【憶えのない殺人】ネタバレと感想!小林薫VS尾野真千子「カーネーション」親子演技対決と認知症描写が秀逸
【憶えのない殺人】ネタバレと感想!小林薫VS尾野真千子、「カーネーション」親子の演技対決と認知症描写がすごい!
2月22日に放送されたドラマ【憶えのない殺人】のあらすじ・ネタバレ・結末・感想をまとめました。
【憶えのない殺人】あらすじ
25年間いずみ町の駐在として勤務していた佐治英雄には、最近認知症の傾向が見られるようになっていた。なぜか何度も何度も乾電池を買ってしまったり、自宅ではなく以前の駐在所に帰ってしまったり。
そんなある日、佐治が以前逮捕したことがある、地下アイドル・奥田沙苗のストーカー、桧沢が殺された。現場周辺のコンビニの監視カメラ映像や目撃情報から、佐治を疑う刑事の北嶺。佐治は元警察官の自分がそんなことをするわけがないと犯行を否定するが、交流のあった認知症で犯行時のことを憶えていなくても、そのときは殺意があり、殺してしまうことはあるのではないかと考える北嶺。
一方、佐治には自分が犯人だと物語るような記憶が断片的に蘇り――!?
【憶えのない殺人】ネタバレ
ストーカーが殺された!
佐治英雄(小林薫)の家を若い女性(鞘師里保)が訪ねてくる。しかしそれは幻覚か妄想で、目の前にいたのは刑事の北嶺亜弓(尾野真千子)と稲岡勇也(松澤匠)。いずみ町の交番で25年駐在勤務をしていた佐治は、ひと目で2人を刑事だと見抜いた。あるアパートで殺人事件が起きたと聞くと、「まさか、桧沢か」と佐治。桧沢は佐治も逮捕したことのある危ない男。しかし桧沢は犯人ではなく、被害者だった。
佐治は、スーパーに買い物に行くが、支払い方法がわからなくなり戸惑う。親身に助けてくれるレジ係の安原(阿南敦子)。いつも守ってくれてすまないと詫びる佐治に、何かと助けてくれていた駐在さんはずっと私たちのヒーローだからと励ました。
帰宅した佐治は、妻の鮎子(筒井真理子)と娘の花澄を探す。テーブルには3人分の食事の用意がしてあるが、誰もいない。トイレには「使用禁止」の張り紙。駐在所がこんなことではダメじゃないかと嘆く佐治だが、現在、駐在所は集会所となり、消防団などが使っていると医師の楢崎康英(橋本じゅん)や、大工の棟梁で消防団長の内山宗史郎(螢雪次朗)らが説明する。
佐治は認知症なのか
佐治は以前にも、家に帰るつもりで駐在所に帰ったことがある。認知症ではないかと考える楢崎は、長谷川式の簡易検査を行う。結果は初期の認知症を疑うもの。この先、ひとり暮らしは心配だと、娘に連絡をとれないかと打診する。
ずっと、他人事だと思ってたよ。万が一そうだとしたら、鮎子。お前の生き方の方が正解だ。生きて誰かに迷惑をかけたくない…。
自宅でひとり、落ち込む佐治。
翌日、北嶺と稲岡が再びやってくる。佐治は駐在時代、いずみ町に引っ越してきた奥田沙苗(鞘師里保)と交流があった。沙苗は地下アイドルをしながらアルバイトをしていたが、沙苗の熱狂的なファンでストーカーの桧沢肇(西村和泉)につきまとわれていた。佐治が定年間際に逮捕したが、執行猶予を終えると沙苗のアパートに押し入る。沙苗は逃げる際にケガをして、いずみ町を去った。
佐治は、退職後、沙苗に似たタイプの女性につきまとう桧沢を発見して追い払った。
犯人は佐治!?
事件があった日の深夜1時半ごろ、現場近くのコンビニの防犯カメラに、佐治とよく似た男が映っていた。持っていたバッグは、変わった模様。もともとは鮎子のものだったが、最近佐治が使っているミャンマー産エコバッグは、手作りで1つしかないということが佐治への疑問を裏付ける。
私がそんなことをするわけがない、ちゃんと捜査をしているのかと北嶺と稲岡を叱咤する。その日、コンビニで買ったという乾電池。家にはなぜかたくさんあった。同じものをつい何度も買ってしまうのだろう。コンビニの店員・戸川に自分と会ったことはあるかと尋ねる。夜勤が多い戸川は、何度も佐治と会ったことがあるといい、たくさん買う乾電池を何に使うのかと思っていたという。
自分が認知症だと認めたくない佐治は、店員が乾電池をむりやりバッグに押し込んだと言いがかりをつける。沙苗に似た女性を見ると、無事であることに安堵して桧沢はもう死んだから安心しなと声をかける。女性は怯えて悲鳴を上げる。店員に取り押さえられる佐治。楢崎が助けに入る。
警察に連行された佐治は、北嶺の事情聴取を受けるが、犯行は否定する。佐治は現場近くの公園で犬の散歩をしていた人に目撃されていた。北嶺は、沙苗を救えなかった心残りがある佐治が、代わりに桧沢に天誅を下したのではないかと考える。佐治が認知症ではないかということを聞いた北嶺は腑に落ちる。佐治に「うそをついている」様子がまったくないからだ。でも認知症で犯行時のことだけ憶えていない可能性もある。憶えていなくてもやっていたなら殺人だ。
また現場から指紋の1つも証拠が出てこないのがおかしい。北嶺は稲岡に、自分も佐治も納得できる証拠を探せとハッパをかける。
