【パラサイト 半地下の家族/考察】ギテク(ソン・ガンホ)が刺した理由とは?
【パラサイト 半地下の家族/考察】ギテク(ソン・ガンホ)が刺した理由とは?
アカデミー賞受賞で話題の【パラサイト】。誕生日会で、キム家の父ギテクがある人を刺します。唐突に感じるシーンです。一体どういう理由があったのでしょうか。考察してみました。
【パラサイト 半地下の家族/考察】ギテク(ソン・ガンホ)が刺した理由とは?
ギテク(ソン・ガンホ)が刺した理由を探る前に、その直前の流れをおさらいしましょう。
キム家の息子・ダソンの誕生日パーテイーが自宅で開催されました。
そのとき、元家政婦の夫・グンセが秘密の地下室から上がってきます。キム家の長男・ギウを半殺しにして。
グンセは、まずキム家の娘・ギジョンを殺害。
次に、(妻を蹴落として殺した)キム家の母チュンスクと格闘。
この時、パク家の息子は気絶。パク家の主人ドンイクは病院へ連れて行こうと車の鍵を、運転手のギテクからもらおうとします。
投げられた鍵は、格闘している2人に当たります。
チュンスクは、グンセを刺し殺し、鍵はグンセの下敷きに。
そのため、ドンイクはグンセのもとへ駆け寄りました。
そのとき、ドンイクは鼻をつまみます。
その直後、ギテクがドンイクを刺し殺しました。
キーポイントは「匂い」です。
匂いが引き金となった理由
もっとも、ドンイクがグンセを「くさい」と思っても仕方ないでしょう。
約4年も地下室暮らしなのですから。
食料は、パク家・家政婦でもある妻からもらっていたのでしょうが、お風呂は難しいでしょう。タイミングを見て入っていたとは思いますが…。
「匂い」が殺害の引き金となった理由は、「差別」感情にあると思われます。
伏線として考えられるシーンは3つ。それぞれ見てきましょう。
(1)半地下の匂い
パク家の末っ子・ダソンが新しい家政婦と運転手さんの「匂いが一緒」と指摘します。
つまり、キム家の母と父が同じ匂いだ、と。
父ギテクは「石鹸を変えよう」と家族に話しますが…
染みついた「半地下の匂いだよ。この家をでなきゃ消えない」と娘に言われてしまいます。
(2)バカにする例え
ダソンの誕生日の日の出来事が伏線のひとつです。
ドンイクは(いないはずの)「ギテクの匂いがする」と語ります。
(実はギテクはテーブルの下に隠れていました)
「古い切り干し大根のような、煮洗いした布巾のような、地下鉄の乗客特有の」
と例えをいうドンイク。
このとき、ギテクはどう思ったのでしょうか。
きっと、はらわたが煮えくりかえるような思いだったでしょう。
(3)夫人ヨンギョが窓を開けた
悲劇となった、ダソンの誕生日パーテイーの開催前。
パク家の夫人ヨンギョを乗せて車を走らせるギテク。(たしか買い物)
車内では2人きり。
ヨンギョは「匂い」が気になって窓を開けました。
このシーンも「匂い」についての印象的なシーンです。
半地下の匂いが臭い
こうして「匂い」のシーンを見ていくと、
「半地下の匂いが、臭い」、「自分たちは臭い」と、ギテクが思ったことが分かります。
そして、パク家の主人ドンイクが鼻をつまんだ相手は、地下室暮らしのグンセ。
グンセの立場は、ギテクたちキム家と同じ。
あるいはもっと下。
「半地下」よりも「地下」です。
ギテクは自分と同じか、それ以下の立場の人(=地下の人間)を蔑(さげす)む行為(=「くさいから鼻をつまむ」)を目の当たりにしました。
これが、ギテクが、境界線を越えてしまった理由でしょう。
ポン・ジュノ監督インタビューより
ポン・ジュノ監督もインタビューでこう答えています。
「現実世界の中で、裕福な人々と貧しい人たちが、互いに“臭い”を嗅ぎ合うという場面はあまりないはず。(中略)この映画では、互いの“臭い”を近距離で嗅ぐことができる状態になっています。パク社長のセリフに“度を越す”というものがあります。彼には『ここから先は入ってくれるな』という“ライン”がある。パク社長にとって、貧しい世界は『見たくないもの』『自分には関係のないもの』なんです。本作では(“ライン”を越えて)“臭い”が入ってきたことによって、悲劇がもたらされるんです」
https://eiga.com/news/20191225/4/
忌み嫌い、「ライン」を引いて遠ざけていた「貧しい世界」と匂いを通して接してしまったとき、悲劇が起きました。
格差による差別意識がもたらした悲劇とも言えるのではないでしょうか。
画像出典:http://www.parasite-mv.jp/
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