、雅代(須藤理彩)45歳。いずれもDV夫から身を隠すために志村家に入居。志村家ではテレビもなくスマホも持たない。パン屋で働きその給料は志村家を出るときの資金になる。
夜にゲームをするのが日課。ゲームは昭江が考えだしたもので、思考を研ぎ澄ますようなもの。
紀子は志村家の生活になじみ穏やかな日々を送るようになる。それでも夫がいつ現れるかと思う不安は拭えない。
薫を襲った犯人は?
北山薫は刑事。夫・晋一(竹財輝之助)は官警視庁捜査二課。DVを原因として離婚調停を申しこんだら握り潰され館山署に異動になった。西ヶ崎で今井美佳子・32歳の溺死体が発見される。自殺で片付けられたが、薫はDVの恋人・松原幸次・29歳を疑う。2か月後、松原が心不全で死亡。薫は独自で捜査をすすめていく。佳子の元夫はDVで事故死していた。疑惑を深める薫は美佳子が路子の知り合いで志村家にいたことを突き止める。
志村家をたずね、路子と昭江から話を聞きだす。法子ら住人の写真を撮り、調査を深めようとしていたとき、片桐久文・27歳に襲われた。片桐は晋一が雇っていた。
その後、片桐は薫から逃れようとしてバイクで逃走し死亡。事故死扱いで警察は動かず、晋一の犯行は公にならない。
志村家のルール・DV夫殺害犯人は?
志村家のルールは入居している女性の夫を殺す事。路子の看護師の特性をいかし、中毒死、心不全、事故死などの手口を用いる。疑われないために、全国各地にある施設で交換殺人をしている。夫が死んだのち、その妻である女性は施設を出る。新たな被害者が入居するというシステムでこれを「持ち回り」と呼んでいる。
つまり、奈美の夫は他施設の女性らが殺害。紀子らは他施設の野口晴美の夫を殺害という具合。
紀子は入居して半年後ほどして、その事実を知ります。この時、紀子は躊躇いもなく殺人に加担します。志村家での日々はある意味、洗脳とも思えますが、DVの恐怖から生まれる殺意は当然のことだとも思える展開です。
結末・究極の選択
美佳子の夫を殺したのは他施設の人間。
美佳子を殺したのは松原。
松原を殺したのは昭江たち志村家のメンバー。
薫を尾行していた晋一は志村家の秘密を知り、秘密を隠すかわりに昭江と路子に薫を殺してほしいと依頼する。
昭江らは薫を志村家に呼びだし晋一に殺させるように仕向ける。晋一が薫を殺そうとしたところを紀子らが襲い気絶させる。昭江は薫にこれまでの経緯を話す。晋一を殺すか否かの選択を薫にゆだねる。
殺さなければ殺される、薫は晋一を殺す選択をする。晋一の遺体は志村家の庭に埋まっている。
1年後。夫の清明(森岡龍)の殺害に成功し紀子は志村家を出る。薫に会いに行く。
薫は警察を辞め、カウンセラーの資格所得中。ネットでDV被害者の悩み相談を請け負っている。
【シャドウワーク】の感想・解説
DV被害者の身の置き場がないことを鮮烈に描いています。紀子視点、薫視点が交互に描かれ、ラストで昭江と路子の犯行が明かされます。読み進める中、なんとなく、このふたりもDV被害者だろうというのは察することができます。DVにあい誰にも話せず苦しむ女性は確実にいます。夫を憎み死んでしまえと思うことだってあるはずです。ただし、殺したくても殺せないというのが現実。もし、この小説のように志村家があったなら、そこに行きたいと思う被害者は多いでしょう。
被害者でありながらも加害者になっていく様には怖さ感じます。閉鎖された志村家の中で生活をしたら、人を殺すことに麻痺していく。それが当然だと思っていく。殺されないためにそれしかない。歪んだ精神が正当化していくのはやはり恐怖です。
DV被害者ですと声を大にして叫びたくても怖くて叫べない。手を差し伸べたくても怖くて出せない。異常に妻に執着する夫。そんな、現実社会を浮き彫りにした物語です。
志村家は小津安二郎監督の映画『麦秋』を連想させる一軒家になっています。とても古い映画なので鑑賞していない方も多いかと思いますが、ストーリーとは別に古民家のイメージを膨らませて読み進めるという楽しさもあります。
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あまりの衝撃に言葉を失う。
絶望の淵に追い込められた者にしか分からない善。
これがもし本当に…と考えたら。
ただただ衝撃的な作品だった。
・#講談社#読書記録 pic.twitter.com/Yg2w0X3WYD— ⭐︎kiko⭐︎📚 (@ichgoguma5) October 10, 2022
シャドウワーク / 佐野広美 著 / 講談社
DVの被害を受けた人達のシェルターで過ごす小説かとおもったら…
ミステリー小説でした。面白かったです。
DVの描写も怖くなるくらいでした。#シャドウワーク #佐野広美 #講談社 #読書 #読書記録 #読了 #読了記録 pic.twitter.com/mJIVyfLdkX
— 永夢👻*.+゚ (@love_yakumo_) March 20, 2023
【シャドウワーク】原作者・佐野広美
シャドウワークの原作者を紹介します。
佐野広美(さのひろみ)
1961年横浜市生まれ。横浜国立大学卒。
島村匠名義の『芳年冥府彷徨』で第6回松本清張賞を受賞し作家デビュー。
『聖戦』『上海禁書』『菊の簪』など、歴史小説や伝奇小説まで幅広い作品を手掛けている。
『わたしが消える』で第66回江戸川乱歩賞を受賞。佐野広実として再デビュー。
『誰かがこの町で』もドラマ化になっています。
佐野広美氏は「日常を否応なく脅かされた当事者には当人しかわからない不安や恐怖や怒りがあるだろうし、今起きている問題の多くは、生活に密着した場所で起きているように思う。だから余計怖いし、しんどいし、それがひいては政治や社会の問題にも繋がってくるという、人間関係や社会の話を私は書いているんです」「DVもパワハラも構造は一緒で、『でも世の中、そういうものだから』と、習い性になるのが一番怖い。本当はどうでなきゃいけないのかを自分で考え、ダメならダメと、我慢しないで言わなくちゃダメなんです。自分の問題なんだから。」と語っています。
ハラハラというのではなくジワリと恐怖が襲ってくる本作。楽しめる作品です。ぜひ、ご一読を。
ドラマはWOWOWで配信。ドラマもお楽しみください。