佐治夫妻は、地域とそこに住む人々を愛し、また愛されていた。10年前、退職する際は夫婦で一軒一軒挨拶して回った。妻の鮎子が亡くなってからの佐治はすっかり元気をなくしていた。
俺が犯人を見つけるよ。俺が犯人だとしても――。佐治は鮎子に誓った。
思い出の場所
北嶺が楢崎のクリニックを訪ねる。友人として医師として、佐治は犯人ではない、うそをつくような人ではないと主張する楢崎。認知症の祖母を介護していた母がいたため、認知症についてある程度わかっているつもりだという北嶺。祖母はときどき徘徊すると、思い入れのある場所に行っていた。桧沢になみなみならぬ憎しみを持っていた佐治だから桧沢のところに行った可能性がある。
そう主張する北嶺に楢崎は、認知症の人にだって理性も尊厳もある。認知症の人に罪を着せるなら、それは人権問題だと厳しい口調で言った。署からの連絡で戻る北嶺に、祖母がある場所に行っていたのはなぜなのか、聞いてみたことがあるか? もしかしたら素敵な思い出があるかもしれないと付け加えた。
佐治が電池を買っていたのは、駐在所で使うためだった。佐治は事件があった日のことを少しずつ思い出し始める。
北嶺は、母に祖母がその場所に行っていた理由を聞いた。クリーニングに出した服を取りに行っていたのだった。北嶺が中学生のとき、クリーニングに出した服を取りに行くのを忘れてダダをこねたことがあった。取りに行ってくれた祖母は、やさしくて頼もしい存在だった。それにしても、病気になってもそんなことを憶えていたなんて。北嶺は懐かしくてうれしくて思わず笑ってしまう。
凶器の灰皿の指紋と佐治の指紋が一致した。自分が犯人だと思う佐治は自首しようとする。認知症になったことを聞いて帰国した娘の花澄(中越典子)が止める。そのとき、北嶺から犯人が自首したと連絡がある。
真犯人はまさかの…
犯人は沙苗だった。何度引っ越してもストーカーをやめない桧沢に耐え切れず、1週間前にネットで凶器を購入し、アパートを訪ね、殺した。その後に佐治と偶然会っていた。佐治は沙苗を見ると、生きていてくれて本当によかったと言って敬礼した。沙苗が去ったあと、ゴミ箱のそぱで猫が鳴いたことから、血のついた灰皿を発見し、手にとったから指紋がついたのだ。
沙苗は、桧沢を殺したあとに自分も死ぬつもりだった。桧沢を殺したことに後悔はないが、死んだあの男よりも駐在さんの笑顔が何度も浮かんできて死ねなくなった。生きて、駐在さんに謝りたい…。
駐在さんには謝るだけではすみません。お礼を言わなくては。ひとりの命を救ってくださってありがとうございました。北嶺は頭を下げた。沙苗は死ななかったが、沙苗が殺人を犯したのには警察にも責任がある。それを憶えておいてほしいと佐治は言った。
夏祭りを楽しむ佐治と花澄。ベンチでひと休みする佐治を見かけて「お久しぶりです」と声をかける北嶺。しかし佐治はもう北嶺のことを憶えていなかった。少しがっかりする北嶺だが、「私は刑事です。後輩として佐治さんを尊敬しています」と敬意を表した。
認知症だから、次に会うときはもうあなたのことを憶えていないかもしれないと言う佐治に北嶺は、「私が佐治さんのことを忘れません」と言い、しっかりと敬礼しながら、だんだん小さくなるその後ろ姿を見送った。
【憶えのない殺人】の感想
小林薫と尾野真千子といえば、朝ドラ「カーネーション」の濃すぎる親子キャストではないですか!
今回は刑事と容疑者という役どころで激しく対立しますが、本気でぶつかり合うその演技の裏には、「カーネーション」で培った強い信頼関係があるようにも見えました。
「カーネーション」は、尾野真千子編の最終回が今朝再放送され、だんじり祭りの酒盛りで小原家が盛り上がる中、糸子(尾野真千子)の母・千代(麻生祐未)が善作(小林薫)の幽霊と再会するというくだりに涙したばかりです。
そして何といっても小林薫の認知症の演技が素晴らしい!認知症の家族がいる身にしても感動しました。
何かが変わってきているのはわかってるけど、何が起きているか自分でもわからない微妙な変化。モヤモヤしたり、直近のことを忘れてしまったり。でも認知症だなんて認めたくない。そんな自分に苛立つ認知症初期から、認知症であることを受け入れられて、最後に北嶺に「認知症だから、次に会うときは憶えていないかもしれない」と言ったときの穏やかな表情。
認知症の進み方は人それぞれだし、「認知症だから、次に会うときは憶えていないかもしれない」なんてなかなか言えないものかもしれないけれど、それでも自分の方が覚えているから大丈夫。佐治のことを尊敬しているから絶対忘れないと、敬礼しながら見送った北嶺。
よい終わり方だったと思います。
認知症については、検査過程を見せてくれたこと、認知症の人にも理性や尊厳がある、認知症の人が憶えていないのをいいことに罪をなすりつけたらそれは人権問題だとぶった斬ったところもよかった。無意識に行く場所には思い出があったりするし、祖母の思い出を確認したことで、北嶺の認知症の人の見方が変わったというエピソードの使い方も秀逸でした。
このドラマで、少しでも多くの人が認知症に関心をもってくれますように。そんな声が聞こえてくるようなドラマでした。