映画【国宝】原作ネタバレと感想!小説の最後、結末ラストは美しき狂気、作者吉田修一

国宝・ネタバレ

吉田修一小説・映画【国宝】のネタバレと感想を紹介します。
歌舞伎の世界に生きる壮絶なる生涯を描く【国宝】。結末ラストは目を見張る光景に!

本記事では映画原作の小説【国宝】のネタバレを結末まで、感想・レビュー、実話について、原作者吉田修一をお届けします

【国宝】原作のあらすじ

1964年元旦、長崎の老舗料亭「花丸」。侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、この国の宝となる役者・立花喜久雄は生まれました。任侠の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌を持つ喜久雄と歌舞伎の世界に生まれた大垣俊介の半生を描きます。

【国宝】は吉田修一作家生活20周年記念作品、朝日新聞出版10周年記念作品で上下巻で刊行されている小説です。上巻(青春篇)では若き頃の喜久雄と俊介、下巻(花道篇)は喜久雄と俊介の人生結末までを語り口調で描かれています。

【国宝】登場人物

  • 立花喜久雄(花井東一郎)…<吉沢亮>
    昭和25年に立花喜美の長男として長崎に生まれた。
    昭和40年、二世半田半二郎のもとで修業を積み、昭和42年花井東一郎を襲名し初舞台。
    以来、上方を中心に歌舞伎の舞台経験を積み、昭和48年からは東京での出演も増える。
    鶴若や小野川万菊らの薫陶を受け修行に励み歌舞伎女方の伝統的技法を体得。
    娘道成寺、鷺娘、源氏物語や阿古屋、曽根崎心中など。歌舞伎を代表する女方。
  • 大垣俊介(花井半也):花井半二郎の息子<横浜流星>
  • 花井半二郎:歌舞伎役者、丹波屋の二代目<渡辺謙>
  • 福田春江:喜久雄の恋人<高畑充希>
  • 大垣幸子:俊介の母<寺島しのぶ>
  • 彰子:歌舞伎役者の娘<森七菜>
  • 徳次:立花の舎弟

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【国宝】原作のネタバレ

映画「国宝」の原作となる小説【国宝】のネタバレを紹介します。

【国宝・上巻】のネタバレ

舞台は名古屋から大阪に!

昭和27年・正月・長崎。この日は大雪だった。
老舗料亭「花丸」にて、立花組の新年会が壮大に行われる中、愛甲会の辻村が歌舞伎役者の丹波屋の二代目・花井半二郎を連れてきていた。喜久雄と徳次は舞台で歌舞伎を披露。半二郎の目にとまる。
この時、喜久雄は14歳で中学生。立花組員の徳次は16歳。
喜久雄の父であり立花組の組長・権五郎が殺される。雪は権五郎の血で染まる。

1年後。
喜久雄は恋人の春江と大晦日を過ごす。春江の母はスナックを開いている。
鑑別所から逃げてきた徳次が現れる。
ほとんど中学に行かなかった喜久雄だが、父の仇撃ちを決意し学校へ行く。この日は父を襲った敵、宮地の大親分が挨拶をするからだ。宮地を襲った喜久雄はその場で教師の尾崎に取り押さえられる。
喜久雄は入れ墨を入れる。

尾崎が宮地に掛け合う。喜久雄に危害を加えないことを条件に喜久雄は長崎から出ていくことに。母マツの計らいで大阪の半二郎の家に住むことになる。

マツは義母。血は繋がらない。生母・千代子は死んでおり、マツは生母の世話をしていた権五郎の愛人。のちに、後妻となり、喜久雄を我が息子として育てていた。

喜久雄と俊介の出会い

喜久雄は半二郎の息子・俊介、その母の幸子、世話役の源吉と暮らし始め、歌舞伎の稽古に勤しむことになる。

春江が喜久雄を追って大阪にやってきた。喜久雄は芸者の市駒(いちこま)と出会う。徳次はお笑い芸人の弁天と仲良くなる。

喜久雄は花井東一郎(とういちろう)を襲名。
昭和40年。喜久雄17歳で初舞台。高校は中退。一方、花井半弥の名を持つ俊介の初舞台は4歳。

喜久雄は、歌舞伎を仕切る興行会社「三友」の社長・梅木が連れてきた新入社員の竹野と出会う。
長崎の実家では、マツが女中として働いていた。権五郎の死後、立花家は貧困生活を強いられていた。にもかかわらず、マツはそれを内緒にして半二郎に喜久雄の生活費を送っている。
この頃、喜久雄と俊介の女形コンビの舞台は大盛況を収める。

俊介の家出

半二郎が交通事故に遭い、梅木の指示で喜久雄が代役を務めることに。
喜久雄は舞台を無事に抑める。葛藤を抱えた俊介は「探さないでください」と書き置きを残し、春江とともにいなくなる。

喜久雄は二人の仲を疑ったことはなかった。

俊介の失踪により、喜久雄は幸子の心中を考え半田家を出る。
梅木によって3か月の舞台に立つが今ひとつ。歌舞伎界において喜久雄はまだまだ素人に毛がはえたようなものだった。

喜久雄、20歳。映画出演に踏み切る。
半二郎は糖尿病を患い緑内障になる。視力が衰えていき、喜久雄が手となり足となっていく。喜久雄が三代目・半二郎を襲名。半二郎は白虎を襲名。襲名披露興行初日。半二郎は舞台の上で吐血し倒れる。

半二郎は、糖尿病とすい臓がんを患い、梅木が異動になり権力を失う。喜久雄は立女役者、若鶴のもとで芝居をすることになる。この日から喜久雄はいじめに遭い、地方巡業での芝居を強いられていく。

喜久雄25歳。半二郎が死を迎える。死に際に半二郎は俊介の名を叫ぶ。喜久雄は強い血の繋がりには勝てないと感じる。半二郎の大阪の自宅は借金の肩に三友が譲り受けることに。借金の1億2千万を喜久雄が返済することにする。

この頃、喜久雄が仲良くしていた、相撲とりの荒風関が引退をして田舎に帰る。
喜久雄は端役ばかりの日々。弁天を通して映画出演するも、うまくいかず。辞めろとまで言われる始末。
喜久雄は夜の町で飲むまくるように。喜久雄は結婚を望まず愛人である芸者・市駒のもとで暫く暮らす決意をする。

俊介が見つかる!喜久雄は端役の日々を送る

竹野と女形役者の万菊は出向先の大阪の芝居小屋で俊介をみつける。俊介は舞台に立っていた。
俊介は父の死を知り東京に。喜久雄と再会する。

俊介には春江との間に3歳の息子・一豊がいた。

俊介の復帰が決まり、春江、幸子、一豊は東京に出てきて俊介と暮らす。
脚光をあびる俊介とは裏腹に喜久雄は相変わらず端役の日々。
喜久雄は「ここから這い上がれ」と自身を奮い立たせる。

【国宝・下巻】のネタバレ

喜久雄と俊介が共演

喜久雄を悪者にし俊介復活劇を企む竹野は、喜久雄に隠し子がいることをリーク。これにより市駒との間にできた娘・綾乃の存在が世間に知られる。喜久雄は、大阪の屋敷を三友に返し借金を俊介に移譲。
喜久雄はなんとかして舞台に立とうと、彰子の父、大物歌舞伎役者の吾妻千五郎の後ろ盾欲しさに彰子を誘惑。当時婚約していた彰子は婚約破棄する。しかし、千五郎は猛反対。
この頃、俊介の方では、春江の母の恋人の野田が雑用をするようになっていた。

4年後。千五郎からは勘当されるも彰子の母のつてで曽根松子(新派の大看板女優)が喜久雄を救う。喜久雄は、この時の舞台で脚光を浴びる。
喜久雄と俊介は、大者女形の小野川万菊の稽古を受けることになる
俊介は芸術選奨受賞し喜久雄は祝福する。

喜久雄は個人事務所を設立。彰子が社長。
鷺娘が好評となり海外への足掛かりとなる。パリのオペラ座へ。
しかし、喜久雄は任侠との繋がりが暴露され世間からバッシングをうけ謹慎に。

京都に住む13歳の綾乃が反抗期に入り家出。チンピラとつるんでいたのを徳次が助ける。徳次はこの時、示しをつけるため小指を失う。徳次が立ち直れない綾乃を東京に連れて帰り、春江が引き取る。

時とともに喜久雄を認めた千五郎は三友とかけあい喜久雄は表舞台に立てる。条件は今後一切暴力団と付き合わない。
こうして、喜久雄と俊介の共演舞台が実現する。

俊介の死

舞台は大評判。徳次の友人である弁天は売れっ子芸人に。
喜久雄には蝶吉という弟子(付き人)も。
俊介は40代になり白虎を襲名、半弥を一豊に譲る。

白虎と半弥の襲名披露の舞台で俊介は一豊の前に豊生という息子がいたことを明かす。
過去…豊生は突然死をとげ、俊介は自分を責め続け、薬物を依存に。この時、俊介を救ったのが野田だった。

万菊は認知症となりひとり静かに亡くなった。綾乃は喜久雄の開いた相撲部屋との飲み会で知り合った大雷関と結婚し女の子がいる。

俊介はドラマにも進出し大忙しの中、脚の壊死が見つかる。
切断を余儀なくされ、俊介は義足の生活に入る。

俊介は義足で舞台復帰。千穐楽の翌朝、意識障害に。
一豊を喜久雄が預かる。
俊介が亡くなった日、喜久雄は舞台に立った。

喜久雄が国宝候補に

一豊は花形歌舞伎の大看板に成長したものの、ひき逃げ事故を起こし無期限の謹慎処分になり、喜久雄の世話をすることに。
綾乃は相撲部屋のおかみに。
喜久雄が舞台で男に襲われる。

喜久雄は俊介亡き後、数々の芸能賞を受賞。人間国宝の候補に選ばれる。
一豊は、モデルの美緒と結婚。
3年の謹慎を経て、舞台復帰するが、まだまだ一流にはなれない。

喜久雄は歌舞伎役者として成功したものの、孤独でもあった。頭の中は常にお芝居のことしかなく、精神が病んでいく。周囲は気づきながらも歌舞伎界での喜久雄を失うことができず、見て見ぬふりをしてきた。

年明け。
一豊の妻が妊娠。
喜久雄は辻村に会う。30年振りの再会だ。
辻村はガンを患い死期が迫っていた。最後に喜久雄に会いたいという願いを聞き入れたのだ。

辻村は喜久雄の父を殺したのは自分だと白状する。喜久雄は常に喜久雄を助けてくれた辻村を許す。

春江は弁天を頼りバラエティー番組に出る。お金のためと腹をくくったのだ。

【国宝】結末ネタバレ!

国宝・喜久雄最後の舞台

舞台に立つ前、喜久雄は彰子に伝える。
「いつまでも舞台に立っていたい。幕を下ろさないでほしい」

こうして喜久雄は舞台に立った。この時、竹野は「国宝の認定通知」を手にしていた。

客席では綾乃と春江が徳次を待っていた。
徳次は中国に渡り成功し会社社長になっていた。徳次は喜久雄の歌舞伎座へと向かう。

阿古屋の幕を引く瞬間、喜久雄は「きれいやなぁ」と呟き、歌舞伎座から出ていく。
舞台衣装のまま、花魁姿の喜久雄は銀座のスクランブル交差点に立つ。
外は雪景色。

語り手「どうぞ拍手を送ってやってくださいまし」

<完>

【国宝】は実話?

【国宝】は原作者の吉田修一氏が執筆するにあたり、実際に歌舞伎の世界を体験したことから作り上げた小説です。映画の「国宝」に出演している中村鴈治郎さんのもとで黒子として3年を修行。その時の体験をもとに書き上げたこともあり、リアル感たっぷりになっています。
実話との話もありますが、全てが実際にある物語ではありません。そこに吉田修一さんの思いや手法を交えた作品になっています。主人公のモデルもひとりと限ってはいないため、リアルではあるけれどフィクションだととらえてよいと思います。

【国宝】の感想・レビュー

タイトルの意味がラストで分かる超大作

ボリューム、読み応えたっぷりの大作です。
歌舞伎のことを知らなくても、演目なども物語の中に描かれていて分かりやすくなっています。

歌舞伎の世界は独特。愛人がいても当然のようで、そんなものかと思ってしまう部分もあり。
主人公の喜久雄の美しさを言葉から感じ取れます。

育ちがまったく違う喜久雄と俊介は生涯のライバルで親友。
半二郎、俊介、喜久雄の姿をとおして歌舞伎に生きる男の魂に心揺さぶられる小説でした。

語り口調なのも良き。また、徳次、春江、幸子など脇の人物も良き。特に俊介をぼっちゃんと呼ぶ徳次のキャラが良き。ラストに徳次が登場するのも最高。

ひとりの青年が国の宝になるまでを描いた超大作。ラストに喜久雄が国宝となり、タイトルはここから来ているのかと…。喜久雄は自身が国宝になったことを知らずあのまま終わってしまうのかもしれません。美しき姿のまま眠ってしまうのかもしれません。それは悲しき出来事ではあるけどずっと舞台に立つという願いが叶い幸せであったことでしょう。

雪で始まり雪で終わる。そんな演出もまた粋ですね。

【国宝】原作者

吉田修一(よしだしゅういち)

「最後の息子」で、第84回文學界新人賞を受賞し、小説家デビュー。
【パレード】【悪人】【太陽は動かない】【怒り】などが映像化されています。

【国宝】映画化に!

【国宝】が映画になります。喜久雄が吉沢亮さん。俊介が横浜流星さん。お見事なまでにピッタリのキャスティングです。歌舞伎の演目を交えながらの映画作品。ふたりの美しさに魅了されるはずです。
原作とともに映画もまた楽しみましょう。

映画
hitomi

ライター歴12年以上。web新聞記事、恋愛やドラマコラム、小説などを手掛け現在dorama9にてドラマ記事を執筆。GP帯ドラマのほか深夜ドラマも鑑賞。恋愛、不倫、サスペンスドラマが好き。視聴者の声をリサーチし、分かりやすい記事を心掛けています。

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